定義
植物から抽出したエキスのうち、あらかじめ決めた指標成分の含有量を毎回同じ値にそろえたものです。同じ植物でも、育った土地や天候、収穫の時期によって成分の量は変わります。標準化とは、このばらつきをひとつの物差しで測ってそろえる作業です。
同じ茶葉なのに、なぜ年ごとに味が違うのでしょうか?
同じ木からもいだリンゴでも、日をたっぷり浴びた側は甘く、日陰の側は酸っぱくなります。植物がもつ化学物質の量は、育った土地や雨の量、収穫した季節によっていつも上下します。
茶葉も同じです。同じ畑で摘んだ葉でも、春に摘んだものと夏に摘んだものでは、渋みのもとになるカテキンとうま味のもとになるアミノ酸の量が違います。そのため、茶葉をそのまま挽いた粉は、袋ごとに成分の量が少しずつずれます。
飲料や食品をつくる側には、このずれが悩みの種です。先月の製品と今月の製品で味や成分が違えば、同じ名前をつけにくいからです。そこで、原料から抽出したあとに決めておいた成分をひとつ測り、その値に合わせる方法が生まれました。これがエキスの標準化です。
物差しになる「指標成分」
植物ひとつには数百種類もの物質が混ざっているので、すべてをそろえることはできません。そこで、その中から測定でき、その植物を代表する物質をひとつか数個選んで、物差しにします。これを指標成分と呼びます。
ビールに使うホップがよい例です。ホップには、煮ると苦味を出す物質に変わるアルファ酸が入っていますが、その量は年ごとに違います。そのため醸造所は、ホップを重さだけでなくアルファ酸の含有量で見て投入し、ホップエキスもアルファ酸何%という値にそろえて取引します。唐辛子から辛味を取り出したエキスも、カプサイシンの含有量で規格を決めます。
含有量をそろえる方法はいくつかあります。クロマトグラフィーで成分を分けて量を測り、濃いバッチと薄いバッチを混ぜたり、賦形剤(かさを増やす補助材料)を加えたりして、決めた値に合わせます。
ここで注意したい点があります。指標成分は品質を測る物差しとして選んだ物質です。その物質がその植物の作用をすべて担うという保証はありませんし、そろえたのも指標成分だけなので、残りの物質は原料ごとに変わりうるままです。そのため、欧州薬局方のように医薬品を扱う基準では、作用を十分に担うと確認された成分でそろえたものだけを狭い意味の「標準化エキス」と呼び、それ以外は別に区別します。
もう少し正確にいうと:濃縮比と標準化は別の言葉です
箱に「10:1エキス」と書かれているのを見かけることがあります。これは、原料10を使ってエキス1を得たという濃縮比です。原料をどれだけ煮詰めたかを言っているだけです。
この数字だけでは、中にどんな成分がどれだけ入っているかはわかりません。原料がもともともつ成分の量が違いますし、どんな溶媒で抽出したかによって出てくる物質も変わるからです。賦形剤を混ぜれば、同じ10:1でも含有量はまた変わります。
標準化エキスは、反対側から出発します。原料をどれだけ煮詰めたかではなく、完成したエキスに指標成分が何%入っているかを決めておき、そこに合わせます。そのため、ラベルを読むときは、濃縮比よりも、指標成分の名前と含有量が別に書かれているかを先に見るほうが確実です。
ただし、含有量がそろっているというのは品質がそろっているという意味であって、その製品が体にどんな働きをするのかまでは教えてくれません。その問いは、別に研究で確かめる必要があります。
よくある誤解
10:1の濃縮エキスなら、2:1のエキスより有効成分が必ず5倍多く入っている。
10:1は、原料10を投入してエキス1を得たという濃縮比を指しています。その中にどんな成分が実際どれだけ入っているかは、別に書かれた指標成分の数値を見て初めて正確にわかります。
標準化エキスには、原料植物のすべての成分が毎回同じ量で入っている。
そろえられるのは、決めておいた指標成分の含有量だけです。残りの物質は、原料や工程によって今もばらつくことがあります。
日常で出会う場面
醸造所でホップを重さだけでなくアルファ酸の含有量で見て投入すること。年ごとに違うホップの苦味を同じ値にそろえる方法です。
唐辛子から取り出した辛味エキスをカプサイシンの含有量で規格化し、ソースをつくるたびに辛さを一定にそろえること。
サプリメントのラベルに「エキス○○mg(指標成分△%含有)」のように、指標成分と含有量が別に書かれている場合。濃縮比だけが書かれたラベルより、何がどれだけ入っているかがわかります。
つまり ひとことで
植物ごとにばらつく成分を指標成分で測り、その含有量を毎回同じにそろえたエキスです。「10:1」のような濃縮比とは別の言葉です。