定義
車の死角とは、運転席に座ったときに、フロントガラスやルームミラー、サイドミラー(横のミラー)を通しても見えない、車のまわりの隠れた空間のことです。ミラーの映せる角度の限界や、車体のピラー(柱)といった構造物のせいで、どうしても生まれてしまう視界のすき間です。
ミラーが映せない隠れたすき間
左右についているサイドミラーは、車の側面と後ろの道路を映してくれますが、すべての角度をカバーできるわけではありません。平面鏡の映せる視野角は15度前後しかなく、より広く映せる凸面鏡にも広さの限界があるからです。隣の車線を走っていた車が自分の車のすぐ脇まで近づくと、サイドミラーの視界からすっと抜け落ちてしまいます。
さらに、車体の構造物も視界をさえぎります。屋根を支える前方の柱(Aピラー)や真ん中の柱(Bピラー)は、運転手の直接の視界をじゃまする障害物になります。とくに交差点や横断歩道で曲がるとき、太い前の柱の陰に歩行者がまるごと隠れてしまう、ヒヤリとする瞬間も起こります。
つまり、どんなにミラーをきれいに拭いてしっかり調整しても、ミラーの映せる角度と車体のピラーのせいで、車のまわりには見えない影がいつもできてしまうのです。
自分で首を回して確認する理由
死角による事故を防ぐ、いちばん基本的で確実な方法は、自分で首を回して窓の外を見る「ショルダーチェック(目視確認)」です。ウインカーを出してサイドミラーを見たあと、首を少し肩越しに回して、ミラーに映らない横の空間を1秒ほど視界の端で確認する動作のことです。
とくにバスや大型トラックのような大きな車は、死角が普通の乗用車とは比べものにならないほど広くなります。運転席が高いので、すぐ前の足元や助手席の横の下のほうは、ほとんど完全に見えないのです。大型車のまわりでは、乗用車が3、4台、あるいはバイクがまるごと視界から消えることもあります。
ですから、道路で大型車に出会ったときは、運転手の目やミラーと視線が合わない位置にとどまらず、すばやく車間距離をあけるのが安全です。
もう少し正確にいうと
最近の車には、ブラインドスポットモニター(BSD)や広角ミラー、アラウンドビューといった先進の補助装置がたくさん載っています。レーダーや超音波センサーが、見えない空間に別の車が入ってくると、警告音を鳴らしたり、ミラーに光を表示したりして知らせてくれます。
でも、先進技術があるからといって、死角が物理的に完全になくなったわけではありません。雨がひどいときやセンサーの表面に汚れがついたときは、物体を見逃すことがありますし、とても速く近づいてくるバイクや電動キックボードは、検知範囲から外れてしまうこともあります。
けっきょく、機械は運転を助ける補助道具にすぎません。安全運転を完成させる鍵は、機械を過信することではなく、運転手が視界の限界を知り、自分で注意を払う姿勢にあります。
よくある誤解
サイドミラーの角度を完璧に合わせれば、死角を完全になくせる。
ミラーの限られた視野角と車体のフレームのせいで、ミラーだけでは死角を100%なくすことはできません。首を回して確認するショルダーチェックが欠かせない理由です。
日常で出会う場面
車線を変えようとしてサイドミラーを見たときは何もなかったのに、ハンドルを切った瞬間、横からクラクションが鳴り響く場面です。
左折するとき、左側のフロントガラスの柱の陰に隠れていた歩行者が、横断歩道に突然現れるケースです。
つまり ひとことで
死角はミラーと車体にさえぎられて見えない危険ゾーンなので、ショルダーチェックと防衛運転で、そのすき間を確認する必要があります。