経済

端数価格戦略(9,980円の魔法)

スーパーの値札に「10,000円」ではなく「9,980円」と書くだけで、たった20円の差なのに、1万円の商品が「9千円台」のお得な品に見えてしまう、数字のマジックです。

  • 約3分
  • 図 1点
  • 2026-10-13 検証

定義

端数価格戦略とは、商品の価格の末尾をキリのいい0ではなく、9や8などの端数で終わらせることで、実際の価格差以上に安いと感じさせる価格設定の手法です。たった10円や20円の差でも、先頭の数字が変わるだけで、消費者が感じる心理的な負担は軽くなることがあります。

なぜ9,980円は1万円よりずっと安く見えるの?

スーパーの棚やネットショップを見ていると、10,000円ではなく9,980円と書かれた値札を本当によく見かけます。2つの価格の実際の差は、わずか20円ほど。それなのに、買う側にはその差が20円以上に大きく感じられることがよくあります。

私たちは数字を左から右へ読んでいく習慣があります。値札を見るときも、自然と一番左の桁を最初に認識し、その最初の数字を基準に、商品の価格帯を頭の中ですばやく決めてしまいます。

10,000円は先頭が1で始まる5桁の数字ですが、9,980円は先頭が9で始まる4桁の数字です。そのため脳は、9,980円を1万円に近いお金として計算するよりも、9千円台の手頃な価格として先に受け止めやすくなります。このように、先頭の数字が変わることで体感価格がぐっと下がる心理現象を「左桁効果」と呼びます。

細かく計算された価格という錯覚

キリの悪い端数は、消費者にもうひとつ心地よい錯覚をプレゼントします。価格が20,000円のようにすっきり終わっていると、「売る側がざっくり決めた価格」という印象を与えることがあります。

いっぽう、19,800円や9,950円のような中途半端な数字で終わると、感じ方はまったく変わります。末尾が細かく設定された価格は、実際より低く感じられ、しっかり計算された価格なので値引きの余地が少なそうに見える、という研究があります。

大型スーパーやネットショップでは、こうした価格をよく目にします。消費者は、きちんと計算された価格で安く買えたという満足感を得やすく、売る側も状況によっては販売が増える効果を見込めます。

もう少し正確に言うと:どんな商品にも効くの?

端数価格戦略は、いつでも魔法のように効くわけではありません。売りたい商品の性格やブランドの立ち位置によっては、末尾の9がかえって逆効果になることもあります。

ブランドバッグや高級ホテル、ハイエンドの腕時計のような贅沢品は、価格が安っぽく見えるとブランドの高級感が損なわれかねません。こうした商品を買う人は節約より「上質な価値」を求めているので、99万円ではなく100万円のようにキリのいい価格(偶数価格、イーブンプライシング)をつけて、品質への自信と信頼感を打ち出すことが多いのです。

反対に、日用品やコスパが重視される大衆向け商品では、端数価格が販売を伸ばす効果を出すこともあります。衣料品の通信販売での実地実験では、末尾9の価格が需要を増やしたという結果が報告されていますが、その効果は商品や状況によって異なりました。結局のところ端数価格戦略は、消費者が「賢い節約」を望んでいるときに、心の扉をぐっと開かせる巧みな価格心理学なのです。

よくある誤解

誤解

端数価格戦略は、消費者がたった20円を節約するために選んでいるものだ。

事実

消費者は20円の節約そのものよりも、先頭の数字が変わることで生まれる「ずっと安い」という心理的な錯覚(左桁効果)や、安く買えたという感覚に大きく影響されます。

日常で出会う場面

  1. スーパーで10,000円ではなく9,980円の値札がついているお菓子の詰め合わせ

  2. ネットショップで3,000円の服を2,980円で売り、2千円台の印象を与えること

つまり ひとことで

価格の末尾を9や8で終わらせて先頭の数字を下げ、しっかり計算された価格という印象を与えて購買を後押しする価格設定戦略です。

作成 2025-09-15 更新 2026-10-13 検証 2026-10-13