定義
国際貿易で取引されるすべての商品を数字で分類するために作られた、世界共通の品目分類体系です。世界税関機構(WCO)が定めた規則に基づき、商品の種類や原材料、加工形態に応じて固有の番号を割り当てます。各国の税関はこの番号を基準にして、輸出入時に課される関税率や必要な通関手続きを決定します。
なぜモノごとに番号札が必要なのでしょうか?
海外旅行に行くときにパスポートや身分証明書が必要なように、国境を越える貨物にも国際的に認められた身元証明が必要です。もし文字だけで品名を書いてしまうと、国ごとに言語が異なり呼び方もばらばらなため、税関で大混乱が起きてしまいます。例えば、日本語で「スマホスタンド」や「陶磁器の器」と送り状に書いても、現地の税関職員がどんな素材で何に使う品物なのかを正確に把握するのは困難です。
こうした混乱を防ぐために、世界の国々が集まって一つの大きな共通ルールを作りました。地球上に存在するあらゆる貿易商品を体系的に分類し、種類ごとに固有の番号を割り振ったのです。これこそが国際統一商品分類システムである「HSコード(Harmonized System Code)」です。
HSコードは、輸出入申告書などの書類に品名と併せて記載する番号です。共通の番号があるおかげで、言語の壁があっても商品の種類を一貫して判別でき、通関手続きがスムーズに進みます。ただし、税関は申告されたコードが正しいかを審査し、もし分類を誤っていると、追徴課税を受けたり通関が遅れたりするおそれがあります。
数字6桁に隠されたルール
HSコードは適当に番号を並べたものではなく、極めて緻密な階層構造で作られています。図書館で本を日本十進分類法(NDC)などに基づいて分野別に整理するのとまったく同じ仕組みです。大きな分類から始まり、下の階層へ進むほど具体的で細かな品物に絞り込まれていきます。
コードの最初の2桁は、最も大きなグループである「類(Chapter)」を表します。例えば、生きている動物、木材、繊維、電子機器といった大まかなカテゴリーです。続く2桁は範囲を絞り込んだ「項(Heading)」、最後の2桁は最も細かな区分である「号(Subheading)」を示します。こうして組み合わされた上6桁の数字は、HS条約に加盟する200以上の国や地域で世界共通です。
同じ版のHSコードを用いている限り、アメリカの税関でもヨーロッパの税関でも、上6桁が同じであれば原則として同じ種類の商品として扱われます。実際の関税率や輸入許可の要件は、各国がこのコードや自国の細分番号に基づいて個別に定めています。
もう少し詳しく:6桁の後ろに続く各国の事情
より正確に言うと、世界各国で共通して使われているのは上6桁までです。HSコードは約5年ごとに改訂されるため、国によって適用している版が異なり、上6桁でも一時的にズレが生じる場合があります。そして、6桁の後ろに付け足される数字は、各国が自国の産業政策や細かな統計管理のために独自に定めています。
例えば、日本は国際標準の6桁の後ろに3桁を加えた計9桁の体系(実行関税率表・統計品目番号)を用いています。アメリカは10桁(HTS)、韓国は10桁(HSK)、EUは8桁や10桁の体系を採用しています。そのため、日本から輸出するときに使う9桁の番号と、相手国に輸入申告する際の下位の細分番号は互いに異なる場合があります。
新しい技術を使った新製品が登場すると、どの番号に分類すべきかを巡って国と国との間で激しい関税紛争が勃発することもあります。例えば同じスマートウォッチでも、単なる「時計」に分類されるか、それとも「無線通信機器」に分類されるかによって、課される関税率が大きく変わってくるためです。
よくある誤解
HSコードは世界中すべての国で10桁すべてが完全に共通である。
世界共通なのは最初の6桁(上6桁)だけです。7桁目以降の数字は、各国が自国の政策や貿易統計の管理のために独自に桁を追加して運用しています。
日常で出会う場面
海外通販でBluetoothイヤホンを個人輸入する際、税関はHSコードを確認して電化製品としての関税率を適用し、通関手続きを進めます。
自動車部品メーカーが海外へ部品を輸出する際、正確なHSコードを記載することで、自由貿易協定(FTAやEPA)に基づく関税の減免措置を受けることができます。
つまり ひとことで
国境を越えて行き交うモノの種類ごとに割り当てられる、世界共通の6桁の品目分類番号です。