経済

メンタル・アカウンティング(心の会計)

財布の中のお金に心の中で名札を貼っておいて、それぞれ違う使い方をしてしまう性質です。

  • 約3分
  • 図 1点
  • 2026-09-02 検証

定義

頭の中でお金をいくつもの引き出しに分けて管理してしまう性質を指します。お金はどこから来ても値打ちは同じなのに、心は生活費とお小遣いとあぶく銭を別々の欄に入れ、違う使い方をします。だから同じ金額なのに、惜しさの大きさが変わってしまうのです。

あぶく銭は、なぜ簡単に出ていくのでしょう

給料としてもらった10万ウォン(約1万円)と、道で拾った10万ウォンを思い浮かべてみましょう。お札の値打ちは少しも違いません。ところが、この二つのお金に向き合う気持ちは、ずいぶん違います。

給料は夜遅くまで働いて受け取ったお金なので、1ウォンだって無駄には使いたくありません。一方、思いがけず手に入ったお金は「なかったこと」にしやすいので、ふだんならためらう品にもすっと出ていきます。ボーナスや税金の還付金が入ったときに財布のひもがゆるむのも、同じ理由です。

頭の中に何冊もの帳簿があると考えると、分かりやすくなります。生活費の欄、貯金の欄、あぶく銭の欄が別々にあって、欄ごとにお金の使い方の決まりが違うのです。実際にはひとつの財布なのに、心の中ではお金に名札が貼ってあるようなものです。

だから同じ金額でも、どの欄から出ていくかによって惜しさの大きさが変わります。お金そのものは、自分がどこから来たのかなど覚えていないのに、です。

欄を分けたせいで、損をすることもあります

コンサート会場の前でチケットをなくした場面を思い浮かべてください。多くの人は「もったいない」と言ってチケットを買い直さず、帰ってしまいます。ところが、チケットを買う前に同じ金額の現金をなくしていたなら、たいていはチケットを買って公演を観ます。

なくしたお金の額は変わりません。ただ、チケットをなくしたときは公演の欄から二度払った気分になり、現金をなくしたときは公演の欄がそのまま残っていると感じるのです。損をどの欄に書き込むかが、決断をひっくり返しました。

暮らしの中でも似たことが起こります。利息を払いながらカードの分割払いを返している最中なのに、満期の残った積立預金には手をつけずに守り続ける、といった場合です。二つの欄を別々に見ているせいで、全体で見れば損になる選択をしてしまいます。

旅先でふだんより財布がゆるくなるのも、同じ筋の話です。旅行の欄にあらかじめ入れておいた予算の中なら、大きな出費も痛みが少なく感じられるからです。

もう少し正確に言うと

もう少し正確に言うと、心の中の仕切り分けは悪いことばかりではありません。家賃の欄と食費の欄を分けておけば、毎月出ていくお金を守りやすくなります。あらかじめ決めた予算の中だけで使うように引き止めてくれる、自制の道具にもなります。

問題は、欄と欄のあいだの壁が厚くなりすぎたときです。片方の欄では利息を払っているのに、別の欄に余裕があっても動かさない、といった具合です。お金はどの欄にあっても、同じ値打ちを持つひとつのお金です。

ですから大きな決断を前にしたときは、いったん仕切りを取り払ってみるとよいでしょう。全体の資産と全体の借金を1枚に書き出して眺めれば、どちらが得なのかがはっきりしてきます。ふだんの仕切り分けは残しておいて、考えるときだけ合わせてみるやり方です。

この性質は、怠けや計算間違いではありません。ややこしい暮らしを単純に扱おうとする心の工夫に近いので、知っていても簡単には消えないのです。

よくある誤解

誤解

メンタル・アカウンティングは、数字が苦手で計算の下手な人にだけ起こる。

事実

数字に強い人にも起こります。ややこしい暮らしを単純に扱おうとする心の工夫なので、知っていても簡単には消えません。

誤解

頭の中でお金を欄ごとに分けるのは、何が何でも直すべき悪い癖だ。

事実

予算の欄を分けておくと、決めたお金の中で使うのがずっと楽になります。欄と欄の壁が厚くなり、全体では損になる選択をしてしまうときが問題なのです。

日常で出会う場面

  1. 商品券や景品のように思いがけず手に入ったお金だと、ふだんためらっていた品もすんなり買ってしまいます。

  2. 旅行の予算としてあらかじめ取り分けておいたお金は、同じ金額でもふだんよりずっと軽い気持ちで使ってしまいます。

つまり ひとことで

お金を頭の中のいくつもの欄に分けて入れておき、同じ金額なのにどの欄から出るかによって使い方が変わってしまう性質です。

作成 2025-06-15 更新 2025-12-02 検証 2026-09-02