科学

大赤斑

浴槽いっぱいの水の栓を抜いたときにできる渦が、地球より大きなサイズで200年近く休まず回り続けている姿です。

  • 約3分
  • 図 2点
  • 2026-10-17 検証

定義

大赤斑は、木星の南半球の大気で200年近く渦を巻き続けている、巨大な赤い高気圧性の嵐です。地球より大きく、しっかりした地面のない木星の環境と強力なジェット気流のおかげで、長いあいだ消えずに形を保っています。

木星の表面に刻まれた巨大な赤い目

浴槽いっぱいの水の栓を抜くときにできる、勢いのある渦を思い浮かべてください。木星の表面には、そんな渦が惑星サイズの大きさで広がっています。望遠鏡で木星を眺めたとき、南半球のあたりにくっきりと見える大きな赤い点。それが大赤斑です。

この渦は想像を超える大きさです。全盛期には地球が3つ並んで入るほどで、小さくなった今でも、地球が丸ごとすっぽり入ってまだ余るほどの広さがあります。渦の縁では、時速400〜600キロメートルに達する猛烈な嵐の風が休みなく吹き荒れています。

地球で起こる最強クラスの台風でさえ、数日から数週間たてば力を失って散っていきます。ところが大赤斑は、今の姿が記録され始めた1830年代ごろから200年近く一度も止まることなく回り続けています。17世紀に観測された木星の赤い点が今の大赤斑と同じものかどうかについては、研究者のあいだで意見が分かれています。

なぜ200年近くも消えないのでしょう?

地球の台風は、海から膨大な水蒸気のエネルギーをもらって育ちますが、陸地にかかると急に弱まります。エネルギー源である海からの水蒸気の補給が途絶え、でこぼこした地表との摩擦が回転のエネルギーを奪っていくからです。

ところが木星は、表面に立てる地面のないガス惑星です。渦の底で摩擦を起こして回転を止めてしまう大陸や岩のような障害物が、そもそもありません。渦が底に引っかかって倒れることがないので、エネルギーが保たれるのです。

さらに木星には、縞模様に沿って互いに逆向きに速く流れる大気の流れ(ジェット気流)があります。大赤斑の上側と下側を通るこの流れが、両手のひらでコマをこすって回すように渦を両側から押し、回転のエネルギーを絶えず送り込んでくれます。

もう少し正確に言うと

もう少し正確に言うと、大赤斑は空気が中心に集まる低気圧ではなく、周囲より気圧の高い高気圧性の渦です。中心部で上昇した空気が外側へ押し出されながら、木星の南半球では反時計回りに巨大に回転しています。

大赤斑が赤く見える理由としては、大気成分の化学反応が有力な原因とされています。深い大気の中にあったアンモニアや硫化水素の化合物が、強い上昇気流に乗って高い高度まで運ばれ、太陽の紫外線を受けて分解されることで、赤やオレンジがかった物質に変わるというわけです。

最近の探査機や望遠鏡の観測によると、大赤斑は100年前より小さくなり、楕円形からだんだん円形に近づいています。横幅は縮んだものの、上下の厚みは今も厚いままで、この伝説的な巨大嵐がこれからどう変化していくのかは、現代の惑星科学にとってわくわくする研究課題です。

よくある誤解

誤解

大赤斑は、木星の表面にそびえる巨大な赤い岩山や陸地である。

事実

木星はしっかりした表面がそもそもないガス惑星です。大赤斑は地面ではなく、大気の中で200年近く回り続けている巨大なガスの嵐の渦です。

日常で出会う場面

  1. 木星探査機ジュノー(Juno)は、大赤斑の上空9,000kmまで接近して撮影し、渦巻く赤い雲の奥深い立体構造を明らかにしました。

  2. アマチュア天文家も、小型の天体望遠鏡で木星を観測すれば、縞模様のあいだにある大赤斑を自分の目で探し出すことができます。

つまり ひとことで

大赤斑は、硬い地表の摩擦がなく、周りのジェット気流がエネルギーを補ってくれるおかげで、200年近く回り続けている木星の超巨大な高気圧性の嵐です。

作成 2024-09-29 更新 2026-10-17 検証 2026-10-17