リップスティック効果

お財布が厳しいとき、何十万円もする高級バッグの代わりに、数千円のデパコスリップを1本買って気分を上げる消費心理です。

定義 景気が悪化してお財布事情が厳しくなったとき、高額な大型商品ではなく、比較的手が届きやすくちょっとした贅沢感を味わえる嗜好品の売上がかえって伸びる現象を指します。収入は減っても、ささやかな消費を通じて心理的な満足感や癒やしを得たいという気持ちから生まれます。

なぜ不況になるとリップが売れるの?

高いコートや海外旅行を諦めざるを得ないほど経済が厳しくなると、人は大きな喪失感を抱きます。買いたいものを無理に我慢し続けると、日々のストレスが溜まって息が詰まってしまいますよね。

そんなとき、人々は自分を労わる「ささやかな贅沢(プチ贅沢)」を自然と求めるようになります。何十万円もする高級ブランドのバッグはとても買えませんが、同じブランドのロゴが入った3,000〜4,000円のリップなら、それほど無理なく手に入れられるからです。

つまり、大きなお金がかかる支出はぐっと抑えつつ、浮いた予算の一部を使って最高の気分を味わえる小物を買うわけです。少ない金額でも「自分を大切にしている」という特別な充足感が得られるからです。

この現象は、1930年代のアメリカの大恐慌時代に初めて注目されました。あらゆる工場が稼働を停止し、経済が崩壊する最悪の不況下でも、不思議なことに化粧品会社の売上は20パーセント以上も急増し、大きな話題となりました。

不況期リップスティック効果比較図 高額消費の断念 300万W 支出激減 ✕ プチ贅沢の選択 3.5万W 売上上昇 📈

リップスティックだけではありません

現代社会において、この効果は化粧品売り場だけに留まりません。男性の場合、不況期に何万円もする新しいスーツを仕立てる代わりに、華やかなネクタイや靴下を買って気分転換を図る姿がよく見られます。

飲食市場でも全く同じことが起こります。高額なホテルのビュッフェや高級レストランでの外食は諦めるものの、1,000円前後のプレミアムなカットケーキやスペシャルティコーヒーを楽しんで、1日の疲れを癒やすのです。

映画館や動画配信サービスのサブスクリプションのように、少額で何時間も楽しめるエンタメ商品の人気も高まります。お金のかかる趣味の代わりに、自宅や身近な場所で楽しめるコストパフォーマンスの高い余暇を選ぶわけです。

このように不況期には、全体の支出をぐっと引き締める一方で、日常に小さな幸せをくれる特定のアイテムに消費が集中します。節約はしつつも、人生の楽しみは決して手放さないという賢い防衛戦略なのです。

もう少し正確に言うと

もう少し正確に言うと、この現象は収入が減ると無条件に安いものばかりを求める「劣等財(所得が減ると需要が増える商品)」の消費とは性質が異なります。カップ麺や公共交通機関のように、単に生活費を削るために選んでいるわけではないからです。

消費者は依然として高級感あるブランド価値や自己満足を強く求めています。ただ口座残高の都合上、自分が無理なく手を出せる最小単位のプレミアム商品で折り合いをつけているに近いのです。

近年の経済学では、これを「ミニラグジュアリー」や「スモール・インダルジェンス(小さなご褒美)」と呼ぶこともあります。不況だからといって、人の見栄や自分を特別扱いしたい気持ちまで完全に消えるわけではないことをよく示しています。

そのため企業も、不況期だからといって無闇に値下げをする価格競争ばかりを仕掛けるわけではありません。手が届く価格帯の中で心理的な満足感を最大化できる小型のプレミアム商品を戦略的に打ち出し、消費者の心を掴んでいます。

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

景気が悪くなると、人々は一番安い商品だけを求めるようになる。

✓ 事実

生活費全般は切り詰めるものの、心理的な満足感を得るために、手頃な価格帯の中で最高級ブランドを選んで消費する傾向も同時に現れます。

🧺 日常で出会う場面

1 不況期に車の買い替えは見送りつつ、高級スイーツやプレミアムカフェに通う現象
2 高価なブランド服の代わりに、憧れのハイブランドの香水やハンドクリームをプレゼントし合う文化
💡 つまり ひとことで

不況で財布の紐が固くなったとき、大きな出費は抑えつつ、手頃な贅沢品で気分転換と満足感を得ようとする消費心理のことです。