経済

ダンピング

自分の国で売る値段よりも安い値段で海外に商品を輸出することで、その結果、輸入国の競合メーカーが打撃を受けることもあります。

定義

ダンピングとは、企業が自国市場での通常価格より低い価格、あるいは製造にかかった原価より安い価格で、製品を外国に売る行為のことです。相手国の競合企業をつぶして市場を支配しようとしたり、国内に余った在庫を処分したりするために使われる貿易戦略です。

なぜわざと損をして売るのでしょう?

商店街に新しくできたたこ焼き屋が、赤字覚悟で1パック50円で売り始めたと想像してみてください。お客さんはとりあえず安くて大喜びですが、周りのたこ焼き屋やお好み焼き屋は耐えきれず、次々と店を閉めていきます。ライバルがみんないなくなって1軒だけになると、この店はたこ焼きの値段を1パック1,000円まで一気に引き上げてしまいます。

国際貿易でも同じことが起こります。資金力のある外国の大企業が、赤字を覚悟のうえで、原価より安い商品を大量に送り込みます。こうしたやり方を競争法では略奪的価格設定と呼び、相手国の工場や産業基盤を崩す強力な武器になります。ただし、貿易でいうダンピングは、こうした意図がなくても、輸出価格が自国内の価格より低いという事実だけで成立します。

競合企業がすべて倒産すれば、ダンピングをした企業が市場を独占するかもしれません。そうなると消費者は選択肢を失い、のちにもっと高い値段を払うことになりかねないという懸念があります。ただ、他の国の供給者が新たに参入できるため、実際にこの方法が成功した例はまれだという見方が多いです。

在庫処分と政府の補助金

ダンピングは、いつもライバルをつぶすことだけが目的で起こるわけではありません。国内の工場で作りすぎた商品が倉庫にたまると、保管コストが雪だるま式にふくらみます。このとき国内価格を大幅に下げるとブランドイメージが傷つくので、海外市場に原価割れで在庫を放出することもあります。

ダンピングに似ているけれど別物というケースもあります。ある国の政府が自国のメーカーに大規模な減税や補助金を集中させると、企業は負担が軽くなり、とても安い価格で海外に輸出できます。しかしこれはダンピングではなく補助金の交付という別の問題で、自国内の販売価格より安く売っていなければダンピングとは見なされません。対抗手段も、反ダンピング関税ではなく「相殺関税」です。

このような人為的な低価格攻勢は、公正な市場競争を大きくゆがめます。技術力や品質の勝負ではなく、どの国の政府の支援金が多いかを競う、不公平な戦いになってしまうからです。

もう少し正確にいうと

他国の商品より価格が安いからといって、必ずダンピングと決めつけられるわけではありません。工場の自動化で原価を大幅に下げたり、人件費が安かったりして価格が安い場合は、正当な競争力として認められます。国際貿易のルールでは、輸出価格が自国内の通常の販売価格より低いときをダンピングの核心的な基準としています。

被害を受けた国は、自国の工場や雇用を守るために防衛措置をとれます。代表的な手段が「反ダンピング関税」で、国内産業への被害が確認されたら、ダンピングで下がった価格差(ダンピングマージン)を超えない範囲で課されます。外国製品の輸入価格を強制的に引き上げ、国内企業が公正に競争できるようにする防波堤の役割を果たします。

ただし、反ダンピング関税が乱用されると、相手国も対抗して関税をかけ、貿易戦争に発展する恐れがあります。とくに鉄鋼のように供給過剰になりやすい産業では、反ダンピング措置と、それに対する報復措置がたびたび起こります。

よくある誤解

誤解

輸入品の価格が国産品より安ければ、必ずダンピングである。

事実

コスト削減や技術革新によって正当に価格を下げた場合は、ダンピングではありません。輸出価格が輸出国の正常価格(通常は国内での販売価格で、それが使えない場合は原価に適正な利益を上乗せした価格など)より低いときに、ダンピングと見なされます。

日常で出会う場面

  1. 外国の巨大鉄鋼メーカーが、自国内価格の半分ほどの値段で鉄鋼を大量に輸出し、輸入国の製鉄所を危機に陥れるケースです。

  2. 工場で作った衣料品が自国で売れ残ったため、倉庫代を節約しようと、原価割れで海外に投げ売りするケースです。

つまり ひとことで

ダンピングは、自国で売る値段より安く海外に商品を売る行為で、在庫処分やライバルのけん制など、さまざまな理由で起こります。

この概念が登場するストーリー

作成 2025-02-18 更新 2026-10-13 検証 2026-10-13