経済

劣等財(れっとうざい):所得が増えると買わなくなるモノの正体

お財布に余裕ができると、自然と買い物かごから消えていくインスタントラーメンのような存在です。

  • 約3分
  • 図 1点
  • 2026-10-13 検証

定義

所得が増えるほど、かえって人々が購入を減らす商品やサービスのことです。ふつうは懐が温かくなるとモノをたくさん買いますが、暮らし向きがよくなるにつれて、より良い代わりの選択肢に乗り換えるため、自然と消費が減っていく商品があります。

お財布に余裕ができると、なぜカップ麺を食べなくなるの?

学生時代、お金に余裕がないころは、コンビニのカップ麺やおにぎりで食事を済ませることがよくありますよね。少ないお金でもサッとお腹を満たせる、ありがたい一食だからです。

就職して毎月安定した給料をもらうようになると、食卓の風景が少しずつ変わっていきます。カップ麺の代わりに新鮮なサラダや温かい定食を食べる日が増えていきます。このように、所得が増えたときにかえって消費が減る商品を、経済学では劣等財と呼びます。

私たちが日常で出会うほとんどの商品は、たくさん稼ぐほど購入が増える「正常財」です。給料が上がれば服をもっと買ったり、外食の回数を増やしたりしますよね。ところが劣等財は、所得の変化と消費量の変化が正反対の方向に動くという、ちょっと特別な性質を持っています。

品質が悪いから劣等財、ではありません

「劣等」という言葉のせいで、品質が低い商品や不良品だと誤解されやすいのですが、経済学でいう劣等財という名前は、商品の品質や価値を低く評価するものではまったくありません。

劣等財は、あくまで所得と購入量の関係だけを基準にした経済学上の呼び名です。たとえば電車や路線バスは、とても安全で便利な優れた交通手段です。でも所得が大きく増えて自家用車を買う人が増えると、公共交通機関の利用回数が減ることがあります。このとき公共交通機関は、自家用車という代わりの選択肢に比べて、劣等財の役割を果たしているわけです。

ある商品が劣等財かどうかは、人々の主観的な好みと、より良い代替財(代わりに消費できる商品)があるかどうかで決まります。同じモノでも、人の好みや経済状況、社会環境によって、ある人には正常財、別の人には劣等財になることがあります。

もう少し正確にいうと

経済学では、所得が1%増えたときに商品の需要量が何%変わるかを測ります。これを「需要の所得弾力性」と呼びます。所得が増えると購入量も増える一般的な正常財では、この弾力性の値が0より大きいプラス(+)になります。

一方、劣等財は所得が増えるほど購入量が減るので、需要の所得弾力性が0より小さいマイナス(-)で計算されます。懐が温かくなることが、その商品への需要を押し出す力として働くわけです。

さらに踏み込むと、劣等財の中には、価格が下がったのにかえって人々が買わなくなるという、非常に極端な例外があります。これをイギリスの経済学者ロバート・ギッフェンの名前にちなんで「ギッフェン財」と呼びます。ただしギッフェン財は、とても貧しい世帯が主食にする穀物のように、きわめて限られた条件でしか観察されない珍しいケースです。大半の劣等財は、価格が下がれば需要が増えるという、ふつうの市場の法則にきちんと従います。

よくある誤解

誤解

劣等財は品質が低かったり、欠陥があったりする不良品である。

事実

品質の優劣を表す言葉ではありません。所得が増えたときに、消費者がより好ましい代わりの選択肢を求めて購入を減らす商品を指す、経済学の用語です。

日常で出会う場面

  1. 所得が増えた会社員が、コンビニ弁当の代わりに専門の飲食店を利用するようになり、コンビニ弁当の消費が減ります。

  2. 暮らし向きがよくなって、中古家具の代わりに新品の家具を買うようになり、中古家具の消費が減ります。

つまり ひとことで

劣等財は品質の悪いモノではなく、所得が増えるほど、より良い代わりを求めて消費が減っていく商品のことです。

作成 2025-12-20 更新 2026-10-13 検証 2026-10-13