定義
幾何平均(相乗平均)とは、いくつかの正の数をすべて掛け合わせたあと、その個数分の累乗根(ルート)をとって求める平均値のことです。単に足して割る相加平均(算術平均)とは異なり、何倍に増えたかという「比率」や「成長率」を計算するときに、現実の姿を正確に映し出してくれます。
なぜ「足して割る」ではダメなのでしょうか?
自分の投資資金が1年目に2倍(+100%)になり、翌年に半分(-50%)に減ってしまった状況を想像してみてください。100万円が200万円になり、再び100万円に戻った状態です。実際には元本のままで1円も増えていませんが、日常でよく使う「足して割る」相加平均(算術平均)で計算すると、おかしなことが起こります。(+100% - 50%)を2で割ると、なんと「毎年平均+25%ずつ儲かった」ことになってしまうのです。
足し算ベースの平均は、数値が順番に足し合わされていく状況でしか正しく機能しません。しかし、資産の増減や人口増加のように、前の結果に掛け合わされて増減していく「掛け算の世界」では、深刻な錯覚を生み出します。そこで必要になるのが、掛け算を基準に計算する幾何平均です。
成長率に使うときは、+100%なら2倍、-50%なら0.5倍のように、まず倍率(1+成長率)に直してから幾何平均を求め、最後に1を引いて割合に戻します。幾何平均で計算すると、2倍(2)と半分(0.5)を掛けて1になり、2年間の変化なので平方根(ルート)をとります。√1は1なので、ここから1を引けば「年平均の成長率は正確に0%」という真実がはっきりと見えてきます。
図形で直感的に理解する幾何平均の仕組み
「幾何」という言葉は、図形や空間を研究する幾何学(Geometry)に由来しています。横が2cm、縦が8cmの細長い長方形を思い浮かべてみてください。この長方形の面積は、2辺を掛け合わせた16平方センチメートルになります。
では、この長方形と同じ面積を持つ「正方形」を作るとしたら、一辺の長さは何cmにすればよいでしょうか? 面積が16になる正方形の一辺は4cmです。この「4cm」こそが、まさに2と8の幾何平均なのです。
つまり幾何平均とは、長さの異なる辺を掛け合わせてできた面積を、同じ面積を持つ正方形の一辺の長さへと均等にならす作業だといえます。3次元の立体であれば、縦・横・高さを掛けて体積を求めたあと、3乗根(立方根)をとって同じ体積を持つ立方体の一辺の長さを求める仕組みです。
もう少し掘り下げると
数学には用途に応じてさまざまな平均が存在します。日常でよく使う足して割る計算は「相加平均(算術平均)」であり、移動速度や作業効率の平均を測るときには「調和平均」を使います。すべての数値が正の数である場合、これら3つの平均の間には常に成り立つ特別な関係があります。
同じデータで計算すると、常に相加平均 ≧ 幾何平均 ≧ 調和平均という関係が成り立ちます。比較するすべての数値が完全に同一である場合に限り、3つの平均値が一致します。
そのため、投資利回りや物価上昇率のように複利で動くデータを見るときには注意が必要です。相加平均を使うと、実際の成長度合いよりも数値が大きく膨らんで見えがちだからです。連続する比率の変化を扱うときは、幾何平均で検証してこそ現実をありのままに見極めることができます。
よくある誤解
平均を求めるときは、どんなデータでも全部足してデータの個数で割ればよい。
足して割る相加平均は、足し算で積み上がるデータにしか適していません。利回りや人口増加率、倍率のように掛け算で累積していくデータは、まず倍率(1+成長率)に変換してから幾何平均を使わなければ正確な実態がわかりません。
日常で出会う場面
株価が1年目に2倍になり、翌年に半分になったときの実際の年平均リターン(0%)を求めるときに使います。
縦2m、横8mの土地と同じ面積を持つ、正方形の土地の一辺の長さ(4m)を算出するときに使われます。
つまり ひとことで
幾何平均は、掛け算や倍率によって変化するデータを歪みなく正確に表すための平均計算手法です。