定義
温度が上がると、物の長さや体積がほんの少しずつ増える現象です。物をつくっているとても小さな粒が大きく揺れて、お互いの間隔が広がるためです。温度が下がると、逆に少しずつ縮みます。
腕を広げると列が長くなります
体育の授業で整列している場面を想像してみましょう。寒い日はみんな肩をすくめて、ぎゅっと詰めて立ちます。でも体が温まって楽しくなってくると、腕を振って広い場所を使いますよね。人数は同じなのに、列全体ははっきり長くなります。
物の中でも同じことが起きています。物は、とても小さな粒がお互いに手をつなぐようにくっついた塊です。温度が上がるというのは、この粒がその場でより大きく揺れるということです。
大きく揺れるほど、隣の粒とぶつからないように少し間をあけなければなりません。粒1つ1つがふくらんだのではなく、粒と粒の間隔が広がったのです。その小さな間隔が物全体にこつこつ積み重なって、長さや体積の増加として現れます。
線路や橋にすき間を残す理由
整列する人が多いほど、腕を広げたときに列はもっと長くなりますよね。1人が広げる腕の幅はわずかでも、列が長ければその小さな差が何度も足し合わされるからです。物も長いほど伸びる量が大きくなるのは、同じ理由です。
鋼鉄の1メートルの棒は、温度が100度上がっても1ミリ強伸びるだけです。手では気づけない大きさですね。ところが同じ割合で1キロメートルの線路を計算すると、1メートル以上も伸びることになります。
逃げ場がなくぎゅうぎゅうに押された線路は、横に曲がって浮き上がってしまうことがあります。だから線路や橋には、最初から伸びる分の余裕をあらかじめ空けておいた継ぎ目を入れます。夏は狭まり冬は広がるそのすき間が、事故を防いでくれるのです。新幹線のようにレールを長くつなぎ合わせたロングレールは、レールをしっかり固定して中央部分が伸びないようにし、端の部分にだけ伸縮継目を置きます。
長い配管や橋の床板に、すべる受け台をはさんでおくのも同じ理由です。
もう少し正確に言うと
線路の話に戻りましょう。物が温まると、写真を拡大するように全体が同じ割合で大きくなります。だから、真ん中にあいた穴も一緒に大きくなります。開かないガラス瓶の金属のふたを熱いお湯につけるとゆるむのも、このためです。ふたの内側の円周が大きくなるうえ、金属のほうがガラスより多く伸びるので、すき間ができるのです。
ただし、伸びる度合いは物質ごとに違います。同じ温度だけ温めても、金属は大きく、ガラスは小さく伸びます。性質の違う2種類の金属を薄く貼り合わせると、片方がより多く伸びるので、棒がひとりでに曲がります。この性質を利用して、温度を測ったり電気を切ったりする装置がつくられています。
水はこの規則から少し外れます。ほとんどの温度範囲では温めるほど体積が増えますが、0℃から4℃の間では、逆に冷えるほど体積が増えます。そのため水は、4℃のときに同じ体積で最も重くなります。氷になるときに体積が増えるのはこれとはまた別の話で、水が凍るときに粒がすかすかに並ぶためです。冬に水がいっぱい入ったボトルを凍らせると破裂するのも、そのせいです。
ですから、温度が上がると伸びるという規則は、ほとんどの固体や液体によく当てはまります。ただし、どれだけ伸びるかは物質ごとに調べないとわかりません。
よくある誤解
真ん中に穴のあいた金属板を加熱すると、穴は小さくなる。
穴も一緒に大きくなります。物は写真を拡大するように全体が同じ割合で大きくなるので、何もない空間も同じ割合で広がります。
熱膨張は金属のように硬い物でしか起こらない。
液体や気体でも起こります。むしろ気体は、温度による体積の変化が最も大きいのです。
日常で出会う場面
開かないガラス瓶の金属のふたを熱いお湯に少しつけると、ふたがガラスより多く伸びて、楽に回せるようになります。
真夏に電線がたるんで見えるのも、暑さで長さが伸びたからです。
つまり ひとことで
温度が上がると粒が大きく揺れて間隔が広がり、その間隔が積み重なって、物の長さや体積が増えます。