期待値

不確実なゲームを何千回、何万回と繰り返したときに、平均して手元に残る成績表の基準点です。

定義 期待値(Expected Value)とは、ある出来事で得られるすべての値にそれぞれの発生確率を掛け合わせ、合計した平均値のことです。先の結果が読めないときでも、「何度も繰り返せば平均してこれくらい得られるだろう」という合理的な判断基準を与えてくれます。

コイントス勝負でいくら稼げるでしょうか?

表が出たら1,000円がもらえて裏が出たら0円になるコイントスゲームを想像してみてください。コインの表と裏が出る確率はそれぞれ2分の1(50%)です。このゲームをたった1回だけ行うなら、手に入るのは1,000円か0円のどちらかです。中間の500円をもらえることは絶対にありません。

しかし、このゲームを100回、1,000回と何度も繰り返すとどうなるでしょうか? およそ半分は表が出て1,000円を獲得し、残りの半分は裏が出て0円になります。得た合計金額をゲームの回数で割ると、1回あたり平均して500円を手に入れる計算になります。

この計算で出た500円こそが、このゲームの期待値です。起こりうる各結果にその確率を掛けて足し合わせることで求められます。つまり、起こる確率を重みとして計算した平均値なのです。

コイン投げゲームの期待値を示すシーソー図 確率½(50%) +1千円 確率½(50%) 0円 期待値=500円

もう少し詳しく:宝くじと保険の秘密

1枚300円で買った宝くじの期待値が、もし150円だとしたらどうでしょうか? たった1回買って当せんすれば何億円も手に入るかもしれませんが、長期的に買い続けるほど1枚あたり150円ずつ損をしていくことを意味します。カジノのギャンブルもすべて、参加者の期待値が参加料を下回るように設計されています。

一方で、保険は期待値だけで見れば加入者にとって損になるのが普通です。事故や病気が起きる確率は非常に低いため、支払う保険料に対して戻ってくるお金の期待値は少なくなります。それでも人々が保険に入るのは、自分では背負いきれない致命的な損害を防ぐため、期待値の損を受け入れて安心(安定性)を買っているからです。

つまり期待値とは、単に未来を予言する数字ではありません。不確実な状況において、どの選択が長期的に有利か不利かを判断するための最も客観的な羅針盤となる統計的基準なのです。

大数の法則と出会う瞬間

たった1回の勝負では、期待値とまったく同じ結果が出ることはまずありません。サイコロを1回振ったときに出る目の期待値は3.5ですが、サイコロに「3.5」という目はありませんよね。期待値とは「次に出る値」ではなく、「無限に繰り返したときの平均」を表しているからです。

それでも期待値が強力な道具となる理由は、試行回数が増えるほど実際の平均値が期待値へと限りなく近づいていくからです。これを数学では大数の法則(たいすうのほうそく)と呼びます。カジノや保険会社が事業として成り立っているのも、まさにこの法則があるおかげです。

日常で大小さまざまな選択をするときにも、期待値を思い浮かべると役立ちます。ある行動で得られる価値と失うリスクにそれぞれの確率を掛けて比較してみるのです。感情に流されず期待値を基準にすることで、より合理的で賢い判断ができるようになります。

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

期待値とは、次回の1回で実際に出ると期待される値のことだ。

✓ 事実

期待値はたった1回の試行で出る値ではありません。サイコロの目の期待値が3.5でも実際には3.5の目が出ないように、「何回も繰り返したときに近づいていく平均値」を意味します。

🧺 日常で出会う場面

1 1等の当せん金がいくら高額でも当せん確率が極めて低ければ、宝くじ1枚の期待値は購入金額を大幅に下回ります。
2 サイコロの1から6までの目が出る確率はどれも6分の1なので、出る目の期待値は (1+2+3+4+5+6)÷6 = 3.5 になります。
💡 つまり ひとことで

ある出来事が起こる確率と結果の数値を掛け合わせて合計した値で、無数の試行を繰り返す中で得られる平均的な基準点のことです。