定義
素早く動く被写体やカメラの動きによって、像がブレてにじんで見える現象のことです。コンピューターグラフィックス(CG)やゲームでは、カクつきを抑えて現実のように滑らかで臨場感ある動きに見せるため、このブレ効果を計算処理によってあえて画面に加えています。
手を振ると残像が残る理由
走る車の窓から外を眺めたり、目の前で手を素早く左右に振ってみてください。指の輪郭がクッキリ見えるのではなく、まるで何重にも重なったようなブレた残像が長く伸びて見えますよね。
これは、私たちの目やカメラが時間を「0秒」で完全に静止させて切り取る装置ではなく、ほんのわずかな時間、光を受け止めて蓄積しているために起こる自然な現象です。カメラのシャッターが開いて光を集めているその刹那に被写体が動くと、その移動経路全体の残像が1枚の写真の中に重なって写り込みます。
もしこのにじみがなければ、写真を見てもそれが猛スピードで走っている最中なのか、ピタッと止まっているのか直感的に見分けがつきません。モーションブラーは、脳が「スピード感」を本能的に捉えるための大切な視覚的サインなのです。
CGがあえて画面をぼやけさせる理由
3Dゲームやアニメーションは、実際には1秒間に何十枚もの静止画をパラパラマンガのように高速で切り替えて表示しています。しかし、コンピューターが計算して描く3D映像は、どんなに激しい動きであっても現実と違って1コマ1コマがナイフのように完璧に鮮明です。
皮肉なことに、あまりにもクッキリした画像が高速でパッパッパッと切り替わると、人間の目には動きが滑らかに繋がって見えず、カクカクしてぎこちなく感じられてしまいます。1フレームごとの絵が「ある一瞬」しか捉えておらず、コマとコマの間に物体がどう動いたかという情報が抜け落ちているからです。映画用カメラで撮影した実写映像なら、シャッターが開いている間の動きが自然なブレとして記録され、この隙間を埋めてくれます。
そこでグラフィック技術では、物体がどこからどこへ動いたかを計算し、その軌跡に沿ってピクセルを滑らかにぼかす処理を加えます。このあえて加えたブレのおかげで、1秒あたりのコマ数が少なくても映画のように滑らかなスピード感を再現できるのです。
もう少し詳しく:なぜゲーマーはこの機能をオフにするのか
もう少し詳しく見ていくと、モーションブラーはどんな場面でも歓迎されるわけではありません。レースゲームやストーリー重視のアドベンチャーゲームでは没入感をぐっと高めてくれますが、一瞬の判断が生死を分けるシューティングゲーム(FPS)では大きな障害になることがあります。
敵を探そうとマウスを素早く振った瞬間、画面全体がぐわんとぼやけてしまい、物陰から飛び出してきた敵の輪郭を見失ったり、正確な照準(エイム)が難しくなったりするからです。勝利のためには、視点をどれだけ激しく動かしても常にクリアに見えている必要があります。
さらに、このブレ効果をピクセル単位でリアルタイムに計算するには、グラフィックボード(GPU)の処理能力も消費します。そのため、瞬時の反応速度と精密なエイムを求めるゲーマーは、ゲームの設定画面でモーションブラーを「オフ」にすることが多いのです。
よくある誤解
モーションブラーはパソコンのスペック不足で画面が崩れる描画エラー(バグ)だ。
エラーではなく、自然なスピード感と滑らかな動きを演出するためにコンピューターがあえて追加の計算を行って適用しているグラフィック技術です。なお、ゲームの設定とは無関係に、モニターの応答速度や駆動方式によって生じる残像も一般にモーションブラーと呼ばれることがありますが、こちらは意図的な演出ではなくディスプレイのハードウェア特性によるものです。
日常で出会う場面
夜間に走る車のヘッドライトが、一本の長い光の筋となって写る写真です。
レースゲームでブーストを使った際、周囲の景色が後方へと一気にブレて流れる画面演出です。
つまり ひとことで
動く物体の軌跡がにじんで見える現象のことで、CGやゲームでは滑らかなスピード感を演出するために意図的に適用されます。