定義
氷の上を滑るソリのように、特定の物質の温度をごく低温まで下げたときに、電気の流れを妨げる「電気抵抗」が完全にゼロになる驚くべき現象です。抵抗が消えることで熱も発生せず、磁石を宙にふわふわと浮かせる不思議な性質も現れます。
電気の高速道路から、すべての障害物が消え去る瞬間
電線の中を電気が流れるとき、電子は導線の中の原子と絶えず衝突します。この衝突を「電気抵抗(電気の流れを妨げる力)」と呼び、その際の摩擦によって熱が発生し、貴重なエネルギーが大気中へ無駄に逃げてしまいます。スマートフォンを長時間使っていると熱くなったり、送電線を通るうちに電力が減ってしまったりするのも、まさにこの抵抗が原因です。
ところが、特定の金属や化合物を物質に応じてマイナス270度近く、日常的な圧力(常圧)では最も高いものでもマイナス130度以下という極めて冷たい温度まで冷却すると、驚くべきことが起こります。非常に高い超高圧の下ではマイナス20度台で超伝導になる物質も報告されています。物質の内部にある原子がおとなしくなり、電子が衝突することなく、なめらかにペアを組んで滑るようにすり抜け始めるのです。その結果、電気抵抗が完全にゼロになります。
抵抗がゼロになれば、一度電気を流すだけでエネルギーをまったく失うことなく、永遠に循環させることができます。直流電流であれば、物質ごとに決まっている限界(臨界電流)までは強く流しても熱がほとんど発生しないため、膨大な電気エネルギーを損失を大幅に抑えて蓄えたり送ったりする夢の技術が可能になります(交流ではわずかな損失が生じ、冷却にもエネルギーが必要です)。ただし、この限界を超えると超伝導状態が崩れ、抵抗が再び現れてしまいます。
磁石の上にフワリと浮き上がる魔法、マイスナー効果
超伝導現象が起きると、電気抵抗が消えるだけではありません。超伝導状態になった瞬間、すでに物質の内部に入り込んでいた磁場(磁石の力が及ぶ空間)まで外側へ押し出すマイスナー効果が同時に現れます。ただし、多くの超伝導体では磁場の一部が細い束のような形で内部に入り込んで捕らえられることもあります。
超伝導体の上に磁石を置くと、超伝導体が磁石の磁場を押し返す反発力によって、磁石が宙にふわりと浮かび上がります。それどころか、超伝導体の下側に磁石を置いても磁石は落ちず、空中にぶら下がったまま固定されます。このように上下どちらの位置でも固定されるのは、押し返す力だけでなく、磁力線の一部が超伝導体の内部に捕らわれてしまうピン止め効果(磁束ピンニング)のおかげです。こうした現象を総称して「磁気浮上」と呼びます。
一方、超伝導体は抵抗なしに大きな電流を流し続けられるため、非常に強力な電磁石(超伝導磁石)を作ることができます。そのため、病院で体内を精密に検査するMRI(磁気共鳴画像法)装置や、一部のリニアモーターカーのように、強力な磁石を必要とする先端分野で不可欠なキーパーツとして活躍しています。
もう少し詳しく:極低温の壁を打ち破ろうとする科学者たちの挑戦
もう少し正確に言うと、超伝導現象は単に原子の振動が小さくなったから起きるわけではありません。極低温において2個の電子が引き合って「クーパー対」と呼ばれる特別なペアを作り、これらが1つの巨大な波のようにまとまって動くため、障害物にぶつからなくなるという量子力学的な現象なのです。
しかし、これまでに発見されたほとんどの超伝導体は、液体ヘリウムや液体窒素で冷たく冷やさなければ作動しない臨界温度(超伝導現象が現れる限界の温度)が低すぎるという致命的な弱点があります。この冷却設備を維持するには、莫大な費用と高度な精密技術が必要になります。
そのため、世界中の物理学者たちは、大がかりな冷却装置を使わずに日常生活の温度や圧力でも機能する「室温・常圧超伝導体」を見つけ出そうと、絶え間ない研究を続けています。もし室温超伝導が実用化されれば、エネルギー損失のない送電網や、より小型で安価な超伝導磁石など、さまざまな分野に劇的な変革をもたらすと期待されています。
よくある誤解
超伝導体は、電気が非常によく通る「抵抗が極めて低い導体」にすぎない。
抵抗が単に非常に小さいのではなく、完全に「ゼロ」です。また、磁場を押し出す「マイスナー効果」を併せ持って初めて、真の超伝導体として認められます。
日常で出会う場面
病院で脳や脊髄、関節などを精密に検査するMRI装置には、強力な超伝導電磁石が使われています。
日本で開発が進められている超電導リニア(リニア中央新幹線)は、試験走行で時速600kmを超えた実績があります。なお、現在世界で営業運転している磁気浮上式鉄道の多くは通常の電磁石を使用しています。
つまり ひとことで
物質を極低温まで冷やしたときに電気抵抗が完全にゼロになり、磁場を退けて磁石を宙に浮かせる現象です。