定義
リング・オブ・ファイア(環太平洋造山帯)とは、太平洋を取り囲むように連なる巨大な火山・地震活動ゾーンのことです。世界で起きる地震の約90パーセント、そして活動中の火山の75パーセント以上が、この弓なりの境界線に集中しています。
なぜ太平洋のまわりばかりで火花が散るのか?
ぐつぐつ煮え立つ巨大な鍋の上に、割れて何枚かに分かれたフタを敷き詰めたところを想像してみてください。下から湧き上がる熱い蒸気のせいで、フタの破片同士が押し合い、ぶつかり合ってガタガタと音を立てます。その隙間からは、閉じ込められていた熱い蒸気や煮汁があちこちに噴き出しますよね。もちろん実際の地球内部のマントルは液体のスープではなく、非常にゆっくりと流動する固体の岩石ですが、マグマはまさにこうしたプレートがぶつかる場所で新たに生み出されます。
私たちが暮らす地球の表面も、この割れたフタとよく似ています。硬いひと続きの殻ではなく、十数枚の巨大な「プレート(地球の表面を覆う岩盤)」に分かれています。これらのプレートは、マントルの対流や沈み込むプレート自体の重みなどに引っ張られ、1年に数センチメートルずつ絶え間なく動いています。
太平洋の海底をつくる太平洋プレートは、地球上で最も大きなプレートです。この太平洋プレートやナスカプレートといった太平洋底のプレートが、ユーラシア、北アメリカ、南アメリカなどの周辺プレートと四方八方でぶつかり合い、場所によっては横にすれ違っています。まさにその巨大なプレート同士がかみ合う縁のライン全体が、リング状(馬蹄形)のリング・オブ・ファイアを形作っているのです。
ぶつかり合う隙間で起きていること
性質の異なる2つのプレートが正面から衝突すると、何が起こるでしょうか。海底をつくる重くて冷たい海洋プレートは、比較的軽い大陸プレートと出合うと、その下深くへと潜り込んでいきます。この現象を科学用語で「沈み込み(サブダクション)」と呼びます。
海底にあった海洋プレートは、水分をたっぷり含んでいます。このプレートが地下深くへ押し込まれて高圧・高温にさらされると、閉じ込められていた水が上方の熱いマントル岩石へと絞り出されます。不思議なことに、岩石に水が混ざると融点が大幅に下がるため、本来なら溶けない温度のマントルが部分的に溶けてマグマ(ドロドロの液体状の岩石)が生まれます。軽くなったマグマが浮き上がり、地表へ噴き出る現象がまさに火山の噴火です。
また、2つの巨大なプレートが押し合いながら耐えている間、地下にはとてつもない歪み(ひずみ)のエネルギーが蓄積されます。そして限界に達した岩盤が一瞬でズレて跳ね返ると、その衝撃が波となって地表を揺らす地震が起こります。これが海底で発生して海底面が大きく隆起・沈降すると、海水が一気に押し出されて津波が発生することもあります。日本やチリで地震や津波が多いのは、まさにこのためです。
もう少し詳しく言うと:ドミノ倒しのように一斉爆発するわけではない
少し正確に言うと、リング・オブ・ファイアは1本の紐のようにつながって同時に連動する仕掛けではありません。ニュージーランドを出発点に、日本、アラスカを経て南米アンデス山脈まで続く、全長約4万キロメートルに及ぶ馬蹄(U字)型の境界線です。
「火の環(リング)」という名前から、どこか1か所で地震や噴火が起きると、ドミノ倒しのように世界中で連鎖爆発が起こるのではないかと誤解されがちです。しかし実際には、無数に分かれたプレート境界エリアがそれぞれ固有のペースと周期でエネルギーを解放しています。遠く離れた火山同士は、基本的にそれぞれ独立して活動しています。
この地域の正式な学術名称は「環太平洋造山帯」または「環太平洋火山帯」です。「環」はぐるりと囲むこと、「造山帯」はプレートの衝突によって山脈や火山が活発に作られる地域を意味します。人間にとっては時に脅威となる災害エリアですが、地球の内部が今も熱く力強く生きている証拠でもあるのです。
よくある誤解
リング・オブ・ファイアは完全な円形であり、1か所で地震が起きるとドミノ倒しのように世界中で同時に爆発・連動する。
完全な円ではなく馬蹄形(U字型)の帯です。また、各区間のプレート境界には個別に力が蓄積され解放されるため、遠く離れた地域同士はほとんどの場合、それぞれ独立した周期で活動しています。
日常で出会う場面
日本やインドネシアで火山の噴火や地震のニュースが絶えないのは、両国がリング・オブ・ファイアのプレート境界の真上に位置しているためです。
1960年のチリ地震や2011年の東日本大震災といった超巨大地震も、すべてリング・オブ・ファイアを形成するプレート境界で発生しました。
つまり ひとことで
リング・オブ・ファイアとは、太平洋を取り囲むプレート同士がぶつかり合い、火山や地震を絶え間なく生み出している馬蹄形の巨大な境界線です。