固定相場制
商品の値札をテープでしっかり固定するように、他国の通貨と交換する比率を国がカチッと固定しておく約束のことです。
定義 テーマパークの専用コインを買うときにいつでも「1枚=100円」と決まっているように、政府や中央銀行が自国通貨と特定の外国通貨(主に米ドル)との交換比率を一定に固定し、変動しないよう維持する制度です。為替レートが市場の需要と供給によって大きく揺れ動かないよう、政府が直接市場に介入して決めた値に固定する仕組みです。
値札をテープで固定した為替レート
毎日為替レートが激しく上下すると、海外と取引する人たちは常に不安を抱えることになります。今日1ドル=100円だったものが明日いきなり150円になってしまえば、海外から原材料を輸入している工場は一晩で莫大な損失を被ってしまいます。
固定相場制は、こうした混乱を防ぐために国が為替レートを特定の数値にしっかりと固定する制度です。政府が「これから1ドルは必ず自国通貨〇〇円(単位)と交換する」と宣言し、その約束を徹底して守るのです。
為替レートがブレずにピタッと止まっていれば、貿易を行う企業や海外に投資する人たちは将来のコストを正確に計算できます。まるで定価販売のお店で値札を信じて買い物をするように、国と国との取引がはるかに安定し、予測しやすくなります。
為替レートを守るために払うべき代償
しかし市場では、買いたい人が増えればモノの値段が上がり、売りたい人が増えれば下がるのが自然なルールです。外国為替市場でも、ドルを欲しがる人が増えればドルの価値はおのずと跳ね上がろうとします。
このとき政府は、約束した固定レートを守るために自ら市場に飛び込まなければなりません。ドルを買いたい人が殺到してドルの価値が上がりそうになったら、政府は金庫に蓄えておいたドルを市場に売却して値上がりを防ぎます。反対にドルが余っていれば、自国通貨を出してドルを買い支えます。
そのため、固定相場制を何事もなく維持するには非常時にいつでも使える「外貨準備高」を常にたっぷり持っていなければなりません。もし海外の投資家が一斉にお金を引き揚げようとしたときに政府の金庫からドルが底をついてしまえば、レートの防衛に失敗し、深刻な経済危機に陥ることになります。
もう少し詳しく:何かを得れば、何かを失う
経済学には、国は3つの目標をすべて同時に達成することはできないという「国際金融のトリレンマ(不可能の三角定理)」という原則があります。「自由な資本移動」「独自の金融政策(自国の景気に合わせた金利調整)」「為替相場の安定(固定相場制)」という3つの選択肢のうち、同時に選べるのは2つだけという意味です。
国境を越えるお金の出入りを自由にしたまま固定相場制を選ぶと、政府は自国の経済状況に合わせて金利を自由に上げ下げする権利を実質的に諦めなければなりません。たとえば、アメリカがインフレを抑えるために金利を大幅に引き上げたとき、自国の景気悪化を心配して金利を据え置いたらどうなるでしょうか?
より高い利息を求めて国内の資金がアメリカへ引き潮のように流出してしまい、固定していた為替レートが崩壊の危機に瀕します。結局、固定レートを守るためには、国内景気が厳しくてもアメリカに合わせて金利を上げるしかありません。為替の安定を手に入れる代わりに、独自の金融政策の自由を犠牲にしているわけです。
🤔 よくある誤解
固定相場制を導入していれば、レートを保つために政府は何もしなくてよい。
為替レートを一定の値に保ち続けるには、中央銀行が市場のドルを絶えず買い入れたり売却したりして介入し続けなければなりません。何もしなければ、市場の需要と供給の力でレートは自然に揺れ動いてしまうからです。
🧺 日常で出会う場面
固定相場制は為替変動の不安をなくしてくれる一方で、莫大な外貨準備高の維持や、自国の景気に合わせた独自の金利調整権を犠牲にする制度です。