定義
原子核のまわりに何層にも分かれて存在する電子のうち、一番外側の層にあって化学結合に関わる電子を指します。多くの場合は最外殻電子(一番外側の殻にある電子)の数と同じですが、最外殻がすでに満杯になっている18族元素では0個と数えます。ほかの原子と出会ったときにやりとりしたり共有したりするのはこの電子たちです。そのため、どのような反応をするかは価電子の数によって大きく左右されます。
一番外側の列に座る生徒たち
教室の席が先生を中心にして何列もの同心円状に並んでいると想像してみてください。内側の列から順に席が埋まっていき、列ごとに座れる人数も決まっています。隣のクラスの友だちがドアを開けて入ってきて手を差し伸べたとき、その手に触れられるのは一番外側の列に座っている生徒だけです。
原子もこれとよく似ています。中心に原子核があり、そのまわりを電子がいくつかの層(電子殻)に分かれて取り巻いています。内側の層はすでに満席なので、外の世界と直接ふれあうことはほとんどありません。
ほかの原子と出会ったときに、実際に受け渡したり共有したりするのは一番外側の層にある電子だけです。この電子たちを「価電子」と呼びます。最も外側の殻に入っている電子自体は「最外殻電子」と呼ばれ、普段は同じ電子を指すことが多いですが、外側の層がいっぱいになっている18族元素は例外です。
外側の列の人数が性質を決める
外側の列に何人座っているかによって、原子の振る舞いが変わります。ちょうど1人だけ座っているなら、その1人を簡単に外へ送り出そうとします。ナトリウムがまさにそうした原子で、水に入れると激しく反応します。外側の電子1個が原子核に弱く引きつけられているだけなので、簡単に離れていってしまうからです。
逆に席が1つだけ空いていると、ほかの原子から電子を引っ張ってきて埋めようとします。食塩(塩化ナトリウム)をつくる塩素がその代表です。ナトリウムが電子を1個手放し、塩素がそれを受け取ることで、お互いに引きつけ合って食塩が生まれます。
では、外側の席がすでに満杯の原子はどうでしょうか。わざわざ誰かと手をつなぐ理由がないため、めったに反応しません。ヘリウムやネオンといった気体がこれにあたります。こうした元素は結合に参加する電子がないとみなされ、価電子の数を0個と数えます。ネオンは一番外側の殻に8個の最外殻電子を持っていますが、価電子は0個です。周期表で縦の同じ列に並ぶ元素同士がよく似た性質を示すのも、価電子の数が同じだからです。
もう少し正確に言うと
教室の座席という表現は、イメージをつかむための例えです。電子は決まった椅子にお行儀よく座っている玉のようなものではなく、原子核のまわりのどこかに存在する確率の雲のように広がっています。ただし、それぞれの層(殻)に入れる電子の数に定員があるという点は、実際の仕組みとよく一致しています。
また、外側の列が8席で満杯になるという説明も、すべての場合に当てはまるわけではありません。水素とヘリウムは一番内側の層に入るため、2席だけで満杯になります。また、鉄や銅のように周期表の中央にある金属(遷移金属)は、内側の層の電子まで反応に関わるため、多彩な結合のしかたを見せます。
それでも大筋は変わりません。外側の列にいる電子の数が、その元素がどのように反応するかを主導して決めます。ただし、同じ縦の列にあっても、原子の大きさによって反応の激しさは異なります。周期表の縦の列(族)は価電子の数と、横の行(周期)は電子が入っている層の数と関係しています。初めて目にする元素であっても、一番外側の状況さえ分かれば、どんな振る舞いをするか大体の見当がつくのです。
よくある誤解
価電子とは、原子に含まれるすべての電子のことである。
全体ではなく、一番外側の層にある電子のうち化学結合に参加する電子だけを指します。そのため、最外殻が満杯になっている18族元素では0個と数えます。内側の層の電子は、通常は化学反応に関与しません。
価電子が多いほど、より激しく反応する。
数の多さよりも、外側の層を埋めたり空にしたりするのがどれだけ簡単かが重要です。価電子が1個のナトリウムや7個の塩素はどちらも非常に活発に反応しますが、4個の炭素は比較的穏やかに結合します。
日常で出会う場面
食塩は、ナトリウムが外側の電子を1個差し出し、塩素がそれを受け取ることで作られます。
風船に入れるヘリウムがほかの物質とほとんど反応しない(化合物をめったに作らない)のも、一番外側の層がすでに満杯だからです。
つまり ひとことで
原子の一番外側の層にあって結合に関わる電子、すなわち価電子の数が、その元素の反応のしかたや化学的性質を大きく決定づけます。