定義
雇用率(就業率)とは、働くことができる年齢(満15歳以上)に達した人々のうち、実際に仕事に就いて働いている人が何パーセントかをあらわす経済指標です。失業率が見落としがちな死角を補い、国全体の雇用の活力を映し出す鏡のような数字です。
失業率の罠を避ける、本当の出席簿
サッカースタジアムに集まった100人の観客からサッカー選手を選ぶ場面を思い浮かべてみてください。サッカーがしたくて手を挙げた10人のうち1人が選ばれなかった場合、失業率は10%になります。しかし、もし選ばれなかった1人が諦めて手を下ろしてしまったらどうなるでしょうか?手を挙げている人は9人で9人全員が採用されたことになるため、失業率は手品のように0%へと急落します。実際の雇用は1つも増えていないにもかかわらずです。このとき雇用率は、最初も後も9/100=9%のままで変動しません。
このように失業率は「働いている人、または仕事を探している人」だけを分母にするため、就職を諦めた人や試験の準備をしている人が増えると、かえって数値が良く見える錯覚が生まれます。仕事が見つからない人が統計の外へと隠れてしまうわけです。
雇用率は、まさにこの抜け穴をすっきりと埋めてくれます。手を挙げたかどうかに関係なく、スタジアムにいる全体の人に対する働く人の割合を直接計算するからです。そのため、隠れた就職準備生や求職を諦めた人を取りこぼすことなく、労働市場の実態をより正確に捉えることができます。
もう少し正確に見てみると
韓国の国家データ処(旧統計庁)をはじめとする統計機関が代表的な雇用率を算出する際は、基準となる分母を満15歳以上の人口全体に設定します。ここには会社などに勤める人だけでなく、学生、専業主婦、就職準備生、定年退職者まで全員が含まれます。
一方で、私たちがニュースでよく目にする失業率は分母が異なります。実際に働いている就業者と、過去4週間に積極的に求職活動を行った失業者を合わせた「労働力人口」のみを対象とします。仕事探しを一時的にやめた人は、統計上は失業者ではなく「非労働力人口」として除外されてしまいます。
したがって、不況で就職活動を諦める若者が増えると失業率は下がる場合がありますが、雇用率は失業率のように改善することはありません。結局のところ、経済の基礎体力を正しく見極めるには、失業率単独ではなく雇用率の推移を合わせて確認する必要があります。ただし、雇用率も万能ではありません。調査期間中に収入を伴う仕事を1時間以上するだけで就業者として数えられるため、労働時間や雇用の質までは反映されず、高齢化などの人口構成の変化だけでも数値が上下することがあります。
雇用率が高まるほど経済は強くなる
雇用率は、一国の税収や社会保障、そして成長エンジンを支える最も頼もしい土台です。働く人が増えるほど国に税金を納める人々が増加し、自ら稼いだお金で買い物を楽しむ家計が豊かになります。
特に少子高齢化が急速に進む社会では、雇用率がより決定的な役割を果たします。働くことができる現役世代の人口そのものが減少するため、女性や退職したシニア層が職場に残れるよう雇用のハードルを下げることが国の将来を大きく左右するからです。
世界の国々と経済状況を比較する際にも、雇用率は不可欠な基準となります。国内で一般的に使われる代表指標は15歳以上人口全体を分母としますが、経済協力開発機構(OECD)などの国際機関は、国ごとの人口構成の違いによる影響を抑えて公平に比較するため、主に15歳から64歳までを分母とした雇用率を用います。そのため各国でも、この国際比較用の雇用率を別途算出・公表しています。
よくある誤解
失業率が下がったのなら、雇用が増えて雇用率も必ず上がっているはずだ。
就職難があまりに深刻で職探しそのものを諦めた人が増えると、実際の仕事が増えていなくても失業率は下がることがあります。そのため、雇用率も合わせて確認して初めて本当の雇用情勢が見えてきます。
日常で出会う場面
求職活動をいったん休み、図書館で公務員試験や資格試験の勉強に専念している人は、失業率の計算からは除外されますが、雇用率では「未就業」として正確に反映されます。
子育てで仕事を離れていた人がパートタイムなどの仕事を見つけて再び働き始めると、15歳以上人口のうち就業者が増えるため雇用率が上昇します。
つまり ひとことで
働くことができる人口全体のうち実際に働いている人の割合で、失業率よりも統計の錯覚が少ない指標です。ただし労働時間や雇用の質までは把握できません。