定義
カルトグラム(変形地図)とは、実際の土地の面積ではなく、人口や経済規模といった特定の統計データの大きさに合わせて、地域の面積や形を意図的に変形させて描いた地図のことです。
土地の広さと人の数はまったく別物です
世界地図を広げてみると、ロシアやカナダは途方もなく広く、日本などの国はずっと小さく見えます。しかし、「どれだけ多くの人が集まって暮らしているか」を基準に比べると、話はガラリと変わります。広大なシベリアには人がほとんど住んでいませんが、面積の狭い首都圏には膨大な数の人々が暮らしているからです。
一般的な地図はデータではなく、土地の形状や面積を基準に描かれます(投影法によって面積に多少の歪みは生じます)。そのため、地図を見たときに「土地が広い地域ほど統計的にも重要なのではないか」と誤解してしまいがちです。選挙の開票速報で、面積の広い地方の政党カラーが画面の大部分を覆い尽くし、まるで圧勝したかのように錯覚してしまうのもこれが原因です。
カルトグラムは、こうした視覚的な誤認を正すために生まれました。実際の境界線や面積にとらわれるのを思い切ってやめ、伝えたいデータの数値を地図の新しい面積として描き直したのです。
風船のように膨らませ、ブロックのように並べます
カルトグラムを作る代表的な2つの手法を見てみましょう。1つ目は、隣接する地域同士のつながりを保ったまま、境界線をゴム風船のように拡大・縮小する方法です。人口が多い中国やインドは巨大に膨らみ、土地は広いものの人口が少ないオーストラリアやカナダは見る影もなく小さくしぼんでしまいます。
2つ目は、各地域を同じ大きさの四角形や六角形のタイルに単純化するグリッド方式です。選挙報道などでよく見られる形で、選挙区や行政区域をすべて等しいサイズの1マスとして表現します。
この方式を使えば、実際の土地の広さにかかわらず、すべての選挙区を対等なサイズで表すことができます。そのため、どの政党がどれだけの議席を獲得したのかを一目で直感的に比較しやすくなります。ただし、人口規模が大きく異なる地域を同じ1マスで描くと、人口の少ない地域が過大に表現されて見えることもあります。このほかにも、地域の形を保ったまま隙間を空けて大きさを変えたり、円のサイズで置き換えて描いたりする手法もあります。
もう少し正確に言うと
カルトグラムは統計の傾向を一目で伝えてくれますが、万能な地図というわけではありません。データの大きさを劇的に見せられる反面、私たちが普段見慣れている地理的な形状や位置関係が大きく崩れてしまうからです。
国によっては歪みすぎて元の形が分からなくなったり、隣国との実際の距離感や方角が失われてしまったりします。海を隔てた島国などは、地図上でごく小さな点に縮小され、見つけることすら難しくなる場合もあります。
そのためカルトグラムは、道を探すためのナビゲーションではなく、統計的な格差を直感的に把握するための可視化ツールとして捉えるべきです。実際の地形を忠実に描いた通常の地図とカルトグラムを並べて見比べることで、数字の奥にある事実を最も正確に読み解くことができます。
よくある誤解
カルトグラムは、地理学者が土地の面積を計算し間違えて歪んでしまった不正確な地図である。
ミスではなく、人口やGDPなどの統計データの実態を一目で把握できるように、意図的に土地の面積を伸縮させて作った科学的な可視化地図です。
日常で出会う場面
米大統領選の開票速報で、州ごとの面積ではなく獲得選挙人団の数に比例するように六角形のタイルで並べた選挙地図。
世界の国境線を各国の国内総生産(GDP)の大きさに合わせて伸縮させ、各国の経済的な存在感を一目で比較できるようにした世界経済地図。
つまり ひとことで
実際の土地面積ではなく、人口や経済規模といった統計データの数値に合わせて地域の大きさを変形して描いた統計地図です。