定義
景気刺激策とは、国の経済が冷え込んでお金が回らなくなったとき、政府や中央銀行がお金を市場に流したり減税したりして、消費や投資を呼び戻そうとする総合的な政策です。凍りついた経済エンジンをもう一度かける「呼び水」の役割を果たします。
政府と中央銀行が取り出す2本の注射器
寒い冬、ストーブの火が消えかけたら、燃料を足したりうちわで風を送ったりしますよね。国も、2つのルートで経済に温かさを送り込みます。
1つ目は、政府が直接動く「財政政策」です。政府は減税で国民の手元に残るお金を増やしたり、橋や道路を造る大きな工事を起こして雇用を生み出したりします。給付金を直接配って、今すぐお店でお金を使ってもらうこともあります。政府が自ら財布を開いて、市場にお金を注ぎ込む方式です。
2つ目は、中央銀行が動く「金融政策」です。日本銀行のような中央銀行が政策金利を下げると、銀行の貸出金利が安くなります。利息の負担が軽くなるので、企業は工場を建てるために融資を受け、個人も住宅を買ったり消費を増やしたりします。お金が流れる道を広げて、お金が滞りなく回るよう促す役割です。
最初に入れたお金より経済が大きく息を吹き返すしくみ
政府が道路工事に100億円を使ったとしても、お金の動きはそこで終わりません。工事に携わった労働者や建設会社は、働いた対価として給料や利益を得ます。
収入を得た人たちは、近所の食堂でごはんを食べ、スーパーで買い物をしてお金を使います。すると食堂やスーパーのオーナーの収入が増え、その人たちもまた別のお店で服を買ったり美容院に行ったりします。こうして政府が最初に入れた100億円が人の手を渡り歩くうちに、市場全体では100億円より大きな経済効果が生まれることがあります。ただし、実際の効果の大きさは景気の状況や政策のやり方によって変わり、研究によっては最初に使ったお金より小さいと見積もられることもあります。
景気が悪いときは、将来が不安で誰もが財布のひもを固く締めます。誰もお金を使わなければ物が売れず、会社は人を減らし、経済はさらに悪くなる悪循環に陥ります。そこで政府が先に大きなお金を使い、凍りついた消費に流れを作る呼び水になるのです。
もう少し正確に言うと:甘いけれど危険な副作用
景気刺激策は危機を乗り切るための優れた応急処置ですが、タダのランチではありません。あまりに頻繁に使ったり、一度にお金を流しすぎたりすると、深刻な副作用が出ます。
代表的な副作用は物価の上昇(インフレ)です。市場にお金があふれるとお金の価値が下がり、食事代やガソリン代がどんどん上がってしまいます。また、政府が使うお金を作るために大規模な借金(国債)をすると、国の借金が大きく膨らみます。これは後々、税金や利払いの負担となって将来世代の重荷になりかねません。
だからこそ、危機を脱して経済が自力で回り始めたら、流したお金や優遇措置を秩序立てて回収する出口戦略を、適切なタイミングで実行する必要があります。
よくある誤解
景気刺激策とは、政府が給付金を配ったり減税したりすることだけを指す。
政府が税金や予算を使う財政政策だけでなく、中央銀行が政策金利を下げたりお金を大量に供給したりする金融政策も、景気刺激策のとても重要な柱です。
景気刺激策は、たくさん使えば使うほど必ず経済成長にプラスになる。
お金を流しすぎると物価が急騰し、国の債務も急激に膨らんで、かえって経済の体力をむしばむ毒になることがあります。
日常で出会う場面
経済危機のときに国がすべての世帯へ緊急の給付金を支給して消費を促すのは、財政による景気刺激策です。
景気が急激に冷え込んだとき、中央銀行が政策金利をゼロ近くまで下げて融資を促すのは、金融による景気刺激策です。
つまり ひとことで
景気刺激策とは、落ち込んだ経済を立て直すために、政府と中央銀行がお金を流し金利を下げて、消費と投資を刺激する応急的な政策です。