科学

生分解性プラスチック

食べ終わったりんごの皮のように、微生物にかじられて土へ還っていく特別なプラスチックです。

定義

りんごの皮を土に埋めると、数週間から数か月で土に還りますが、普通のレジ袋は何百年も腐らずに残ります。生分解性プラスチックは、まさにこのりんごの皮のように、細菌やカビなど自然界の微生物に食べられて、水と二酸化炭素に完全に分解されるよう設計されたプラスチックです。

微生物が消化できるプラスチック

私たちがふだん使っている普通のプラスチックは、石油を加工して、炭素どうしが固く手をつないだ巨大な鎖の構造になっています。自然界の微生物から見ると、この鎖は硬すぎて見慣れないもので、歯が立たない巨大な岩のようなものです。そのため何百年も分解されず、マイクロプラスチックとして残って自然を汚してしまいます。

一方、生分解性プラスチックには、微生物が分解酵素を出して断ち切れる弱い結合構造が組み込まれています。消化のよい食パンのように、微生物がプラスチックの鎖を細かく切って栄養として吸収できるようにしたのです。

微生物がプラスチックを食べてエネルギーを得ると、おもに水と二酸化炭素が残り、一部は微生物の体になります。酸素のない場所ではメタンが出ることもあります。プラスチックごみがいつまでも残る廃棄物にならず、自然の循環の輪の中へ戻っていく仕組みです。

道ばたに捨てたら、ひとりでに消えるの?

「生分解」という名前を聞くと、道ばたや海に捨てても数日で魔法のように消えそうですが、実際はそうではありません。微生物が活動するにも、ちょうどよい温度と湿度の環境が必要だからです。

現在広く使われているトウモロコシのでんぷん由来のプラスチック(PLA)は、たいてい58度以上の高温と高い湿度が保たれた環境でしか活発に分解されません。15度前後の冷たい海水や、乾いた地面に捨てられると、普通のプラスチックと同じように何年もそのまま残ることがあります。

そのため、こうした生分解性の製品は、一定の熱と湿度がそろった専門のコンポスト施設で処理されて、はじめて設計どおりに分解されます。

もう少し正確に言うと:原料と分解は別の話です

トウモロコシやサトウキビから作ったプラスチックはすべて自然に分解される、と考える人は多いのですが、これは原料と分解のしかたを混同したものです。プラスチックを分けるときには、「何から作ったか」と「どう分解されるか」という2つの基準があります。

植物原料で作っても、化学構造を普通のペットボトルと同じに合成すれば、普通のプラスチックのように長い間分解されません。逆に、石油から取り出した原料で作っても、微生物が分解しやすい構造に合成すれば、立派な生分解性プラスチックになります。

つまり、環境にやさしいプラスチックの要点は、原料が植物か石油かというより、製品の寿命が尽きたときに自然へきちんと還っていけるかにかかっています。

よくある誤解

誤解

生分解性プラスチックは、道ばたや海に捨てても、ひとりでにすぐ消える。

事実

ほとんどの生分解性プラスチックは、50度以上の高温と適度な湿度がそろった専門のコンポスト条件でしか、速く分解されません。冷たい海や普通の屋外では、分解に数年以上かかることもあります。

日常で出会う場面

  1. トウモロコシのでんぷんで作ったPLAのドリンクカップやストローは、産業用のコンポスト施設で分解されるように設計されています。

  2. 農作業のあと、はがさずにそのまま土にすき込むと、微生物が時間をかけて二酸化炭素と水に分解するように設計された生分解性のマルチフィルム

つまり ひとことで

生分解性プラスチックは微生物が食べられるように作られた素材ですが、きちんと分解されるには、ちょうどよい温度と湿度の条件が必要です。

この概念が登場するストーリー

作成 2025-05-19 更新 2026-10-17 検証 2026-10-17