定義
完璧に見える人がささいな失敗をしたとき、条件が揃えばかえって人間味や好感度、魅力が高まる心理現象です。隙のない完璧さが生む近寄りがたい距離感を、ちょっとした失敗が和らげてくれることで、心に温かい親近感が湧くためです。
隙のない完璧さよりも「愛嬌のある隙」に惹かれる理由
学校や職場で何でもテキパキこなす完璧な人を見ると、最初は誰もが感心します。でも同時に、どこか近寄りがたくて冷たい壁を感じてしまうこともありますよね。欠点一つない完璧さは、人を気後れさせ、心理的な距離感を生んでしまうからです。
ところが、そんな完璧な人が道でちょっとつまずいたり、プレゼン中に服へコーヒーを少しこぼしてしまうような「お茶目な隙」を見せたらどう感じるでしょうか? 不思議なことに、バカにするどころか人間味あふれる魅力や好感を覚えることがあります。
完璧さの中に隠れていた小さな隙が、冷たい距離感を一瞬で縮める架け橋になったのです。心理学では、優秀な人が見せるこうしたささいな失敗が、その人をより人間的で親しみやすい存在に見せると説明されています。
心理学の実験で証明された「失敗の魅力」
1966年、アメリカの心理学者エリオット・アロンソン(Elliot Aronson)らは、この興味深い現象を確かめるためにある実験を行いました。被験者に、大学のクイズ大会代表候補者の面接録音テープを聞かせて好感度を測定したのです。録音は同じ役者が演じた4つのパターンがあり、被験者はそのうち1つだけを聞きました。
あるパターンの候補者は難問の正解率が92%という圧倒的な実力を見せ、別のパターンの候補者は30%しか正解できない平凡な実力でした。ところが、優秀な候補者がインタビューの終わりに「服にコーヒーをこぼしてしまった!」と慌てる音声が入っていたとき、驚きの結果が現れました。人々は、ただ完璧だったときよりも、失敗をやらかした完璧な人に対してより高い好感を抱いたのです。
一方で、問題を半分も正解できなかった平凡な候補者が同じようにコーヒーをこぼしたときは、好感度がさらに下がってしまいました。まったく同じ失敗であっても、その人が持つ元の能力によって受け取られ方が180度変わることを明確に示した実験です。
より正確に言えば:誰にでも通用する魔法ではありません
より正確に言えば、プラットフォール効果は誰にでも通用する万能の裏技ではありません。この効果がしっかり働くためには、主に2つの条件が必要です。
1つ目は、その人がすでに優れた実力と信頼を認められている状態であることです。基本的な能力が足りなかったり、普段からミスを連発している人がさらに失敗を重ねると、周囲はそれを人間味ではなく単なる無能や不注意と受け取ってしまいます。
2つ目は、失敗の規模が小さく無害であることです。会社の命運を左右するプロジェクトを台無しにしたり、他人に迷惑をかける致命的なミスは、決して魅力として受け止められることはありません。さらに、受け手側の要因もあります。その後の追試では、観察者の自尊心や性別によって効果が変わったり現れなかったりすることも判明しました。最初の実験参加者が男子大学生だけだったという限界も指摘されています。
つまりプラットフォール効果は、確固たる実力と信頼という土台があってこそ、条件次第で花開くささやかで魅力的なボーナスなのです。
よくある誤解
失敗をたくさんするほど、誰からでも無条件に好感度が上がる。
プラットフォール効果は、主にすでに能力を認められている人に現れます。実力不足だったりミスが日常茶飯事だったりする人の失敗は、かえって信頼を損ねてしまいます。
日常で出会う場面
いつも完璧に仕事をこなす先輩が、道に迷ってオロオロしている姿を見て周囲が「可愛い」と和む瞬間。
アカデミー賞の授賞式でドレスを踏んで転んでしまった人気女優が、照れ笑いを浮かべた飾らない対応で世間からさらに愛されたエピソード。
つまり ひとことで
優れた能力を持つ人が見せるささいな失敗は、心理的な距離感を縮めて好感度を高めることがあります。