定義
磁気浮上式鉄道は、電気でつくった磁石の力を使って車体を線路の上に浮かせ、車輪とレールの間の摩擦なしに、磁力の力で前へ進んでいく最先端の列車です。
磁石でどうやって重い列車を浮かせるの?
子どものころ、磁石を2つ、同じ極どうしで近づけたとき、指先から弾き飛ばされそうなほど強く押し返される力を感じたことがあるでしょう。磁気浮上式鉄道は、この目に見えない磁石の力を使って、数十トンもある大きな車体を空中にふわりと浮かせる列車です。
列車を浮かせる原理は、大きく2つに分かれます。ひとつは、車両の下側についた電磁石がレールを下から引き寄せて車体を持ち上げつつ、くっつかないよう隙間を常に調整する吸引式。もうひとつは、列車とレールの磁石の極を同じに合わせて強く反発させる反発式です。ここでいう電磁石とは、電気が流れているときだけ磁石になる装置のことです。
吸引式は止まっているときでもレールの上に1センチほど浮いています。反発式は速度が出ないと力が生まれないので、低速ではゴムの車輪で走り、一定の速度(日本の超電導方式は時速約150キロ)を超えると10センチほど浮き上がります。いったん浮いてしまえば、車体が地面に触れないので、ふつうの列車特有のガタガタという揺れや、金属がこすれる騒音がほとんどありません。何より、物が前に進むのをじゃまする車輪とレールの間の摩擦力が完全になくなるという、決定的な利点が生まれます。
車輪がないのに、どうして前へ進めるの?
車輪を回せないなら、宙に浮いた列車はいったいどうやって前に進むのでしょうか。秘密は、線路と車両の側面にぎっしり並んだ電磁石が、1秒間に何十回もすばやく極を切り替える技術にあります。
列車のすぐ前にある線路の磁石は、列車の磁石とは違う極に切り替わって、前から列車をぐいっと引き寄せます。同時に、列車がちょうど通り過ぎた後ろ側の線路の磁石は、列車と同じ極に切り替わって、後ろから背中をぐっと押します。こうして引く力と押す力が、息ぴったりに同時に働きます。
この磁石の極を、野球場の観客のウェーブのように前方へ素早く移していくと、列車は磁石の波に乗るように前へ吸い込まれていきます。車輪で地面を蹴って走るのではなく、線路全体を長く引きのばした巨大なモーターとして使い、磁力の波に乗って滑っていく仕組みです。
もう少し正確にいうと
車輪の摩擦がなくなったからといって、列車がどこまでも速度を上げられるわけではありません。レールとの摩擦はなくせても、列車が速くなるほど、向かい風を切って進まなければならない空気との摩擦抵抗が急激に大きくなるからです。
また、とても強い力で列車を高く浮かせて速く走らせるために、超電導技術が使われることもあります。超電導体とは、極低温で電気抵抗が完全になくなる特別な物質です。抵抗がなければ非常に強い電流を流して強力な磁場をつくれるので、実際に時速600キロを超える超高速走行の記録も打ち立てています。
磁気浮上式鉄道は、部品の摩耗や脱線の危険が少なく、とても静かですが、線路全体に精密な電磁石のコイルを敷かなければならないので、建設費がかさみます。そのため、都市の中を静かに結ぶ中低速の路線と、都市と都市を超高速で結ぶ長距離の路線に分かれて研究されています。
よくある誤解
磁気浮上式鉄道は完全に宙に浮いて走るので、摩擦も抵抗もまったく受けない。
レールと車輪の間の物理的な摩擦はありませんが、空気を切り裂いて走るときに生じる空気抵抗は、速度が上がるほど強くなります。そのため、高速の磁気浮上式鉄道ほど、飛行機のようになめらかな流線形のデザインが欠かせません。
日常で出会う場面
上海の浦東国際空港から市内方面まで、約30キロを8分あまりで走る営業用の磁気浮上式鉄道があります。
日本では、超電導磁石の技術を使った試験走行で、時速603キロという世界最高速度の記録を達成しました。
つまり ひとことで
磁石の押す力と引く力で車体を宙に浮かせ、車輪の摩擦なしに走る未来型の列車です。