定義
保険利益(被保険利益)とは、ある事故が起きたときに自分が実際に金銭的な損害を受ける関係のことで、この考え方は日本の保険法や韓国の商法など各国の保険制度の土台になっています。損害保険では、この関係があって初めてその対象に保険をかけられ、この関係がなく今後も生じ得ない対象への契約は無効になります。受け取れる金額も、自分が失った大きさを超えられません。人を対象とする保険では、別の仕組みが同じ役割を果たします。保険が他人の不幸にお金を賭ける場にならないよう設けられた要件です。
なぜ隣の家の火災保険には入れないのでしょうか
自分の家に火災保険をかけるのは問題ありません。家が燃えれば、その損害をそのまま自分が負うからです。ところが同じ保険を隣の家に対してかけようとすると、保険会社は契約を受け付けてくれません。
隣の家が燃えても、自分の財布から出ていくお金はありません。火事が起きて初めて保険金が入るのなら、自分には火事が起きるのを待つ理由だけが生まれてしまいます。損をする人だけが入れるように入口に鍵をかけておけば、この奇妙な状況は最初から作られません。
だからといって、自分の名義の財産でなければならないわけではありません。人の家を借りて住んでいる人も、その家の中に置いた自分の家財には保険をかけられます。火事になれば自分の物を失うからです。家を担保にお金を貸した銀行も、その建物に保険をかけられます。建物が燃えると、貸したお金を回収できなくなるおそれがあるからです。
つまりこの要件が問うのは「誰の名義の物か」ではありません。その出来事が起きたとき、誰が失うのかを問うのです。
ギャンブルと保険を分ける一線
外から見るだけなら、ギャンブルと保険はよく似ています。先にお金を払い、ある出来事が起きれば払ったお金よりずっと大きなお金を受け取れます。出来事が起きなければ、払ったお金は戻りません。確率にお金が動くところまでは同じ話です。
分かれ目はその先にあります。ギャンブルは、自分と関係のなかった出来事にお金を賭けてなかった利益を作るものです。保険は、自分が失ったものを元の状態に戻すものです。前者は勝負が終われば誰かの懐が膨らみ、後者はうまく働いても元に戻るだけです。
だから損害保険で受け取れるお金には上限があります。失った以上に受け取れるなら、事故が利益になってしまい、その瞬間に契約はギャンブルの側へ傾きます。この上限の高さを決めるのが、自分が持つ損害の関係の大きさです。
ここでもう一つ区別しておくと混乱しません。保険利益は契約を結ぶ資格があるかどうかを決める要件で、損害てん補は事故のあとにいくら支払うかを決める原則です。
もう少し正確に言うと:いつ損害を受ける必要があるのか
この要件を測る時点は、保険の種類によって異なります。物や財産を扱う損害保険では、事故が起きたときに自分がその損害を受ける立場にいなければなりません。契約時にすでに決まっていれば望ましく、少なくとも事故のころまでには誰の利益なのかがはっきりしている必要があります。
韓国の商法は、損害保険では金銭に見積もれる利益だけが保険契約の目的になり得ると定めています。ところが、他人の死亡を保険事故とする契約には、この要件をそのままは求めません。代わりに別の鍵をかけています。それがその人の書面による同意です。自分を被保険者とする死亡保険なら、改めて得るべき同意はありません。ただし、この鍵にも例外があります。15歳に満たない人や心神喪失者を被保険者とする死亡保険は、同意を得ても無効です。また、会社が従業員を対象にかける団体保険では、別に定めた規約がこの同意に代わることもあります。
同意を得させる仕組みが、同じ役割を担っています。本人の知らないところで他人がその命にお金を賭ける事態を防ぐのが目的だからです。国によってこの役割の果たし方は違い、人を対象にする保険にも損害の関係を求める国もあれば、同意で代える国もあります。
線が引かれた順番も、物のほうが先でした。イギリスでは、船や貨物にかける保険にまずこの要件が付き、人の命を扱う保険のほうはそれより後に整理されました。
よくある誤解
保険料さえきちんと払えば、誰の家にでも火災保険をかけられる。
その家が燃えて自分が金銭的に失うものがあって初めて、契約が成り立ちます。その家が燃えても自分が失うものがなければ、契約は無効です。
損害保険をいくつも掛けておけば、事故のときにそれぞれから受け取って利益を出せる。
損害保険で受け取れるお金は、自分が実際に失った大きさを超えられません。複数の保険に入っていても、保険会社どうしで損害を分担するだけで、合計でそれ以上支払われることはありません。
日常で出会う場面
借りて住んでいる家が水没すれば自分の家財を失うので、その家財には保険をかけられます。
お店のオーナーは自分の店の商品に盗難保険をかけられますが、道の向かいにある他人の店の商品にはかけられません。
つまり ひとことで
損害保険では、その出来事が起きたときに自分が失うものがあって初めて保険に入れるという要件があり、この一線が保険をギャンブルから分けています。