科学

光屈性

光が当たらない側をぐんと長く伸ばして、窓辺の鉢植えのように植物が日差しの方へ首を向けられるようにする、成長のワザです。

  • 約3分
  • 図 2点
  • 2026-10-13 検証

定義

植物が光の来る方向を感じ取り、そちらに向かって自分で茎を曲げながら育つ性質のことです。より多くの日光を浴びて光合成をうまく行うために進化した、植物の生き残り戦略です。

窓辺の鉢植えが窓の方を向くのはなぜ?

日当たりのいい窓辺に鉢植えを数日置いたままにすると、茎も葉もすっかり窓の方へ傾いているのに気づくはずです。鉢を180度回しても、数日後にはまた向きを変えて窓の方へ首を伸ばします。

植物は動物のように足がないので、日当たりのいい特等席まで歩いていくことはできません。そのかわり、植物にとって日光はごはんであり、エネルギーの源です。葉に当たる光が多いほど、栄養をつくる光合成をずっと活発に行えるからです。

そこで植物は、少しでも多くの光を受けるために、体そのものの形を変える方法を選びました。このように、光という刺激を感じて、光の当たる方向へ成長する向きを変える現象を光屈性と呼びます。茎の先が光の来る方向に気づき、体を曲げてお日さまを迎えるわけです。

日陰側を長く伸ばす、オーキシンの魔法

植物が体を曲げるカギは、茎の中で起こる「アンバランスな成長」にあります。茎の先では、細胞をぐんぐん育てる「オーキシン」という植物成長ホルモンがつくられます。

オーキシン自体が光を感じるわけではありません。茎の片側だけに光が当たると、光を感知するタンパク質(フォトトロピン)がシグナルを送り、それに応じてオーキシンが光の反対側である日陰側へ移動します。その結果、光の当たらない裏側の茎にオーキシンがたっぷり集まります。

オーキシンが集まった裏側の細胞は、水を吸い込みながらものすごい勢いで縦に伸びます。一方、光を直接受ける表側の細胞は、成長がゆっくりになったり、ほとんど止まったりします。運動場のトラックを回るとき、外側のランナーのほうが長い距離を走るからカーブができるように、裏側だけが長くなると、茎全体が自然に表側(光のある側)へ丸く曲がっていくのです。

もう少し正確に言うと:根は光よりも重力に従います

ふつう目にする茎は光に向かって近づきますが、根はまったく逆の動きをします。根に光を当てると、光が来る方向とは反対側へ曲がって伸びます。これを負の光屈性と呼びます。

根が光を避けて曲がるときにもオーキシンが関わっていると考えられていますが、正確にどう働くのかはまだ研究中です。オーキシンがどちら側により多くたまるのかについても、研究によって結果が分かれています。また、根は茎よりもオーキシンにずっと敏感で、茎の成長を助ける程度の濃度でも、かえって成長が抑えられてしまいます。

ただし、地中の根が下へ伸びる主な理由は光ではありません。土の中にはそもそも光がほとんど届かないからです。根が下へ伸びるのは、重力を感じ取ってその方向へ伸びる重力屈性(屈地性)のためです。こうして茎は光に向かって上へ、根は重力に従って下へ伸び、植物は日光も水も養分もしっかり手に入れます。

よくある誤解

誤解

植物は、光を受ける側の細胞が日光を好んでより速く成長するから、光の方へ曲がる。

事実

実際はまったく逆です。光の信号によってオーキシンというホルモンが日陰側へ移動するため、光の当たらない裏側の細胞のほうが長く伸び、茎が前へ押されるように曲がるのです。

日常で出会う場面

  1. 窓辺に置いたモンステラの茎が、数日で窓の方へ曲がって伸びていく様子です。

  2. 暗い箱に小さな穴を開けて、もやしやエンドウの芽を育てると、穴から入る光に向かって折れ曲がるように伸びます。

つまり ひとことで

植物成長ホルモンのオーキシンが日陰側の細胞をより長く伸ばすことで、植物は日光に向かって自分で曲がりながら育ちます。

作成 2026-07-12 更新 2026-10-13 検証 2026-10-13