定義
3次元(3D)の画面を描き終えた後、完成した1枚の絵全体にさまざまな効果を重ねる仕上げの工程のことです。物体を一つひとつ描き直すのではなく、画面全体をまとめて調整するため、素早く処理できます。ゲームや映像の最終的な色味や空気感は、この段階で大きく左右されます。
写真アプリのフィルターと同じ仕組み
写真を撮ったあと、アプリでフィルターをかけてみた経験は誰にでもあるはずです。同じ写真なのに、色合いが温かくなったり、画面の端が少し暗くなったりして、雰囲気が一変しますよね。
ここで注目したいポイントがあります。フィルターは、写真を撮り直しているわけではありません。すでに撮り終えた画像の『色』を、場所ごとに少しずつ変えているだけです。
ゲームの画面もまったく同じ手順で作られています。コンピューターはまず、3次元空間にある物体を計算して、1枚の平面画像として描き出します。この工程を「レンダリング」と呼びます。
ポストプロセスはその後の出番です。描き上がった1枚の絵の上から効果を重ねる仕上げの作業なのです。頭についている「ポスト(post)」には、「〜の後」という意味があります。
たった1枚のフィルターで世界観が変わる
写真アプリにたくさんのフィルターがあるように、ゲーム画面に重ねる効果にもさまざまな種類があります。聞き慣れない名前でも、やっていることは写真のフィルターと変わりません。
明るい光が周囲へふわっと滲み出るような効果を「ブルーム(Bloom)」と呼びます。窓辺や街灯のまわりがまぶしく輝いて見える演出は、これによるものです。
素早く動く物体をぶれて見せる「モーションブラー」もよく使われます。ピントが合っていない遠くの背景を自然にぼかしたり、画面全体の色合いをクールに、あるいはノスタルジックに変えたりする調整も、すべてこの段階で行われます。
こうした効果が処理の負担をそれほど増やさないのには理由があります。物体を一つひとつ再計算するのではなく、完成した1枚の絵だけを手直しすればいいからです。画面の中に登場するキャラクターや建物が増えても、この工程の作業量はほとんど増えません。
もう少し詳しく知ると見えてくること
だからといって、この処理が完全に「タダ」というわけではありません。1枚の絵の中にあるすべてのピクセルをチェックする必要があるため、画面の解像度が高くきめ細かくなるほど、処理の負担も大きくなります。
ゲームの設定画面で、こうした効果を個別にオン・オフできるようになっているのはそのためです。画面の動きがカクつくとき、「まず切ってみてください」と勧められる項目には、まさにこれらの効果が含まれています。試しにオフにしてみると、画面の雰囲気がどれほど変わるかがよくわかります。
ところで、フィルターはどうして「何が遠くて、何が動いているのか」を知ることができるのでしょうか。実は、色だけの絵ではなく、レンダリング時にあわせて記録された「奥行きの距離情報」や「動きの情報」も一緒に参照しているのです。そのため、遠くの背景だけを選んでぼかしたり、動いているものだけをブレさせたりすることができます。ただし、こうした情報も画面に今見えている部分だけのものです。
そのため、限界もはっきりしています。フィルターはあくまで撮り終わった写真の上でしか働けないため、写真に写っていないものは生み出せません。画面の外にある物体がガラスに映り込むような演出を、この段階だけで解決できないのはこのためです。
つまりこの工程は、光を最初から再計算するというよりも、描き上がった絵に手を加えて雰囲気を引き立てる演出に近いと言えます。ほどよく使えば臨場感がグッと増しますが、やりすぎると画面全体が白っぽくぼやけてしまいます。
よくある誤解
ポストプロセスは、グラフィックをより精密に描き直してくれる機能である。
物体を描き直すのではなく、すでに完成した画面の色や明るさを調整する工程です。画面に写っていない物体や細かいディテールが新しく生まれるわけではありません。
画面の上に重ねるだけの効果なので、処理の重さ(負荷)には影響しない。
画面上のすべてのピクセルを走査して処理するため、解像度が高くなるほどパソコンやゲーム機への負荷は大きくなります。そのため、ゲームの設定で個別にオフにできるようになっていることが多いのです。
日常で出会う場面
ゲームの設定でブルームやモーションブラーをオフにすると、画面がすっきりとシャープに見えること
動画編集アプリで、完成した動画全体にカラーフィルターをかけて映画のようなトーンに仕上げること
つまり ひとことで
描き終えた1枚の画面の上に、フィルターのように効果を重ねて色味や空気感を仕上げる工程のことです。