定義
デジタル・ディバイド(Digital Divide)は、スマートフォンやインターネットなどのデジタル技術にどれだけ手軽にアクセスし、うまく使いこなせるかによって、人々の間で経済的・社会的なチャンスに大きな差が開いてしまう情報格差の現象です。
飲食店のタッチパネル注文機の前で味わう戸惑い
ファストフード店やカフェに入って、ピカピカの無人注文機の前で冷や汗をかいた経験は、一度くらいおありでしょう。画面の文字は小さくてメニューは複雑、後ろに並ぶ人の視線も気になって、注文をあきらめて店を出てしまうお年寄りの姿も、決して珍しくありません。
ある人にとっては並ばずに済む便利な注文方法でも、デジタル機器になじみのない人にとっては、食事をとることさえ阻む目に見えない巨大な壁になります。電車の切符を予約するときや銀行の手続きでも同じです。スマホのアプリを開けば10秒で終わることが、アプリを使えないと、何時間もかけて窓口まで足を運ぶ骨の折れる作業になってしまうのです。
このように、同じ社会に暮らしていながら、デジタル技術を手にしているかどうかで日常の便利さやアクセスのしやすさが二つに割れてしまう。それがデジタル・ディバイドの始まりです。
便利さの差から、経済的な不平等へ
この格差は、食べ物を楽に注文できるかどうかという小さな問題では終わりません。いまは大事な福祉サービスの申請、税の減免の案内、緊急の災害通知、求人情報など、暮らしに直結する大切な情報の多くが、オンラインやスマホアプリを通じて真っ先に流れてくるからです。
デジタルの情報をすばやく取り込める人は、より安く買い物をし、役に立つ資産運用や就職のチャンスを先につかみます。逆にデジタルから取り残された人は、高い費用をそのまま払い、他の人より遅れた情報のせいで損を受け入れることになります。
こうして知識や技術の差が収入や人生のチャンスの差へ広がり、貧富の差をさらに固めてしまう悪循環が生まれます。情報がそのままお金や力になる情報化社会では、デジタルから取り残されることが、社会的な孤立につながりやすいのです。
もう少し正確に言うと:機器を持っているかより、使いこなす力の問題
かつてデジタル・ディバイドは、「家にパソコンがあるかないか」のような、機器を持っているかどうかという物理的な問題としてだけ見られていました。けれどもスマホが広く行き渡った今では、単に機械を持っているかを超えて、情報を批判的に読み解き、生み出す力の差へと変わってきました。
専門家は、この格差を大きく三つの段階に分けて説明します。第1段階は機器を手にする「アクセスの格差」、第2段階は機器を日常で使いこなす「活用の格差」、第3段階は得た情報を使って実際の暮らしでどれだけ価値を引き出せるかという「結果の格差」です。
もはや、全員にタブレットを配るだけでは問題は解決しません。人工知能(AI)の時代が始まり、AIを活用して生産性を大きく高める人とそうでない人との間に、新しい格差が生まれつつあるという指摘も出ています。
よくある誤解
デジタル・ディバイドは、スマホやパソコンを買えない貧しい人だけの問題だ。
スマホを持っていても、ゲームや動画を見るだけにとどまり、仕事や学習、お金の管理にうまく生かせない「活用・能力の格差」も、深刻なデジタル・ディバイドにあたります。
日常で出会う場面
電車の切符がスマホアプリであっという間に売り切れ、駅の窓口まで行っても切符が取れないお年寄りの例
政府の若者向け支援金の申請がオンラインだけで行われ、デジタル機器が苦手な支援を必要とする人たちが、申請の機会を逃してしまう場合
つまり ひとことで
デジタル技術へのアクセスのしやすさと使いこなす力の差が、情報、収入、人生のチャンスの不平等につながる現象です。