定義
外国政府から補助金を受けて安く入ってきた輸入品に対して、特別に上乗せして課す関税のことです。綿密な調査を通じて補助金、国内産業への損害、そしてその2つの因果関係が確認されて初めて発動できます。課税額は、確認された補助金の額を超えてはならないと決められています。
補助金は現金だけを指すわけではありません
ある国の政府が、自国の工場に「新しい設備を入れなさい」とお金を援助したとしましょう。その分、その工場の製造コストは下がります。その結果、その工場で作られたお皿は、同じお皿を作る他国の工場よりも安く輸出できるようになります。
ここでいう補助金とは、直接手渡される現金だけを指すわけではありません。本来納めるべき税金を減免することや、市場金利よりも有利な低利で融資することも含まれます。政府が原材料や電気を相場より安く供給したり、製品を高値で買い取ったりするのも同様です。政府や公的機関が財政的な支援を行い、そのおかげで対象企業に利益がもたらされたかどうかが基準になります。道路や港湾のように誰もが等しく使う一般的なインフラ整備は、そもそもここでいう財政的支援には含まれません。
さらに、この基準をクリアしても越えるべきハードルがもう一つあります。その支援を国内の誰もが広く受けられるのであれば、対象にはなりません。特定の企業や特定の産業、あるいは特定の地域に限定された支援であることが必要です。この条件を「特定性」と呼びます。
先ほどのかけっこに例えるなら、背中を押した手が本当に政府の財政支援だったのかを確かめる作業です。単に靴の性能が優れていたから、あるいは選手自身のたゆまぬ努力で速かったのだとすれば、背中を押した手など存在しなかったことになります。
もらった分を超えないように元に戻します
補助金が出ているという事実だけで、すぐに関税が上乗せされるわけではありません。まず正式な調査が開始されます。確認すべき条件は3つあります。「そのような補助金が本当に交付されたか」「国内産業が実際に実質的な損害を受けたか」「その損害と補助金付き輸入品との間に因果関係があるか」です。
この3つがすべて確認されて初めて、関税を上乗せできます。ただし、ここには明確な上限があります。課税額は、調査で確認された補助金の額を超えてはならないという決まりです。お皿1枚あたり100円相当の補助金を受けて入ってきたのであれば、追加で課せる関税も最大100円までです。
そのため、この関税は相手を罰するためのペナルティではなく、公平な状態へ「元に戻す」ための措置です。誰かがルールを破ったからといって過剰に懲らしめるのではなく、不当に下駄を履かせてもらった分だけを差し引くという考え方です。背中を押してもらった距離以上にスタートラインを後ろへ下げさせることはありません。なお、上限を超えてはならないという意味であり、必ず満額課さなければならないわけではありません。国内産業の損害を取り除くのに、それより低い税率で十分であれば低めに抑えるのが望ましいという規定もあります。
一度発動されたら永久に続くわけでもありません。世界貿易機関(WTO)の協定では、こうした措置は原則として5年が経過すると効力を失うと定められています。措置を終了すると補助金や損害が再び継続・再発するおそれがあると再審査で判断された場合にのみ、延長が認められます。
もう少し正確に言うと:似た措置との違いを整理する
貿易救済措置には名前の似た制度が多いため、混同されがちです。最も混同しやすいのがアンチダンピング関税(不当廉売関税)です。アンチダンピング関税が売る側の企業による価格設定(不当廉売)を対象にするのに対し、相殺関税は相手国政府が出した補助金を対象にします。 価格が安くなった原因が、民間企業の価格戦略にあるのか、それとも政府の資金支援にあるのかが決定的な違いです。
一般の関税とも異なります。一般関税は品目ごとにあらかじめ決められた税率表に沿って一律に課されますが、相殺関税は調査と認定を経て特定の国の特定品目にのみ追加で課されるものです。
また、セーフガード(緊急輸入制限措置)とも区別が必要です。セーフガードは補助金の有無を問題にしません。輸入品が突発的かつ急激に増えたか、国内産業に重大な損害が生じたか、そしてその損害が輸入急増によるものかを見ます。さらに特定の国を狙い撃ちにするのではなく、その品目を輸入するすべての国に対して原則一括して適用されます。
なお、こうした制度の運用では、調査を行う機関と実際に課税を決定する機関が分かれている構造が一般的です(例えば日本なら経済産業省や財務省が調査を行い、政令によって財務大臣が発動を決定します)。
よくある誤解
相殺関税は、補助金を出した相手国を懲らしめるために補助金額よりも重く課す税金である。
課税額は、調査で確認された補助金の額を超えてはならないと定められています。受け取った不当な優位性を相殺して公平なスタートラインに戻すための措置であり、相手を過剰に処罰する仕組みではありません。
アンチダンピング関税と相殺関税は、呼び方が違うだけで実質的に同じ措置である。
アンチダンピング関税は民間企業による不当な安売り(価格設定)を対象とし、相殺関税は外国政府による補助金を対象とします。調査で検証する対象そのものが全く異なります。
政府が現金を直接手渡した場合だけが補助金とみなされる。
税金の減免や市場金利を下回る低利融資、原材料や電気を格安で提供することなども補助金に含まれます。ただし、その支援が特定の企業や産業に限定されている(特定性がある)必要があります。
日常で出会う場面
相手国政府から巨額の設備投資支援を受けた製品が安価に輸入され、国内産業に打撃を与えているとして生産者団体が調査を申し立てるケース。
調査の結果、製品1点あたりに含まれる実質的な補助金額が算定され、その金額を超えない範囲で追加関税の税率が決定・適用されるケース。
つまり ひとことで
外国政府から受けた補助金の効果を相殺するために特別に上乗せされる関税で、課税額はその補助金額を超えてはならないと決められています。