定義
導線を何回も巻いたかたまりに電流を流すと、そのまわりに鉄を引きつける力が生まれます。こうして電気の力で作り出した磁石を電磁石と呼びます。スイッチを入れると磁石になり、切ると力はおさまっていきます。流す電流を大きくしたり、導線をもっとたくさん巻いたりすると、力もそのぶん強くなります。
鉄くぎに導線を巻くと、クリップがくっつく
理科の時間に、鉄くぎに導線をぐるぐる巻いたことはありませんか。導線の両端を乾電池につないだ瞬間、くぎの先にクリップがわっとくっつきます。ところが導線の片方をはずすと、クリップはすぐにぱらぱらと落ちてしまいます。
導線に電流が流れると、そのまわりに目に見えない力の領域ができます。これを磁場と呼びます。磁場の中に入った鉄は、磁石にくっつくときのように引き寄せられます。
導線1本がつくる磁場はとても弱いものです。だから導線をくぎに何回も巻きます。1周ぶんの弱い力が、巻いた回数ぶんだけ重なって、使える強さになるのです。こうして細かく巻いた導線のかたまりをコイルと呼びます。
ここで覚えておきたいのは、電気が流れている間だけ磁石になるということです。乾電池をはずすと電流が途切れ、引きつけていた力もいっしょにおさまります。
解体工場のクレーンがスクラップを持ち上げて落とす仕組み
くぎに導線を巻いたあの実験をそのまま大きくすると、解体工場のクレーンになります。クレーンの先には、太い導線や金属の帯をとてもたくさん巻いてつくった大きな円盤がついています。スイッチを入れると、自動車が1台まるごと持ち上がります。
力を強くする方法は3つあります。導線をもっとたくさん巻く、もっと大きな電流を流す、コイルの中に鉄の棒を入れる、の3つです。実験でくぎが果たしていた役目が、まさにこの鉄の棒です。
コイルの中に入れる鉄の棒を鉄心と呼びます。鉄心の中の鉄の粒がコイルの磁場にそって同じ向きに並び、磁場を数百倍にふくらませてくれます。くぎを抜いて導線のかたまりだけにするとクリップがうまくくっつかないのは、このためです。
クレーンの運転手がスクラップを下ろすときは、ロープをほどく代わりにスイッチを切るだけです。電流が途切れた瞬間、並んでいた粒がばらばらになり、スクラップの山はそのまま落ちます。
もう少し正確にいうと
実験で乾電池をはずすとクリップは落ちますが、そのくぎを方位磁針のそばに近づけると、針が少し動くことがあります。並んでいた鉄の粒のうち一部が、もとの位置にもどりきれずに残っているからです。こうして残った弱い磁気を残留磁気と呼びます。
そのため、電磁石の力はスイッチを切ったあとも完全にゼロにはなりません。クレーン用の鉄心は、磁気が残りにくい軟らかい鉄でつくって、この問題を小さくしています。冷蔵庫に貼る磁石のように、力がいつも残っているものは、別に永久磁石と呼んで区別します。
もうひとつ、電磁石はスイッチを入れている間ずっと電気を使います。コイルに電流が流れると導線が温まるので、大きな電磁石は冷やしてやる必要があります。クレーンがスクラップを長く吊るさず、すぐに運んで下ろすのには、こうした理由もあります。
よくある誤解
電磁石は金属ならなんでも引きつける。
引き寄せられるのは、鉄やニッケルのように磁石によくくっつく金属です。アルミ缶や銅線は、電磁石のすぐ下に置いてもくっつきません。
コイルの中の鉄の棒そのものが磁石だから、電気がなくてもクリップがくっつく。
鉄の棒は、ふだんは磁石ではありません。コイルに電流が流れている間だけ強い磁石になり、電流を切るとごく弱い磁気しか残りません。
日常で出会う場面
イヤホンから音が出るのは、薄い膜についた小さなコイルが電磁石になり、そばにある永久磁石と押し合ったり引き合ったりして、膜をふるわせるからです。
解体工場のクレーンが、スイッチひとつでスクラップの山を持ち上げ、そのまま落とします。
つまり ひとことで
導線を巻いて電気を流している間だけ磁石になる装置なので、スイッチひとつで引きつける力を入れたり切ったりできます。