定義
低所得層や中間層の所得を増やすことで消費を活発にし、その消費が企業の売上や投資につながって経済全体が成長するという理論です。地面から空へと湧き上がる噴水のように、下から湧き出た消費の力が上へと隅々まで行き渡ることから名付けられました。
下から湧き上がる噴水が庭全体を潤す
植木鉢の土と根に水をやれば、その水は茎を通って葉や花へと届きます。
噴水効果は、経済という植物のまさに「根」にあたる低所得層や中間層にまず水(お金)を与えようという考え方です。庶民世帯の減税を行ったり給付金を増やしたりすれば、人々はそのお金で買い物をし、飲食店を利用し、生活に必要なものを購入します。
こうして増えた消費は、街のスーパーや飲食店の売上を伸ばし、商品を納品する中小企業や大企業の工場まで活発に動かすことにつながると考えます。下から湧き出た消費の水柱が、経済の土台から頂点まで一気に吹き上がることを期待しているのです。
なぜ富裕層よりも庶民の財布のほうが開きやすいのか?
すでに口座に何億円もの資産がある人にとって、手元に1万円が増えたからといって、今日の夕食のメニューが劇的に変わることはありません。使えるお金がすでに十分にあるため、貯蓄や資産投資に回る割合が高く、今すぐ商品やサービスへの需要として現れる効果は限定的です。
しかし、生活費のやりくりに追われる家庭に1万円が入れば、子どもの靴を新調したり日用品を買い足したりするのにすぐに使われます。経済学では、新たに増えた所得のうち、どれくらいを消費に回すかの割合を「限界消費傾向」と呼びます。
所得が低いほど今すぐ使うべき必需品の支出が多いため、限界消費傾向が富裕層よりもはるかに高くなります。そのため、同じ金額であっても庶民に行き渡るほうが直接の消費につながり、景気を押し上げる効果(乗数効果)が大きいと考えられているのです。
少し踏み込むと:万能薬というわけではありません
噴水効果がいつでも奇跡的な成長をもたらす万能薬というわけではありません。消費を刺激しようと政府が無理な支援金をばらまき続ければ、国の借金(財政赤字)が膨らみ、制御できなくなる恐れがあります。
また、市場に急激にお金が出回りすぎると、モノの値段が高騰する物価高(インフレーション)を引き起こし、かえって庶民の暮らしを圧迫するリスクもあります。増えた所得が国内のモノを買う代わりに、輸入ブランド品や海外旅行へと流出してしまえば、国内産業を回す力は弱まってしまいます。
そのため噴水効果は、単なる現金給付にとどまらず、雇用の創出や職業訓練といった生産的な経済の基礎体力づくりと結びついてこそ効果を発揮すると指摘されています。対照的に「トリクルダウン効果(滴り落ち効果)」の立場では、企業や富裕層の投資余力を高めることで生産や雇用が増えると主張します。実際の効果は経済情勢や政策設計によって異なり、経済学の世界でも現在進行形で議論が続いています。
よくある誤解
噴水効果は経済成長とは関係のない、単なるバラマキ政策にすぎない。
富裕層への増税や低所得層への支援といった再分配の手法を用いますが、増えた消費によって経済成長を牽引することを目指している点で、単なる福祉や救済策とは区別されるという立場をとっています。
日常で出会う場面
働く低所得世帯に現金を給付する韓国の勤労奨励金制度や米国の勤労所得税額控除(EITC)などは、噴水効果の論理と重なる代表的な政策としてよく挙げられます。
地域商店街での消費を促すために自治体が発行するプレミアム付商品券や地域振興券(韓国の『地域愛商品券』など)も、この効果を狙った試みの一つです(実際の政策効果については評価が分かれています)。
つまり ひとことで
庶民の所得を増やして消費を活性化させ、その消費の力で企業や国全体の経済を成長させようとする経済理論です。