基軸通貨
世界中の国が国境を越えて取引するときに、誰もが文句なしで受け取ってくれる「地球規模の万能商品券」のようなお金です。
定義 海外との貿易や金融取引を行う際に、基本として使われる中心的な通貨のことです。国ごとに使っているお金は異なりますが、基軸通貨さえ持っていれば、世界中どこでもモノを売買したり、国同士の借金を返済したりできます。現代の世界経済で圧倒的な地位を誇る代表的な基軸通貨は、アメリカのドル(米ドル)です。
なぜ世界は米ドルで取引するのでしょうか?
海外旅行に行って現地の市場で日本の円をそのまま出しても、受け取ってもらえないことが多いですよね。その国では日本円のままでは他のモノを買えないからです。国家間の巨大な貿易もこれとまったく同じで、すべての国が安心して受け取れる共通の決済手段がどうしても必要になります。
第2次世界大戦が終わるころ、世界の金の大部分を保有していたアメリカがその解決役として名乗り出ました。1944年に米国のブレトンウッズで開かれた会議で、アメリカは「35ドルを持ってくれば、いつでも純金1オンスと交換する」と約束したのです。この約束のおかげで、各国は金の代わりにドルを信用して取引するようになり、ドルは国際取引の確固たる標準通貨へと登りつめました。
1970年代に入って金との交換制度(金本位制)は幕を閉じましたが、アメリカは次の一手を打ち出しました。世界経済の血液であるサウジアラビアの原油決済を、ドルだけで行う取り決めを結んだのです。これにアメリカの強大な軍事力と巨大な経済規模が加わり、ドルは今なお代わりのきかない世界の共通通貨として君臨し続けています。
基軸通貨を持つ国の特権と悩み
基軸通貨を持つ国は、想像を超えるほど大きな経済的特権を享受しています。紙にインクを刷って紙幣を印刷するわずかなコストだけで、他国の高級車や原材料といった高価な品々を簡単に手に入れられるからです。このように通貨を発行することで得られる莫大な利益を、経済学ではシニョリッジ(通貨発行益)と呼びます。
また、海外から資金を借りるときも、外国のお金ではなく自国の通貨で国債などを発行して借りることができます。そのため、為替レートの急騰や外貨の枯渇によって国家が破綻するような通貨危機を心配する必要がありません。むしろ危機が起きるほど、世界中の投資家は最も安全だと信じるドルを求めて集まってくるからです。
しかし、この絶大なメリットの裏には、避けて通れない厄介なジレンマが潜んでいます。世界中の貿易をスムーズに回し続けるためには、アメリカが絶えず世界中にドルを供給しなければなりません。そのためには、アメリカは他国の製品を輸入し続けて巨額の貿易赤字を出し続ける必要がありますが、赤字が雪だるま式に膨らむと、ドルの価値と信用が揺らぐという矛盾に直面します。これを発見した経済学者の名にちなんで「トリフィンのジレンマ」と呼びます。
もう少し詳しく言うと
基軸通貨は、アメリカのドルだけに限られているわけではありません。国際外国為替市場で活発に取引されている欧州連合のユーロ、日本の円、イギリスのポンドなども世界経済で頼もしい補助役を果たしており、一般に準基軸通貨と呼ばれています。
しかし、実際の取引や保有シェアを見ると、ドルの圧倒的な独走状態は揺らいでいません。世界中の中央銀行が非常時のために金庫に蓄えている外貨準備のうち、ドルが占める割合は約60%に達します。中国の人民元をはじめとする他の通貨がドルの覇権に挑み続けていますが、決済ネットワークの利便性や金融市場の透明性の面で、ドルを短期間で追い抜くのは極めて困難です。
結局のところ、基軸通貨を生み出す最も本質的な鍵は、通貨の見栄えではなく国際社会全体からの揺るぎない信頼です。「明日も、10年後もこのお金の価値が保たれる」という確信が崩れない限り、基軸通貨としてのドルの強力な地位が揺らぐことは容易にはないでしょう。
🤔 よくある誤解
基軸通貨は、国連や世界銀行といった国際機関が公式な投票で指定したお金である。
基軸通貨は、法律や公式機関の任命によって決まったものではありません。世界の市場参加者や各国が、その国の経済規模と信頼性の高さから自発的に最も多く使うようになり、自然と確立された地位です。
🧺 日常で出会う場面
基軸通貨とは、世界中の貿易や金融取引で基本として使われる中心的な通貨であり、現在は米ドルがその役割を担っています。