定義
地下の岩盤がズレたときの衝撃が、四方八方に伝わっていく揺れ(波動)のことです。この揺れは種類によって伝わる速さが異なるため、同じ地震から生まれた揺れでも届く時間にズレが生じます。そのため私たちは、最初に「コトコト」という小刻みな揺れを感じ、その後に「グラグラ」と大きく揺さぶられることになります。
雷の光が先、ゴロゴロ音は後から
夏の日に窓の外でピカッと稲妻が光ると、私たちは自然と身構えて音を待ちますよね。少し遅れてゴロゴロと雷鳴が届くのは、光が音よりも圧倒的に速く進むからです。
地中で地震が起きるときも、これとまったく同じ時間差が生まれます。最初に素早く届く揺れを「P波(初動)」、後からゆっくり追いかけてくる揺れを「S波(主要動)」と呼びます。どちらも同じ場所・同じ瞬間に発生した揺れですが、進むスピードが違うため、離れた場所には時間差で届くのです。
地震が起きたときによく「コトコトと小さく揺れたあと、急にグラグラと大きく揺れた」と言われるのはこのためです。最初に来る小さな小刻みな揺れがP波、後から来る大きな揺れがS波であることがほとんどです。
なぜ後から来る揺れのほうが怖いのか
雷のたとえをもう一度思い出してみましょう。ピカッと光る稲妻は眩しいですが、窓ガラスをガタガタ震わせることはありません。窓を揺らすのは、後から遅れて届く雷鳴の衝撃波ですよね。
地中の揺れも似ています。先に届くP波は、地面を進行方向に押し引きしながら進む縦波で、揺れの幅も比較的小さめです。一方、後から来るS波は、地面を上下や左右に波打たせる横波です。建物は横からの揺さぶりに弱いため、被害が大きくなるのは決まってP波が過ぎ去った後の大きな揺れ(S波)なのです。
しかし、この時間差があるからこそ、私たちは身を守ることができます。観測所が先に届いたP波を捉えて瞬時に分析すれば、大きな揺れ(S波)が届く前に緊急地震速報を出せるからです。ピカッと光るのを見て「耳をふさぐ準備」をするようなものです。
ただし、震源がすぐ足元にある直下型地震などの場合は、2つの波の時間差がほとんどないため、警報が大きな揺れに間に合わないこともあります。
もう少し詳しく:実は「第3の揺れ」もあります
雷のたとえは、到着順の説明にはぴったりですが、本質的な違いもあります。光と音はそもそも別の現象ですが、P波とS波はどちらも「地面を伝わる波(波動)」そのものだからです。揺らす向きとスピードが違うだけなのです。
揺らし方が違うため、通り抜けられる場所も異なります。P波は前後に押し引きして進むため、硬い岩石だけでなく水や空気も通過できます。しかしS波は物質を横にねじるようにして進むため、形を保てない液体の中は進めません。科学者たちはこの性質を利用して、地球の奥深くに液体の層(外核)があることを突き止めました。
そして実際の地震には、さらにもう一つの「第3の揺れ」が存在します。地中深くではなく、地表付近だけを伝わる「表面波」です。表面波はもっとも遅く届きますが、揺れの幅が非常に大きく、長く続きます。そのため震源が浅い地震では、建物の被害がこの表面波によって最も深刻になるケースも少なくありません。
よくある誤解
P波は小さな地震、S波は大きな地震のことを指している。
別々の地震ではなく、1回の地震から同時に発生した揺れです。伝わる速さと揺れる向きが異なるため、届く時間と揺れの大きさに差が出るだけです。
緊急地震速報は、地震が起きる前に前もって知らせる「予報」である。
すでに発生した地震の、最初に届くP波を捉えて瞬時に計算し、後から来る大きな揺れ(S波)を直前に警告する仕組みです。震源が近すぎると警報が揺れに間に合わない場合もあります。
日常で出会う場面
地震のときに「カタカタと小さく揺れたあと、一呼吸置いて激しく揺れた」と感じるのは、速さの異なる2つの地震波が時間差で届いたためです。
スマホの緊急地震速報が大きな揺れの前に鳴るのは、震源近くの観測所が先に届いたP波を検知し、地震波よりも圧倒的に速い電気通信で情報を送ってくれるからです。ただし震源が近いと揺れと警報が同時、または警報が遅れることもあります。
つまり ひとことで
地震の衝撃は伝わる速さが異なる波となって広がるため、まず素早い初期微動(P波)が届き、その後に大きな主要動(S波)が追いかけてきます。