定義
景気が冷え込んで仕事や収入が減るのと同時に、物価が上がっている状態です。ふつうは、みんなが財布のひもを締めると物価の上昇も落ち着いてきます。ところがこの二つがずれて一緒に悪くなると、稼げるお金は減るうえに、手元のお金の価値まで目減りしてしまいます。
バイトの時間は減ったのに、おにぎりは値上がりしました
近所のコンビニでアルバイトを始めたとします。ところがお客さんがはっきり減って、店長が夜のシフトをなくしてしまいました。働く時間が減れば、ひと月に手にするお金も一緒に減ります。
不思議なのはその次です。お客さんが減ったのなら、少し値下げしてでも売りたいところですよね。ところがおにぎりや飲み物の値札は、むしろ上がっています。稼げるお金は減ったのに、買うものは高くなったわけです。
国の経済全体が、このコンビニのようになることがあります。工場は作る量を減らし、働き口も減っていくのに、値札だけが上がっていく時期です。景気の後退と物価の上昇が同時にやってきた状態を指す言葉です。
名前も二つの言葉をつなげて作られています。景気がよどんで動かないことを表す言葉と、物価が上がることを表す言葉を、ひとつに合わせた名前です。悪いことが二つ同時に来る、という事実がそのまま名前に込められています。
お客さんが減ったのに、なぜ値段は下がらないのでしょう?
もう一度コンビニに戻ってみましょう。お客さんが減ったことだけが問題なら、店長は値下げしてお客さんを呼び戻すはずです。景気が悪くなると物価の上昇もおさまっていくのは、このようによくあることです。
ところが、のりやお米が値上がりし、電気代まで上がったとしたら話は変わります。作るのにかかるお金が上がると、お客さんが減っても値下げはなかなかできません。コストに押し上げられる物価は、お客さんが少ないからといって止まってはくれません。
国の経済でも同じことが起こります。原油や穀物の値段が突然大きく跳ね上がると、配送料が上がり、工場の電気代も上がります。ものを作る側が揺さぶられて値段が上がるこうした出来事を、供給ショックと呼びます。
値上がりでお客さんがさらに減ると、店長はもう一度人手を減らします。すると働き口がまた消え、近所の人たちの財布も薄くなります。薄くなった財布は、またコンビニの売上を押し下げてしまいます。
もう少し正確にいうと
もう少し正確にいうと、この状態が手ごわいのは、解決策どうしがぶつかり合うからです。先ほどのコンビニの話に戻ると、その事情がはっきり見えてきます。
物価を抑える代表的な方法は、政策金利を上げて、みんながお金を使いにくくすることです。ところがお客さんがさらに減ると、コンビニのバイトの口はもうひとつ消えてしまいます。物価を抑えれば雇用が傷つく、というトレードオフが生まれるわけです。
逆に、働き口を守ろうとしてお金を多く出回らせると、物価がいっそう上がるおそれがあります。二つの問題をいっぺんに消せる簡単なスイッチはないので、どちらを先に手当てするかを選ぶことからして難しくなります。
ただし、物価が少し上がるあいだに成長がほんの少し鈍っただけでは、この名前はつけません。物価の上昇と景気の低迷がいっしょに、しばらく続くときに使う言葉です。
よくある誤解
景気が悪くなれば、物価は必ず一緒に下がる。
みんながお金を使わなくなると物価の上昇が弱まるのはよくある流れです(物価の水準そのものが下がることはまれです)。でも、原油や穀物のように、ものを作るのにかかるコストが跳ね上がれば、景気が悪くても値段は上がることがあります。
物価が大きく上がれば、それだけでスタグフレーションだ。
物価の上昇だけでは、この名前は使いません。仕事や生産が落ち込んだ状態が、同時に続いていてはじめて、この言葉に当てはまります。
日常で出会う場面
アルバイトの口は見つけにくくなったのに、コンビニのお弁当やカップ麺は値上がりして、同じお小遣いで買えるものが減っていく状況です。
ガソリン代が大きく跳ね上がり、配送料やバス代が一緒に上がるあいだ、会社は採用を先送りし、工場の稼働も減らす時期です。
つまり ひとことで
仕事や収入は減るのに物価は上がり、二つの解決策がぶつかり合って手を打ちにくい経済の状態です。