定義
原子のいちばん外側に電子が8個入ると安定するという経験則です。原子どうしが結合するとき、電子をやり取りしたり分け合ったりして、この8席がそろう場合がよくあります。化学結合がどんな組み合わせでできるのかを見当づける、基本の枠組みです。
8席が埋まった長いベンチ
8席ある長いベンチを思い浮かべてください。その列が全部埋まると、人はもう席を移らなくなります。原子もこれによく似ています。原子のいちばん外側には電子が座る席があり、それが8個埋まったときにいちばん落ち着きます。
ネオンやアルゴンのような気体を思い出してください。これらはほかの物質となかなか仲良くならず、ほとんど反応しません。外側の8席がすでに埋まっていて、もらうものも手放すものもないからです。
逆に、外側の席が1つ空いていたり、電子がぽつんと1個だけ残っていたりする原子は落ち着きません。食塩の材料であるナトリウムは外側の電子が1個だけなので、その1個を手放したがります。塩素は席が1つ空いているので、1個もらいたがります。
2つが出会うと、足りない側と余っている側がぴったり合います。どの原子どうしがどんな組み合わせで結合するのかを、こうして見当づけることができます。
やり取りするか、分け合うか
8席を埋める方法は大きく2つあります。1つは、電子をそっくりやり取りする方法です。ナトリウムが電子1個を塩素に渡すと、ナトリウムのいちばん外側の殻は空になり、すでに8個が入っていた内側の殻が新しい最外殻になります。塩素は空いていた1席を埋めて、外側の電子が8個になります。
電子を渡したナトリウムはプラスの電気を帯び、受け取った塩素はマイナスの電気を帯びます。反対の電気を帯びた2つは磁石のようにくっつき合い、塩の結晶になります。こうしてできる結合をイオン結合といいます。
もう1つは、電子を共有する方法です。水分子では、酸素と水素が電子を何個か真ん中に置いて分け合います。ひと組の電子を2つの原子が同時に自分のものとして数えると、どちらも席が埋まったことになります。
このように分け合う結合を共有結合といいます。やり取りしても分け合っても、結果の姿は似ています。外側の席が8個にそろうという点です。
もう少し正確にいうと
もう少し正確にいうと、8という数字はどこでも通用するわけではありません。水素とヘリウムは外側の席がもともと2つしかないので、2個埋まれば十分です。そのため水の中の水素は電子2個で満足しています。
周期表の真ん中あたりにある金属も事情が違います。電子が入る席がもっと複雑で、8という数字できれいには割り切れません。ホウ素のように6個で結合を終える原子もありますし、リンや硫黄のように8個を超えて使う場合も知られています。
ですからオクテット則は、自然が守らなければならない法則というより、多くの場合によく当てはまる見当づけのルールに近いものです。実際に結合ができる理由は、原子が集まったときに全体のエネルギーが下がるからで、8席はその結果としてよく現れる形にすぎません。実際の電子は決まった席に座った粒ではなく、原子核のまわりに雲のように広がっています。
8つの席という絵は、結合の数を数えやすくするための便利な道具です。この道具がどこまで通用するかを知って使えば、化学がぐっとはっきり見えてきます。
よくある誤解
オクテット則は、どんな原子にも例外なく当てはまる自然法則である。
水素とヘリウムは電子2個で安定しますし、周期表の真ん中あたりの金属では8に合わない場合が珍しくありません。よく当てはまる見当づけのルールに近いものです。
電子は原子のまわりに置かれた8つの席に1個ずつ座っている。
電子は席に座った粒ではなく、原子核のまわりに雲のように広がっています。8つの席は、結合の数を数えやすくするための絵です。
日常で出会う場面
食塩は、ナトリウムが電子1個を塩素に渡して、2つの原子ともいちばん外側の電子が8個になった結果です。
風船に入れたヘリウムは、まわりの気体と混ざっても反応しません。ヘリウムは外側の席が2つしかなく、2個ですでに満席になる例外のケースです。
つまり ひとことで
原子どうしが電子をやり取りしたり分け合ったりして結合するとき、いちばん外側の電子の席が8個にそろう場合が多い、という見当づけのルールです。