定義
共有結合とは、原子どうしが足りない電子をお互いに出し合って電子対をつくり、それを一緒に分け合うことでエネルギーを下げ、安定した分子をつくる化学結合です。
なぜ原子は一人でいないで手をつなぐのでしょう?
雨の日に、傘が一本ずつ足りない二人の友達を思い浮かべてみてください。それぞれが雨に濡れながら寂しく歩くより、肩を寄せ合って一本の傘をさせば、二人とも雨をよけられます。お互いの持ち物を貸し合って、一緒に得をする知恵と同じです。
世の中のたくさんの非金属原子も、この友達とよく似た状況にいます。多くの原子は、いちばん外側の殻の電子が8個になるとエネルギーが下がり、落ち着いた状態になります。これを化学ではオクテット則(8電子則)と呼びます。ただし水素のようにとても小さな原子は例外で、外側の殻に電子が2個入れば安定します(デュエット則)。
ところが、酸素や炭素、水素のような原子は、自分の力だけではその席を埋めきれません。電子を黙って人に奪われるのはいやですし、無理やり奪ってくるのも大変です。そこで、自分の持つ電子を真ん中に出し合って、お互いの電子をいっしょに共有する結合をつくるのです。
こうして原子どうしが手を取り合うように電子を分け合った瞬間、それぞれの原子は、まるで自分が電子をすべてそろえたかのような満ち足りた状態になります。お互いの足りないところを補い合う、いちばん平和な化学的妥協というわけです。
どうしてほどけずに、しっかり結びつくのでしょう?
綱引きの一本のロープを、二人が両側からぴんと張って握っている姿を想像してみてください。両側が強く引けば引くほど、二人はロープを介して一定の距離を保ったまま、しっかり一つに結ばれます。
原子の中心にはプラス(+)の電気を帯びた原子核があり、二つの原子がいっしょに出した電子はマイナス(-)の電気を帯びています。磁石のちがう極どうしが強くくっつくように、プラスとマイナスの電荷のあいだには静電気的な引力(引き寄せる力)がはたらきます。
こうして両方の原子核が、真ん中にある共有電子対を同時に強く引っ張ることで、二つの原子はしっかり固定されます。電子を無理に受け渡してイオンになる代わりに、共通の宝物を間に置いて、二つとも結びつけられているという、かしこい方法です。
この結合の力は、思っているよりずっと強力です。ただし、強いのは原子と原子を結ぶ共有結合で、すでにできあがった分子と分子のあいだをつなぐ力はずっと弱いのです。水が100度で沸騰するのも、水分子どうしが離れるのであって、H₂Oの中の共有結合が切れるわけではありません。だから分子の骨組みそのものはなかなか崩れず、私たちが暮らす物質の世界の丈夫な土台になっています。
もう少し正確にいうと
もう少し正確にいうと、原子はいつでもきっちり半分ずつ公平に電子を分け合っているわけではありません。原子の種類ごとに、電子を自分のほうへ引き寄せる力の大きさ(電気陰性度)がちがうからです。
私たちが毎日飲む水(H₂O)が代表的な例です。酸素原子は水素原子よりも、電子をずっと強く引き寄せます。その結果、電子の雲が酸素のほうへ偏り、酸素はわずかなマイナスの電荷を、水素はわずかなプラスの電荷を帯びる極性共有結合が現れます。
また原子は、必要に応じて、電子を一対だけ(単結合)でなく、二対(二重結合)や三対(三重結合)共有することもあります。共有する電子対が多くなるほど結合の長さは短くなり、原子どうしはいっそうしっかり結びつきます。
このように多彩でしなやかに手をつなぐ共有結合のおかげで、私たちの体をつくるDNAやタンパク質から、ダイヤモンド、最先端の新素材プラスチックまで、数えきれないほど複雑な分子が地球上に生まれることができました。
よくある誤解
共有結合をすると、電子を完全にやり取りしてイオンになる。
電子を完全にやり取りして陽イオンと陰イオンになるのは「イオン結合」です。共有結合は、電子を捨てたり奪ったりせず、真ん中に置いたまま共有する方式です。
日常で出会う場面
水素原子が二つ、電子を一対分け合って、安定した水素ガス(H₂)になります。
酸素原子一つと水素原子二つが電子を共有して、生命に欠かせない水(H₂O)分子をつくります。
ダイヤモンドは、炭素原子がすきまなく四方八方にがっちりと共有結合してできた物質です。
つまり ひとことで
原子どうしが足りない電子を真ん中に出し合って分け合い、しっかりした安定な分子をつくる結合です。