定義
韓国の伝統的な旧暦(太陰太陽暦)における閏月(ユンダル)とは、月の満ち欠けを基準に日付を数える暦で、季節と暦の日付がずれていくのを正すために、数年に一度おまけとして差し込まれる余分な一か月のことです。月と太陽の異なる運行周期をうまく調整してくれる、優れた緩衝装置です。
太陽と月の歩幅が違うから生まれます
同じトラックを一緒に走る二人を思い浮かべてみてください。一人は歩幅が狭く、トラックを何周も素早く回ります。もう一人は歩幅が広く、ゆったり大きく回ります。空に浮かぶ月と太陽も、この二人のランナーとそっくりです。
月が姿を変える周期(朔望月)を基準にした純粋な太陰暦は、十二か月を全部足しても一年が約354日にしかなりません。一方、地球が太陽を一周する太陽暦の一年は約365.24日です。つまり毎年、月が太陽より約11日早くゴールに着いてしまい、毎年11日の時間差が生まれます。
この11日の差をそのままにしておくと、どうなるでしょうか。わずか3年で一か月を超える約33日のズレがたまります。16年ほどたつと、冬のはずの旧暦1月に真夏の猛暑が訪れ、8月の秋夕(チュソク、収穫を祝う韓国の名節)に吹雪が吹くという大混乱になります。
農業を営み、季節の流れに合わせて暮らさなければならなかった昔の人々にとって、季節と合わない暦は役に立ちません。そこでこのズレた歩幅を定期的に直すために、暦に一か月をまるごとボーナスのように差し込む技術を生み出しました。これが閏月です。
19年に7回入れるルール
では、このボーナスの月はいつ、何年周期で暦に差し込めばよいのでしょうか。古代の天文学者たちは、長い年月にわたって空を観察するうちに、太陽と月がぴったり合う魔法のような規則を見つけました。
それが19年間に7回ほど閏月を入れる計算法です。19年のあいだに太陽が進む日数(約6939.6日)と、月が満ち欠けする235回分の日数(約6939.7日)が、ほぼ完璧に一致するのです。東洋ではこれを「章法」と呼び、西洋では発見者の名前をとって「メトン周期」と呼びます。
もう少し正確に言うと、閏月は12月のあとに「13月」のように最後へ付け足すわけではありません。一年を24に分けた季節の目印「二十四節気」を基準にします。旧暦のある月に、節気のうち「中気」が入らない月ができたら、その月を前の月の名前を借りた閏月とします。たとえば4月の次に入れば「閏4月」となる、という具合です。
鬼神も休む「ただの月」
昔の人々は、こうしておまけで生まれた閏月をとても特別な時間として扱いました。ふだん天と地を治め、人の行いを見張っている神霊や鬼神が、この月だけは持ち場を空けて休むと信じていたからです。
もともと一年十二か月に含まれない「ただで手に入れた月」なので、鬼神の目が届かない「損(ソン、行く手を邪魔する鬼神)のいない月」と考えたのです。そこで、ふだんは軽々しく手を出すと動土(トンティ、たたり)が起きるのではと恐れていたことを、穢れのつかない安全な時期だとして、閏月に積極的に行いました。
親の無病長寿を祈って寿衣(スイ、死に装束)をあらかじめ仕立てたり、先祖の墓を移す改葬をしたり、古い家を修理したりするのが代表的です。「閏月には死体を逆さに立てても障りがない」という古いことわざが生まれるほど、人々は閏月を気楽な解放の月として楽しみました。
もちろん現代科学の目で見れば、閏月は鬼神とは関係なく、季節と暦を合わせるための精巧な数学的しくみです。それでも、自然の流れに逆らわず、不安な心を賢くなだめた先人たちの温かな気持ちは、閏月の風習の中にそのまま息づいています。
よくある誤解
閏月と閏年は名前が違うだけで、同じ概念である。
閏月は旧暦で季節とのズレを合わせるために「一か月(約29〜30日)」を足すもので、閏年は太陽暦で通常4年に一度「一日(2月29日)」を足すもので、まったく別物です。閏年の規則にも例外があり、100で割り切れる年は飛ばし、400で割り切れる年はまた閏年になります。
閏月は必ず13番目の月として暦の最後に付く。
閏月は一年の終わりに付くのではなく、二十四節気のうち「中気」が入らない月が閏月となり、直前の月の名前を借りて「閏4月」「閏7月」のように一年の途中に入ります。
日常で出会う場面
旧暦5月のあとに閏月が付くと「閏5月」と呼び、その年は5月が二度くり返されます。
閏月そのものは2〜3年に一度来ますが、閏4月生まれの人の誕生月は、同じ閏4月がもう一度来なければ巡ってこないため、ふつう10年以上待つことになります。
つまり ひとことで
閏月は、毎年11日ずつ足りない旧暦と季節のズレを埋めるために、19年に7回ずつ差し込まれる余分な一か月です。