定義
景気が良くなったり悪くなったり、そして再び回復する波が、不規則な周期で繰り返される現象のことです。国全体の生産・消費・雇用といった活動が活発になる「拡張(好況)」と、縮小する「後退(不況)」が、まるで息を吸って吐くように交互に現れる、経済の呼吸のようなものです。
経済にも春、夏、秋、冬があります
私たちが暮らす自然界と同じように、経済にも4つの季節が順番に訪れます。経済学ではこれを回復期、好況期、後退期、不況期という4つの局面に分けて説明します。冬のように冷え切っていた経済が背伸びをして目覚め、雇用が増え始める春が「回復期」です。
続く夏は、モノが飛ぶように売れ、企業が競って工場や設備を増やす「好況期」です。人々の財布のひもが緩み給料も上がりますが、物価が急激に上がりすぎるという副作用も出始めます。経済が熱を帯びすぎると、中央銀行は過熱を抑えるために金利を引き上げます。
利息の負担が重くなると、人々は支出を控え、企業も投資を見送るようになり、秋にあたる「後退期」へと移ります。やがて在庫が倉庫に積み上がり、雇用が減る厳しい冬、すなわち不況期を迎えます。しかし、冬が過ぎれば再び春が巡ってくるように、金利が下がり調整が進むと、経済は再び回復期への準備を始めます。
何が景気の波を起こすのでしょうか?
景気循環が起きる理由には諸説ありますが、なかでも分かりやすいのが「人々の心理」と「在庫の動き」です。ある商品が人気を集めると、どの工場も一斉に増産を始めます。期待が高まりすぎた結果、実際の需要をはるかに超える商品を作ってしまう集団的な過剰投資が起きがちです。
やがて消費者の買いが一巡すると、倉庫には在庫が山積みに残されます。工場は機械を止め、人員を減らして経費削減に乗り出します。収入が減った労働者は外食を控え、買い物を減らすため、他の店までドミノ倒しのように打撃を受けます。
しかし、工場が生産を止めている間に、倉庫に眠っていた在庫は少しずつ減っていきます。モノの余剰感が解消され、金利も下がってくると、誰かが再び勇気を出して機械を動かし始めます。このように人々の楽観と悲観が交錯しながら、巨大な景気の波を作り出していくのです。もちろん、金利や貸出といったマネーの動きや、予期せぬ外部からのショックも大きな引き金となります。
少し正確に掘り下げると
自然界の四季は数か月ごとに規則正しく巡りますが、経済の季節はカレンダー通りには進みません。好況が10年以上続くこともあれば、不況がわずか数か月で終わることもあります。波の形がそれぞれ異なるように、景気循環の長さや振幅は毎回変化します。
戦争や感染症の流行、新技術のイノベーションなど、予測困難なショックがたびたび訪れるからです。さらに、政府や中央銀行も景気の乱高下を抑えるために政策というハンドルを握ります。景気が過熱すれば利上げで熱を冷まし、不況が深まれば資金を供給して景気回復を早めようとします。こうした介入によっても波の形は大きく変わります。
したがって、景気循環はあらかじめ決まった宿命ではなく、生きている有機体がバランスを取り戻そうとするダイナミックな過程と捉えるのが正確です。
よくある誤解
景気循環は時計のように決まった周期で規則正しく起きる。
季節の巡りと違って、景気循環の周期や長さは一定ではありません。突発的な外部ショックや技術革新、政府・中央銀行の政策対応などによって、好況や不況が続く期間は毎回大きく異なります。
日常で出会う場面
2000年代半ばのアメリカ住宅市場を中心に好況が続いた後、2008年のリーマン・ショック(世界金融危機)によって世界経済が一気に深刻な景気後退へ落ち込んだ事例があります。
新型コロナの世界的流行直後に急激な不況に見舞われたものの、大規模な財政出動と超低金利政策によって急速に回復へと向かった事例があります。
つまり ひとことで
経済は「回復・好況・後退・不況」という4つの局面を通りながら、波のように絶え間なく循環しています。