定義
デフレーションとは、市場で取引されるモノやサービスの全般的な価格水準が持続的に下落する経済現象です。物価が下がると、目先の買い物は楽になりそうですが、実際には長引くと経済全体の血のめぐりが止まって凍りつきかねない、危険なサインと考えられています。
物価が下がるのに、なぜ危険なのでしょう?
お店のモノの値段が全体的に、来月は10%、来年は20%安くなると想像してみてください。今日10万円の冷蔵庫が来月は9万円、来年は8万円になる、というイメージです。急ぎでない人は、購入を先送りしたくなりますよね。もう少し待てば、同じ物をもっと安く買えるのですから。\n\nこのように「価格はこの先も下がり続ける」という期待が社会全体に広がると、人々は消費を先送りし始めます。どうしても必要な生活必需品でなければ財布のひもを固く締め、お金は口座にそのまま眠らせておくようになります。\n\nお客さんの足が遠のくと、お店や工場には売れ残った在庫が山のように積み上がります。売れない商品をさばくため、企業は思い切って価格をさらに下げざるを得ず、それが人々に「もっと待ってから買おう」という気持ちをいっそう固めさせてしまいます。\n\n結局、世の中でお金が流れずに止まってしまい、経済活動全体が冷え込んでいく悪循環の第一歩が踏み出されるのです。
経済の首を絞める悪循環
モノが売れなければ、企業の売上と利益は急落します。企業は目の前の危機を乗り切るために、工場の新設や研究開発といった未来への投資を全面的にストップします。さらに人件費を減らすため、採用を止めたり、社員の給料を下げたり、希望退職を募ったりし始めます。\n\n仕事が不安になり、懐が寂しくなった家計は、生活費をさらに極端に切り詰めます。こうして消費の減少が企業の業績悪化を招き、それがまた雇用不安と消費の落ち込みへとつながっていく悪循環を、デフレスパイラルと呼びます。\n\nここに、借金の重みが増すという問題も加わります。物価が下がるとお金の実質的な価値は上がるため、過去に借りたローンの元本を返す負担がずっと重くなるのです。家計も企業も返済に追われて使えるお金がなくなり、破綻の危機に追い込まれてしまいます。\n\n不動産や株式といった資産価格の下落も、デフレと互いに拍車をかけ合うことが少なくありません。資産バブルがはじけてデフレが始まることもあれば、デフレが資産価格をさらに押し下げることもあります。こうした過程が繰り返されると、国全体が長い不況の泥沼にはまってしまうおそれがあります。
もう少し正確にいうと
もう少し正確にいうと、技術が進歩して特定の家電やサービスの価格が安くなる現象は、デフレではありません。生産技術が向上して、自動車やテレビをより安く作れるようになるのは、人々の暮らしを豊かにする前向きな供給面のイノベーションです。\n\n本当に危険なデフレとは、モノを買いたいという需要そのものが底まで落ち込み、経済全体の価格がドミノのように一斉に崩れていく状態を指します。人々の経済マインドが凍りつき、市場を流れるお金のスピードが止まってしまうことが本質です。\n\nそのため、多くの中央銀行は、物価上昇率が0%にとどまったりマイナスに落ち込んだりする状況を強く警戒します。米国・ユーロ圏・日本・韓国など主要国の中央銀行は、おおむね年2%前後の緩やかな物価上昇を目標に掲げ、政策金利などで金融政策を調整しています。目標値は国によって少しずつ異なります。物価がごくわずかに上がっていてこそ、人々は消費や投資を先送りせず、景気が悪くなったときに金利を下げる余地も残しておけるからです。
よくある誤解
物価が下がればモノを安く買えるので、必ず暮らしは楽になる。
短期的には安く買えて良さそうに見えますが、物価下落が長引くと企業の業績が悪化し、自分の給料が下がったり仕事を失ったりして、暮らしはずっと苦しくなります。
日常で出会う場面
1990年代初めに不動産・株式のバブルがはじけた後、1990年代後半から2010年代初めまで、緩やかながらもしつこい物価下落と長期の低成長を経験した日本が代表的な事例です。
車の価格が来月さらに値引きされると確実にわかっていたら、今すぐ契約書にサインせず、購入をずっと先延ばしにしてしまう。そんな消費者心理と同じです。
つまり ひとことで
デフレとは物価が持続的に下がる現象で、特に需要の落ち込みと重なると、消費と投資が減って経済全体が深い停滞に陥るおそれがあります。