定義
おとり商品とは、小売店やお店が、より多くのお客さんを店内に呼び込むために、原価割れや、ほとんど利益を残さない価格で売る、思い切った特価商品のことです。英語では、損失(loss)を覚悟してお客さんを引っ張る(lead)商品という意味で「ロスリーダー(Loss Leader)」と呼ばれます。
スーパーの入口にある激安豚バラ肉の秘密
スーパーのチラシの1ページ目を見ると、常識外れの値札がついた商品がすぐに見つかります。豚バラ肉が100gで数百ウォン、あるいは卵1パックが1,000ウォンといった、思い切った値引き品です。こうした商品は原価すれすれか、それより安く売られるので、売れるたびにほとんど利益が残らないか、むしろ赤字になります。それなのに、お店はなぜ損をしてまで大々的な値引きセールを行うのでしょうか?
秘密は、お客さんの足取りにあります。お店の本当の目的は、その特価商品で利益を出すことではなく、まず人を店内に引き込むことにあるからです。お肉を買いにお店へ足を踏み入れたお客さんは、お肉だけ買って帰ることはありません。いっしょに食べる野菜とサムジャン(韓国の味噌ダレ)、ビール、デザートの果物まで、自然とカートに入れてしまいます。結局、おとり商品で出た赤字を、いっしょに売れるほかの商品の利益で埋め合わせる仕組みなのです。
カミソリとプリンターに隠れた原理
このおとり商品の戦略は、スーパーの生鮮食品売り場だけにとどまりません。私たちが毎日使う家電や日用品の市場でも、とても幅広く使われています。代表的な例が、カミソリとインクジェットプリンターです。ジレットのようなカミソリの本体や家庭用プリンターの機器そのものは、驚くほど安い価格で売られています。メーカーが、機械を売る段階では利益をほとんどあきらめるか、損をしているからです。
企業の本当の収入源は、機械ではなく、その後に続く消耗品の継続的な買い替えから生まれます。いったん安い値段で機械を買って使い始めると、そのあとは、その機械に合うカミソリの替え刃やインクカートリッジを高い値段で買い続けることが多いのです。経済学では、こうした方式を「カミソリと替え刃モデル」と、別の名前で呼ぶこともあります。最初は損をしてお客さんを囲い込み、その後の継続的な消耗品の販売を通じて、はるかに大きな利益を長い時間をかけて取り戻すわけです。
もう少し正確に言うと:内部相互補助とチェリーピッカー
もう少し正確に言うと、経済学ではこれを、ある商品の損失をほかの商品の収益で補う「内部相互補助(クロス・サブシディゼーション)」の原理として説明します。最近では、デジタルプラットフォーム企業が、基本サービスを無料や思い切った低価格で提供して会員を集めたうえで、有料の付加サービスで稼ぐモデルも、おとり商品戦略の現代的な変形と見ることができます。
しかし、おとり商品の戦略がいつも企業の思いどおりに進むわけではありません。思い切った値引き商品だけを選んでカゴに入れ、ほかの物は一切買わない賢い消費者、つまりチェリーピッカーが増えると、お店は大きな損失を被ります。そのため販売者は、おとり商品の1人あたりの購入数量を制限したり、お店のいちばん奥に陳列してお客さんに店内をひととおり見て回らせたりするなど、精巧な動線設計も併せて行います。
よくある誤解
おとり商品は、余った在庫を少しでも利益を残して売る、見切り品である。
おとり商品は、売れるたびに実際に損をする赤字商品であることが多いです。お客さんを呼び込んで、ほかの通常価格の商品を買わせ、全体として利益を残す、高度なマーケティング戦略です。
日常で出会う場面
大型スーパーで卵1パックを990ウォンで数量限定販売して、お客さんを集める場合
遊園地やウォーターパークで入場券の価格を大幅に下げ、園内の飲食代やレンタル料を高く取る場合
ゲーム機の本体を原価程度の安さで普及させ、専用ゲームソフトの販売で利益を出す方式
つまり ひとことで
損を覚悟で売る思い切った商品でお客さんを集めたあと、ほかの商品の販売で全体の収益を最大化するマーケティング戦略です。