定義
調和平均とは、値をまず逆数(1をその値で割った数)に直して算術平均を求め、その結果をもう一度ひっくり返して得る平均のことです。同じ距離を違う速さで移動したときの平均速度のように、分母に時間が入る比率を、同じ量を基準にして平均するときによく使います。
往復の速度に潜むワナ
距離60kmの目的地まで、車で往復旅行に出かけるところを想像してください。行きは時速20kmでのんびり進み、帰りは時速60kmで気持ちよく飛ばしました。2つの速度を単純に足して2で割ると、平均時速は40kmに見えます。ところが実際にかかった時間をきちんと計算すると、まったく違う結果になります。
行きは3時間(60km÷20km/h)かかり、帰りはたったの1時間(60km÷60km/h)でした。往復120kmを走るのに、合計4時間かかったわけです。全体の移動距離を全体の所要時間で割ると、本当の平均速度は時速30kmになります。
単純な平均より遅くなる理由は簡単です。遅い速度で走った時間(3時間)のほうが、速い速度で走った時間(1時間)よりずっと長かったからです。このように、同じ距離を違う速さで移動したときの本当の平均を見つける道具が、調和平均です。
逆数をひっくり返して計算する仕組み
調和平均の求め方はちょっと変わっていますが、とても筋が通っています。まず、与えられた値をすべて逆数(分子と分母を入れ替えた数)に直します。時速20kmは20分の1に、時速60kmは60分の1に、という具合です。こうしてひっくり返すと、「1時間で進む距離(速度)」が「1kmを進むのにかかる時間」に変わります。
次に、これらの逆数の足し算の平均(算術平均)を求めます。20分の1と60分の1を足して2で割ると、30分の1になります。これは、1kmを進むのに平均で30分の1時間かかるという意味です。
最後に、得られた結果をもう一度ひっくり返して、元の単位に戻します。30分の1をひっくり返すと、ちょうど時速30kmになります。調和平均には、速度を時間に変えて平均を取り、また速度に戻すという仕組みが込められています。
もう少し正確に言うと
調和平均は、速度だけでなく、仕事の効率や資源配分の問題でも広く使われます。たとえば、部屋の掃除を一人でやるとき、太郎さんは2時間、花子さんは6時間かかるとします。このとき2人の作業時間の調和平均は3時間です。これは、2人が部屋を掃除するときの一人あたりの平均作業時間が3時間という意味で、2人で力を合わせればこの3時間を2人で割って、1.5時間で掃除が終わります。
もう少し正確に言うと、調和平均は正の数に対して、いつも算術平均や幾何平均以下になります。極端に小さい値が1つでも混ざっていると、全体の平均を強く引き下げる性質があるからです。
この特徴のおかげで、現代のAI(人工知能)モデルの性能を評価するときにも広く使われています。適合率と再現率のように、両方とも高くないと意味がない指標を1つにまとめて、バランスの取れた性能指標(F1スコア)を作るために調和平均を使います。
よくある誤解
速度の平均は、いつでも2つの速度を足して2で割ればよい。
同じ距離を違う速度で移動するときは、かかる時間がそれぞれ違うため、単純な算術平均ではなく調和平均を使う必要があります。
日常で出会う場面
同じ距離を行きは時速20km、帰りは時速60kmで走った車の、往復の平均速度の計算
一人で2時間かかる人と6時間かかる人の平均的な作業効率を求めて、一緒に働くときの時間を計算する
つまり ひとことで
調和平均は、同じ距離を違う速さで進むときのように、比率で表される値を扱うときに、逆数を使って求める平均です。