定義
財政赤字とは、政府が1年間に得た収入よりも、国を運営するために支出したお金の方が多いときに生じる赤字(マイナス)の状態を指します。政府の主な収入である税金よりも、社会保障、防衛、インフラ整備などに使ったお金の方が大きい場合に発生し、不足した差額は通常、国が借金(国債発行など)をして補うことになります。
税金よりも使うお金の方が多いときに起こります
今月の給料よりもクレジットカードの請求額の方が多く、家計簿が赤字になってしまった状態を思い浮かべてみてください。政府が切り盛りする国の台所事情でも、まったく同じことが起こり得ます。
政府の最大の収入源は、国民や企業が納める税金(歳入)です。支出には、道路や橋を造るインフラ整備、年金や医療などの社会保障、防衛体制の維持、公共サービスの提供など、国を運営するためのあらゆる費用(歳出)が含まれます。景気が良いときは税金がたっぷり集まりますが、不況になると企業の業績や国民の所得が減り、税収が急激に落ち込んでしまいます。
一方で不況のときほど、困っている国民を支えたり雇用を生み出したりするために、政府が使わなければならないお金はぐっと増えます。入ってくるお金は減るのに出ていくお金は増えることで、政府の収入より支出の方が大きくなる不均衡が生じるのです。このようにしてできた1年ごとの赤字が年々積み重なり、残った借金の総額のことは「国の借金(債務残高)」などと呼び分けられます。
もう少し正確に言うと
もう少し正確に言うと、財政赤字が出たからといって、決して無条件に国の運営が失敗しているという意味ではありません。経済が深刻な停滞に陥ったときに政府まで財布のひもを固く締めてしまうと、市場に出回るお金が完全に干上がってしまうからです。
このような局面では、政府が借金をしてでも市場にお金を投じる「拡張的財政政策」が必要になります。政府が公共事業を行ったり給付金を支給したりすれば、市中にお金が回り、消費や投資が息を吹き返して、経済が不況から抜け出すための「呼び水」となってくれます。
結局のところ重要なのは、赤字が出たかどうかそのものよりも、借りてきたお金で経済の体力をどれだけ強化できるかです。経済が再び成長軌道に乗り、税収がしっかり増えれば借金を返済できますが、生産的な分野に使えずに浪費してしまうと、手に負えない巨額の借金だけが残ることになります。
足りないお金は国債の発行で穴埋めします
政府は足りない予算を補うために、「国債(国が発行する債券)」という借用書を発行します。金融機関や一般国民、海外の投資家に対して利子を支払うことを約束し、市場からお金を借りてくる仕組みです。
しかし、財政赤字を穴埋めするために借金を増やしすぎると、副作用が生じます。国が市場の余剰資金を大規模に吸い上げてしまうと、お金のレンタル料である金利に上昇圧力がかかります。その結果、民間企業が事業資金を借りにくくなり、民間の投資活動が締め出されてしまうクラウディングアウト効果(締め出し効果)が発生することがあります。
また、雪だるま式に膨らんだ国の借金やその利払いは、将来世代の税負担となって重くのしかかります。そのため国は、景気を刺激する財政支出と、国の借金を管理する財政健全性との間で、賢明なバランスを保ち続けなければならないのです。
よくある誤解
財政赤字は、無条件に国の経済が破綻に向かっている危険なサインである。
深刻な不況期には、政府があえて借金をしてお金を投じることで経済を立て直す「良い赤字」になり得ます。赤字が出たという事実だけで判断するのではなく、赤字の規模が許容できる範囲内か、そして借りたお金をどれほど生産的に使えているかを見極めることが大切です。
日常で出会う場面
世界的な経済危機に見舞われた際、政府が給付金を支給したり雇用を守るための対策を講じたりすることで、財政赤字が拡大します。
大規模な新都市の開発や新幹線の延伸などに一度に巨額の予算を投入すると、その年の支出が跳ね上がり、赤字が発生したり膨らんだりします。
つまり ひとことで
政府の収入より支出の方が多い状態のことで、不況を克服するためには必要ですが、過度になると将来に重い借金負担を残します。