一般常識

韓国の不動産「仮契約金」の返還基準

気に入った部屋を他の人に取られないよう預ける「キープ金」が、戻ってくるお金なのか、戻ってこないお金なのかを分けるルールです。

  • 約5分
  • 図 1点
  • 2026-10-13 検証

定義

韓国では、不動産の正式な契約書を交わす前に、気に入った物件を他の人に取られないよう事前に送るお金を「仮契約金」と呼びます。韓国の法律の条文に「仮契約金」という言葉は出てきませんが、送金の時点で価格や残代金の支払日といった重要事項を具体的に合意していたかどうかで、返金を受けられるかどうかが変わります。日本の「申込金」に近い場面で使われますが、返還の扱いはまったく同じではありません。

ただのキープ?それともすでに契約済み?

レストランの席を予約するように、気に入った部屋を見て「他のお客さんには見せないでください」と、大家さんの口座に100万ウォン(約10万円)を送ったとしましょう。ところが翌日、もっと広くて安い部屋を見つけ、昨日の100万ウォンを返してほしいと頼んだら、大家さんは返さなければならないのでしょうか?

多くの方は「まだ正式な契約書にハンコを押していないから、100%返してもらえる」と考えます。けれども韓国の法律では、契約は書面がなくても、当事者同士の言葉と意思の合致だけで成立する諾成契約(口頭の合意でも効力が生じる契約)です。裁判所は契約書の有無よりも、合意された契約の内容をはるかに厳しく見ます。

もし不動産仲介業者や大家さんとやり取りし、売買代金全体や賃貸の保証金(チョンセの場合も同様)、入居日、残代金の支払日程などをメッセージで確定させたうえでお金を送ったなら、法的にはすでに契約が成立したとみなされる可能性があります。その場合、単なる気が変わったという理由では、送ったお金を取り戻しにくくなります。ただし、成立するかどうかはケースごとに異なります。

もう少し正確に言うと:判例が見る核心の基準

裁判所が仮契約金を返還すべきか判断するとき、最も重視する基準は「契約の本質的な内容に合意したか」です。どの物件なのか、取引代金全体とその支払方法など、取引に欠かせない重要部分についての具体的な合意があれば、正式な契約書がなくても契約が成立したと認められることがあります。

2つ目の基準は「特約(特別な条件の約束)」の有無です。送金前にメッセージで「正式な契約書を交わす前にキャンセルした場合、仮契約金は全額返す」とか「気が変わった場合、このお金は違約金として放棄する」といった条件を明記していたなら、原則としてその特約が優先されます。ただし、内容が明確である必要があり、違約金が過大なら裁判所が減額することもあります。

逆に、金額や支払時期といった核心的な条件が具体的に決まっていないまま「とりあえず他の人に回さず押さえておいてください」と入金した場合は話が変わります。このときは契約が成立していないとみなされる可能性が高く、仮契約金を放棄する明確な約定がなければ、法的原因のない不当利得として返還を受けられます。

気が変わってキャンセルしたら、いくら払うことになる?

仮契約金についてよくある勘違いが、「預けた仮契約金の100万ウォンさえ諦めれば、契約は自由に破棄できる」という考えです。すでに重要事項に合意して契約が成立している状態なら、解約金(手付解除のときの基準額)の基準は、実際に入金した仮契約金ではなく、当初約束した正式な契約金の全額になります。

たとえば、保証金1億ウォン(約1,000万円)のチョンセ契約(韓国特有の賃貸制度で、月々の家賃の代わりにまとまった保証金を預ける方式)で、正式な契約金が1,000万ウォン(約100万円)なのに、とりあえず100万ウォンだけを仮契約金として入れたとします。韓国の大法院(2014다231378)は、契約金の一部しか支払われていない状態では、原則として一方が勝手に契約を解除することはできず、たとえ解除を認めるとしても、解約金は実際に受け取った額ではなく約定した契約金全体を基準にすべきだと判断しました。この基準に従えば、大家さんは受け取った100万ウォンの2倍にあたる200万ウォン(約20万円)を払うだけで契約を破棄することはできません。借り手側も100万ウォンを諦めるだけで契約から自由になれるわけではなく、残りの契約金や損害賠償をめぐって争いになることがあります。

そのため実際の取引では、送金前に「本契約の締結前はいつでもキャンセル可能で、入金額は全額返還する」といった特約メッセージを交わすことが多いです。ただし、具体的な事情によって裁判所の判断は変わることがあります。

よくある誤解

誤解

紙の契約書にハンコを押す前なら、いつキャンセルしても仮契約金は無条件で全額返してもらえる。

事実

契約書がなくても、メッセージや電話で金額や残代金の支払日などの核心条件に合意してお金を送っていれば、すでに契約が成立したと認められ、返してもらえないことがあります。

誤解

仮契約金を預けた状態でキャンセルしても、入金した仮契約金を諦めれば済む。

事実

主要な条件に合意して契約が成立している場合、契約金の一部しか支払われていない事件についての韓国大法院の判例に照らすと、実際に払った額ではなく、当初約束した「正式な契約金(通常は代金の10%)」の全額を基準に解約金や損害賠償が問われる可能性があります。

日常で出会う場面

  1. 保証金・家賃・入居日をメッセージで決めて50万ウォン(約5万円)を送り、気が変わってキャンセルした場合、契約が成立したと認められれば返金は難しいかもしれません。ただし韓国の大法院(2022다247187)は、本契約の前段階で仮契約金を放棄するという明確な約定がなかったなら、気が変わっただけでも仮契約金を返してもらえると判断しました。

  2. 送金前に「ローンが通らない場合や契約が進まない場合、仮契約金は全額返還する」というメッセージを残しておけば、ローンが通らなかったときに全額返金を求める根拠になります。

つまり ひとことで

仮契約金が返ってくるかどうかは、契約書の有無ではなく、重要条件への具体的な合意と返還の特約があったかどうかで決まります。

作成 2026-07-05 更新 2026-10-13 検証 2026-10-13