定義
韓国の住宅賃貸借保護法などにもとづき、家が競売にかけられたときに、保証金の少ない借主が路頭に迷わないよう、銀行などの先に権利を持つ債権者よりも保証金の一部を優先して返してくれる制度です。全財産にも等しい最低限の保証金を守るための、社会的なセーフティネットです。なお韓国には、入居時にまとまった保証金を家主に預ける「チョンセ」や保証金付き月払い賃貸が広く普及しているため、こうした保護が特に重要になります。
家が競売にかけられても、列の先頭に並べます
銀行がお金を貸すとき、家を担保にして抵当権を設定します。家主が借金を返せずに家が裁判所の競売で売られると、本来は権利を備えた順番(登記日、確定日付など)に、落札代金を分け合います。先に根抵当権を設定した銀行が先順位となり、そのあとに確定日付を受けた借主は後順位になる、という具合です。
しかし、全財産である保証金をそっくり失って追い出される弱い立場の人を守るため、法律は特別なルールを設けました。保証金が法で定めた基準より少ない少額賃借人であれば、どれほど銀行が先に列に並んでいたとしても、保証金のうち一定額を事実上いちばん先に(競売費用などの一部を差し引いたうえで)受け取れるようにしています。労働者の最後の3か月分の賃金のような最優先の賃金債権とは、同じ順位です。いわば「合法的な割り込み」の権利を与えているわけです。
こうして先に確保されるお金を「最優先弁済金」と呼びます。全額が戻るわけではありませんが、よそへ引っ越して小さな部屋でも借り直せる、最低限の元手を守ることが目的です。
必ず押さえたい3つの必須条件
この強力な保護を受けるには、守るべき条件があります。1つめは、実際に引っ越しを済ませ、役所(住民センター)で転入届を出して対抗力を備えることです。この対抗力は、裁判所が競売開始を登記する前に、あらかじめ備えていなければ認められません。
2つめは、保証金の額が地域ごとの法定基準に収まっていることです。ソウル、首都圏の過密抑制圏域、広域市、それ以外の地域ごとに、少額保証金として認められる基準と、最優先で返してもらえる限度額がそれぞれ異なって定められています。
3つめは、原則として裁判所に「私の保証金を先に返してください」と申し立てる配当要求を、定められた期限までに行うことです(競売開始決定の登記前に賃借権登記を済ませている場合などは例外)。じっと待っていても裁判所が勝手に手続きしてくれるわけではないので、配当要求の最終日まで家を出ず、転入も維持しておいてはじめて、きちんとお金を受け取れます。
もう少し正確に言うと:基準日の落とし穴
多くの人は契約書を交わした日の法律が基準だと考えますが、現実は少し違います。自分が契約した日ではなく、もっとも早く設定された担保物権(根抵当権など)の設定日当時の法律を基準に、少額賃借人の範囲と最優先弁済金を計算します。担保権がなければ現在の基準に従い、後順位の担保権者にはその設定日を基準とした扱いが別に適用されることもあります。
たとえば2024年に契約した家でも、その家に2017年に銀行ローンの根抵当権が設定されていれば、2017年当時の基準額が適用されます。銀行が融資の際に見積もったリスクの範囲を、後から変わった法律で侵さないためです。このため、現在の基準なら少額賃借人に当たる場合でも、過去の基準にひっかかって保護を受けられないことがあります。
また、落札された家の代金全体から無制限にお金が支払われるわけではありません。住宅価格(落札価格)の2分の1の範囲内でのみ最優先弁済が行われるため、1棟に少額賃借人がとても多いと、法定額を満額受け取れず、分け合うことになる場合もあります。
よくある誤解
確定日付を受けていないと、最優先弁済は受けられない。
最優先弁済は、確定日付がなくても、競売の登記前に入居と転入届(対抗力)さえ済ませていれば受けられます。ただし、残りの保証金を返してもらう一般の優先弁済権には、確定日付が欠かせません。
自分が契約した日の法律基準で、最優先弁済金が決まる。
契約日ではなく、登記簿謄本にもっとも早く設定された先順位の担保物権(根抵当権など)の日付に施行されていた法令の基準に従います。
日常で出会う場面
保証金4,000万ウォン(約440万円)のワンルームに住んでいる最中に家が競売にかけられても、先にお金を貸した銀行より先に、法定の最優先弁済金を返してもらえるケースです。
家主の借金のために多世帯住宅の建物全体が競売にかけられたとき、少額賃借人たちが最低限の引っ越し費用を確保できる状況です。
つまり ひとことで
保証金の少ない借主が最低限の住まいの安定を守れるよう、競売の際に、銀行の担保ローンなどほかの債権より先に一定額を返してくれる制度です。