IT·テック

ランサムウェア

大切な日記帳に泥棒がこっそり鍵をかけ、「鍵がほしければお金を払え」と脅してくる、デジタルの人質事件です。

  • 約4分
  • 図 1点
  • 2026-10-17 検証

定義

ランサムウェアは、パソコンやスマートフォンに保存された大切なファイルを勝手に暗号化して開けなくしたうえで、元に戻す代わりにお金を要求する悪意あるプログラムです。「身代金」を意味する英語の「ランサム(Ransom)」と、ソフトウェア(Software)を合わせた名前です。

どうやってパソコンを人質にするのでしょう?

私たちが日ごろ作る文書や写真のファイルは、引き出しの中の日記帳のように、いつでも簡単に開いて見られる状態で保存されています。ところがランサムウェアに感染したとたん、プログラムはパソコン内の大量のファイルの中身を、あっという間に複雑な暗号文にかき混ぜてしまいます。ファイルの拡張子は見慣れないものに変わり、いくらクリックしても中身はまったく読めなくなります。

ファイルをすべて閉じ込めると、画面に時限爆弾のようなカウントダウンタイマーと脅迫文が現れます。決められた時間内に暗号資産(仮想通貨)でお金を送らなければ、復元に必要な暗号の鍵を永久に消すと迫ってくるのです。物を盗んで逃げる代わりに、持ち物に鍵をかけて鍵の代金を要求しているのと同じです。

出どころの怪しいメールの添付ファイルをうっかり開いたり、セキュリティ管理の甘いウェブサイトを訪れたりするだけで、コンピューターシステムにこっそり入り込んで動き出すことが多いです。

もう少し正確にいうと

もう少し正確にいうと、ランサムウェアは、金融機関や情報機関が情報を安全に守るために使う公開鍵暗号という技術を、逆手に取って悪用するしくみです。この技術では、錠をかける鍵と錠を開ける鍵が別々のものとして働きます。ふつうは、ファイルを高速な一般の暗号で閉じたあと、その暗号の鍵をさらにハッカーの公開鍵で閉じます。開けるための鍵を持っているのは、ハッカーだけなのです。

そのため、きちんと作られたランサムウェアなら、ハッカーの鍵なしに暗号を解くのは事実上ほぼ不可能です。現代の暗号アルゴリズムは、スーパーコンピューターでも鍵を当てるのに想像もつかないほど長い時間がかかるからです。ただし、ランサムウェアの設計ミスが見つかり、無料の復元ツールが公開されたケースもあります。

最近は、ファイルを閉じ込めるだけでは終わりません。大事な個人情報や企業の機密文書をあらかじめハッカーのサーバーに持ち出しておき、お金を払わなければインターネット上で暴露すると脅す、二重恐喝という手口へと進化しています。

お金を払えば本当に解決するのでしょうか?

もしランサムウェアにかかってすべてのファイルが閉じ込められたら、ハッカーに言われるままお金を送るのが正解でしょうか? 残念ながら、お金を送ったからといってファイルが無事に戻る保証はまったくありません。犯罪者はお金だけ受け取って姿を消したり、きちんと動かない鍵を渡してきたりすることも珍しくないのです。簡単にお金を払った被害者は、次も狙いやすい獲物として、また攻撃されやすくなります。

そこで、ランサムウェアの被害を減らす決め手として挙げられるのが、ネットワークから切り離した保存装置にバックアップを取ることです。パソコンのネットワークとつながっていない外付けハードディスクや別の保管場所に、バックアップを置いておくのです。パソコンが攻撃を受けても、システムを初期化してからバックアップのファイルを戻せば、身代金を払わずにファイルをよみがえらせることができます。ただし、すでに持ち出された情報を暴露するという脅しまでは、バックアップでは防げません。

ふだんからOSやセキュリティソフトを常に最新の状態に保ち、出どころの怪しいプログラムのダウンロードを避ける、こまめな予防の習慣が何よりも大切です。

よくある誤解

誤解

ランサムウェアにかかっても、ハッカーが要求する身代金を送れば、無事にファイルを返してもらえる。

事実

ハッカーは犯罪者なので、お金だけ受け取って姿を消したり、動かない鍵を渡したりすることが多く、言われるままお金を送った被害者は再び攻撃の標的になりやすいです。

日常で出会う場面

  1. 宅配の通知や入社応募書類を装ったメールの添付ファイルを開いてしまい、パソコン内のすべての文書が暗号で閉じ込められてしまうケースです。

  2. 企業のサーバーを麻痺させて重要な業務データを人質に取り、復旧の代わりに多額の暗号資産(仮想通貨)を要求する事例です。

つまり ひとことで

ランサムウェアはファイルを暗号で閉じ込めて人質に取り、お金を要求する悪意あるプログラムで、定期的なオフラインバックアップが被害を減らす決め手です。

作成 2024-07-12 更新 2026-10-17 検証 2026-10-17