有償増資
ピザをさらに細かく切り分けて、新しいピースを他の人にお金を払ってもらって売るようなものです。
定義 企業が事業に必要な資金を集めるために新しく株式を発行し、投資家にお金を支払ってもらって買ってもらうことです。銀行からの借金(負債)を増やさずに自己資本を増やす代表的な資金調達方法です。
ピザのピースが増えると起こること
4人の友達で1枚のピザを4等分し、1ピースずつ分け合って食べていたとします。ところが、そのピザを8ピースに細かく切り直し、増えた4ピースを別の友達にお金をもらって売ると言い出したらどうでしょうか。ピザ1枚全体の大きさは変わらないのにピースの数だけが増えるため、自分が持っている1ピースの大きさは半分に縮んでしまいます。
これを株式市場では株式価値の希薄化(薄まること)と呼びます。企業が新しい株式をたくさん発行すると、既存の株主が持っている1株あたりの価値が下がってしまうことがあります。そのため、一般的に有償増資の発表があると、株価が一時的に下落することが多くなります。
さらに企業は、新しい株を早く買ってもらうために、通常の市場価格よりも10〜30%ほど割り引いた価格で売り出します。既存の株主から見れば、持ち株の価値が薄まる上に市場に割安な株が大量に流れ込んでくるため、不安にならざるを得ません。
有償増資は絶対に悪いこと?
では、有償増資は株主にとって必ず損になる悪いニュースなのでしょうか? その答えは新しく集めたお金を何に使うかにかかっています。
注文が殺到して工場が足りない半導体メーカーがあるとしましょう。この会社が最新鋭の工場を建設したり研究開発を進めたりするために有償増資を行うのであれば、良いサインになる可能性があります。今は一時的に自分のピザのピースが小さくなったとしても、新しい工場で莫大な利益を上げ、ピザ全体の大きさを2倍にも3倍にも大きくできるかもしれないからです。
しかし反対に、業績が悪化して膨らんだ借金を返すためや、日々の運転資金を補うために株を発行するなら危険信号です。ピザ全体の大きさは育たないのに、ピースだけを切り刻み続けることになるからです。結局のところ、有償増資が薬になるか毒になるかは、企業の成長性にかかっています。
もう少し詳しく見ると
もう少し正確に言うと、有償増資は誰に対して新しい株を売るかによって市場の反応が大きく分かれます。購入できる対象によって、主に3つの方式に分かれています。
1つ目は、既存の株主に優先して購入する権利を与える「株主割当」です。既存の株主は割安な価格で新株を買う権利を受け取ることができます。2つ目は、既存の株主に限らず一般の投資家から広く募集する「公募増資(一般公募)」です。
3つ目は、企業が指定した特定の企業や投資家だけに割り当てる「第三者割当」です。もし世界的な大企業が自社の技術力を高く評価し、業務提携パートナーとして出資してくれるような第三者割当増資であれば、市場ではむしろ大きな好材料(ポジティブな材料)と受け止められ、株価が急騰することもあります。
🤔 よくある誤解
有償増資は株価を下げるだけの絶対的な悪材料だ。
集めた資金で将来性の高い工場を建設したり事業を拡大したりすれば、中長期的に企業価値が高まり、株価がさらに大きく上昇することもあります。
有償増資を行うと、企業の借金が増える。
有償増資は借り入れ(負債)ではなく出資(自己資本)です。企業には利息を支払ったり元本を返済したりする義務はありません。
🧺 日常で出会う場面
有償増資はお金を払い込んでもらって新しい株を発行することですが、集めた資金が未来の成長のために正しく投資されれば大きなチャンスにもなり得ます。