定義
微小重力とは、重力が完全に消えたのではなく、物体と周囲の環境が同じ速度で一緒に落下することで、見かけ上の重さがごくわずかしか残っていない状態を指します。地球の軌道を周回する宇宙ステーションのように、絶えず自由落下し続けている環境で主に体験できます。
宇宙ステーションではなぜ体が浮くのでしょうか?
遊園地のフリーフォールに乗って一気に落下する瞬間、体がふわっと浮き上がり、安全バーから体が少し離れるような感覚を味わったことがあるのではないでしょうか。もしエレベーターのケーブルが切れ、床と乗客が同時に下へと落下したら、乗客の足は床を押すことができず、宙にふわりと浮いてしまいます。
宇宙ステーションにいる宇宙飛行士たちがぷかぷかと浮いている理由もまったく同じです。宇宙ステーションが位置する上空約400kmには、地表の約90%にも及ぶ強い重力が依然として働いています。重力がないから浮いているのではなく、宇宙ステーションと飛行士が地球に向かって果てしなく一緒に落下し続けているため、重さを感じないのです。
では、なぜ地球に激突しないのでしょうか? 宇宙船が前進するスピードがあまりにも速いため、地球の丸みに沿ったカーブを描きながら落下しているからです。スピードが維持されている限り、地面にぶつかることなく落ち続けることになります(実際には大気のわずかな抵抗があるため、定期的にエンジンを噴射して高度を維持しています)。
もう少し正確に言うと
私たちが普段「無重力」と呼んでいる状態の、科学的に正確な名称がまさに「微小重力(マイクログラビティ)」です。「マイクロ(micro)」は100万分の1を意味する接頭辞ですが、ここでは地表で感じる重さよりもはるかに小さいという意味合いで使われています。実際の値は状況によりますが、およそ100万分の1から1000分の1程度の間で変動します。
実際の宇宙ステーション内部では、完全にゼロの重力状態を作ることは困難です。宇宙飛行士が動くときの振動や、機械設備が作動する細かな揺れが壁を伝わりますし、ごくわずかですが大気との摩擦も生じるためです。
重力そのものはほとんどそのまま作用しているうえ、こうした微小な力や位置による重力の差(潮汐効果)が加わるため、完全無欠な自由落下にはなりません。そのため、重力がゼロになるのではなく、極めてわずかな見かけ上の重さ(加速度)が残ることになります。だからこそ科学の世界では、「無重力」ではなく「微小重力」という言葉が公式に使われているのです。
地球上では見られない、微小重力の不思議な世界
微小重力の環境では、地球上であたりまえだった現象が一変します。地球では温かい空気が上昇するため、ろうそくの炎は先のとがった涙形になりますが、ここでは密度差による対流現象が起きないため、球体に近い丸いドーム状の青っぽい炎が燃え上がります。
水もコップには収まらず、表面張力によってきれいな球形となって宙を漂います。沈殿や対流が起こらないこの特殊な環境は、科学者たちにとって巨大な実験室となっています。
対流や沈殿が抑えられた環境を活かして、特定のタンパク質の結晶を大きく均一に成長させて構造を解析し、それを新薬の開発に役立てたり、骨や筋肉が衰える生体変化を調べて骨粗しょう症や老化のメカニズムを解明したりと、最先端の研究が日々活発に行われています。
よくある誤解
宇宙ステーションには地球の重力がまったく働かない「無重力」状態である。
宇宙ステーションが周回する上空約400kmには、地表の約90%もの重力がそのまま作用しています。宇宙船と飛行士が同じ速度で落下し続けているため、重さを感じないだけなのです。
日常で出会う場面
国際宇宙ステーション(ISS)で、宇宙飛行士が宙に浮いた水滴をストローで飲む様子です。
遊園地のアトラクションで頂上から急降下する際、一瞬だけ体がふわっと浮く瞬間です。
つまり ひとことで
重力が消えたのではなく、周囲と一緒に果てしなく落下し続けることで重さを感じない状態です。