一般常識

賃借権登記命令(韓国の保証金保護制度)

行列に並んでいた場所に頑丈なテントを張っておけば、その場を離れても自分の順番がそのまま守られる、魔法の整理券です。

  • 約4分
  • 図 1点
  • 2026-10-16 検証

定義

賃借権登記命令は、韓国の制度で、チョンセ(保証金を預けて住む韓国特有の賃貸方式)や月払いの賃貸契約が終わったのに大家が保証金を返してくれないとき、裁判所の力を借りて不動産の登記簿(登記事項証明書)に借主の権利を公式に刻んでおく仕組みです。この記録のおかげで、別の家へ引っ越したり住民登録を移したりしても、他の債権者より先に保証金を返してもらえる権利(対抗力・優先弁済権)がそのまま維持されます。

場所を離れると、整理券を取り上げられます

遊園地で人気のアトラクションに乗ろうと長い行列に並んでいて、トイレのために列から出たらどうなるでしょう。残念ながら自分の順番はなくなり、また乗りたければ最後尾から並び直しです。

借主の保証金に対する権利も、この行列とそっくりです。借主が法的に保証金をしっかり守ってもらうには、実際にその家に住み(占有)、住民センターで転入届を済ませておく必要があります。法律ではこれを大家や第三者に対して自分の権利を主張できる力(対抗力)と呼びます。さらに契約書に確定日付までもらっておけば、他の債権者より先に保証金を返してもらえる優先弁済権も生まれます。

ところが、契約期間が終わったのに大家がお金を返してくれないからといって、むやみに別の家へ引っ越したり住民登録を移したりすると大変なことになります。自分が立っていた場所から足を離した瞬間、保証金を請求する権利そのものは残っても、法が認めていた保護の効力(対抗力・優先弁済権)は消えてしまうからです。

新居の残金を払わなければならなかったり、転勤で急いで荷物を出さなければならなかったりする借主にとっては、足を縛られたまま地団駄を踏むしかない困った状況に陥ります。

登記簿に打ち込む頑丈な鍵

まさにこうした理不尽な状況にある借主を助けるために作られた安全装置が、賃借権登記命令です。裁判所に申請書を出すと、裁判官が書類を審査したうえで、家の戸籍謄本ともいえる登記簿に、借主の保証金に対する権利を太字で記録してくれます。

これは、行列をいったん離れる間も、場所に頑丈なテントを張って公式の旗を立てておくようなものです。登記が完了すれば、遠くの町へ引っ越して転入届を新居に移しても、もともと持っていた優先弁済の順位がそのまま維持されます。

大家にとっても、非常に強い心理的プレッシャーになります。不動産の登記簿は誰でも取得できる公的な書類なので、「この大家は借主に保証金を返さなかった」というレッテルが世間に公開されるようなものだからです。

さらに、賃借権登記のあとに入居する少額賃借人は最優先弁済を受けられないため、登記簿に賃借権登記が載っていると、新しい借主を見つけるのがとても難しくなります。そのため、大家が先に保証金を用意して返そうと急ぐケースも多いのです。

もう少し正確にいうと:申請前に必ず守るべき原則

賃借権登記命令を使うとき、借主がいちばん犯しやすい致命的なミスがあります。裁判所に書類を出した途端にすべて終わったと思い込み、その日のうちに荷物を出して引っ越してしまうことです。

裁判所に書類を受け付けてもらっただけでは、保護の効果はまったく生じません。裁判所の決定が下り、登記所で実際に登記簿に権利が記載されたことを自分の目で確かめてから引っ越して、はじめて安全になります。

申請の要件もしっかり確認しておきましょう。契約期間の途中では申請できず、契約満了や合意解約で賃貸借が完全に終わった状態でなければ、裁判所は受け付けてくれません。大家の同意はまったく必要ありませんし、申請時にかかった印紙代や送達料などの裁判所費用も、あとで大家に請求して取り戻せます。

もし大家が連絡を避けていたり、引っ越し先の入居日が目前に迫っていたりするなら、契約満了の前に内容証明郵便などで契約を終了する意思をはっきり通知しておく事前準備が欠かせません。

よくある誤解

誤解

賃借権登記命令の申請書を裁判所に出しさえすれば、その日のうちに引っ越してもよい。

事実

申請書を出した時点ではなく、裁判所の決定を経て登記簿に実際に記載されたことを確認してから引っ越してはじめて、対抗力と優先弁済権が維持されます。

日常で出会う場面

  1. 契約満了日を過ぎたのに、大家が「次の借主が見つからない」と言ってチョンセの保証金を返してくれないとき、裁判所に申請します。

  2. 転職で急に別の地域へ転入届を出さなければならないのに保証金をまだ受け取れていないとき、登記をかけておいてから引っ越します。

つまり ひとことで

保証金を返してもらえないまま引っ越さなければならないとき、登記簿に自分の権利を公式に記録して、保証金を安全に守る制度です。

作成 2025-03-17 更新 2026-10-16 検証 2026-10-16