定義
モンティ・ホール問題とは、3枚のドアのうち1枚に当たり、2枚にハズレがある状況で、正解を知っている司会者が挑戦者の選んでいないドアの中からハズレを必ず1枚開けて見せた上で選び直す機会をくれるとき、ドアを変えた方が当たる確率が3分の1から3分の2へと2倍に跳ね上がるという確率論の有名なパラドックスです。私たちの日常的な直感と実際の数学的確率がいかに大きく食い違うかを鮮やかに示す代表例です。
クイズ番組のドアと悩ましい選択
華やかな照明が輝くクイズ番組のステージに、固く閉ざされた3枚のドアが並んでいます。1枚のドアの後ろには豪華な新車(スポーツカー)があり、残りの2枚にはハズレのヤギが隠されています。挑戦者がドキドキしながら1番のドアを選ぶと、どこに何があるかをすべて知っている司会者が、残る2番と3番のドアからヤギのいるドアを1枚ガチャリと開けて見せます。
そして挑戦者に微笑みながら提案します。「最後のチャンスです。最初に選んだドアのままにしますか? それとも、残ったもう1枚のドアに変えますか?」これには会場の観客もお茶の間の視聴者も深く頭を抱えてしまいます。
多くの人は「どうせ残りは2択なのだから、変えても変えなくても確率は半々(50%)だろう」と考えがちです。しかし実際には、最初のドアに固執すると確率は3分の1にとどまるのに対し、ドアを変えた瞬間に当たる確率は3分の2へと2倍に跳ね上がります。
なぜ変えた方が2倍も有利なのか?
この奇妙な現象の秘密は、挑戦者が最初に選んだときの確率に隠されています。3枚のドアの中から最初に車(当たり)を選ぶ確率は3分の1しかありませんが、ヤギ(ハズレ)を選ぶ確率は3分の2もあります。つまり、挑戦者は3回のうち2回は最初にハズレを引いている計算になります。
ここで最も重要なカギとなるのが、司会者が正解の場所をあらかじめ知っているという点です。司会者は適当にドアを開けているのではなく、挑戦者が選ばなかったドアの中から「必ずヤギのいるドアを選んで」開けてくれます。
もし挑戦者が最初にヤギを選んでいたなら(3分の2の確率)、司会者は残ったもう1頭のヤギのドアを開けるしかありません。そうなると、誰も選んでいない最後のドアの後ろには確実に車が待っています。したがってドアを変えさえすれば、最初にヤギを選んでいた場面が丸ごと当たりへと化けるのです。
もう少し直感的に考えるなら(100枚のドア)
それでもまだピンとこない場合は、ドアが100枚ずらりと並んだ巨大な廊下を思い浮かべてみてください。たった1枚のドアの後ろにだけ超高級車があり、残り99枚の後ろにはハズレが入っています。あなたがその中から1番のドアを選んだとき、それが当たりである確率はわずか100分の1です。
ここで司会者が、あなたの選んでいない99枚のドアの間を歩きながら、ハズレのドア98枚をすべて開け放ち、ぽつんと77番のドアだけを残したとします。司会者はどこが当たりか知っているため、ハズレだけをわざわざ選んで取り除いてくれたのです。
こうして1番と77番のドアだけが残ったとき、77番のドアの後ろに車がある確率は実に100分の99にも達します。このように「何かが起きた」という新たな情報を条件として改めて計算し直す確率を、数学では条件付き確率と呼びます。
よくある誤解
ドアが2枚残っているのだから、選択を変えても変えなくても当たる確率は50対50(半々)のはずだ。
司会者はランダムに開けたのではなく「正解を知っていてハズレだけを選んで」開けたため、挑戦者が最初に外していた確率(3分の2)がそっくりそのまま残った1枚のドアに集約されるのです。
日常で出会う場面
アメリカの人気テレビ番組『レッツ・メイク・ア・ディール(Let's Make a Deal)』の司会者モンティ・ホールの名前に由来しています。
かつてギネス世界記録で「世界一高いIQを持つ人物」と認定されたマリリン・ボス・サヴァントが、1990年の雑誌コラムでこの解法を紹介した際、約1万通もの反論の手紙が殺到しました。その中には数学者や博士号保持者も多数含まれていましたが、最終的にはサヴァントの解説が完全に正しいことが証明されました。
つまり ひとことで
司会者が事前にハズレを取り除いてくれるため、選び直すことで「最初にハズレを選んでいた3分の2の確率」がそのまま「当たりを引き当てる確率」へと裏返るのです。