科学

耐力壁

本を何冊も積み重ねたとき、一番下の本が上の重みをすべて支えるように、上階の重さが順番に降りてくる壁です。

定義

上階や屋根の重さを支え、その重みを地面へと逃がす壁のことです。この壁に穴を開けたり撤去したりすると重みの伝達ルートが断たれ、建物全体が危険にさらされます。重さを支えず空間を仕切るだけの壁は「非耐力壁」と呼ばれます。

家の中の壁だからといって、どれも同じ壁ではありません

リビングを広くしようと、部屋の壁を取り払ってみたいと思ったことはありませんか。しかし工事の職人さんは、ハンマーを手にする前にまず図面を広げます。同じ家の中でも、「壊してもいい壁」と「壊してはいけない壁」がはっきりと分かれているからです。

本を10冊ほど積み重ねると、一番下の本が上の9冊分の重さをすべて支えますよね。建物も同じです。屋根や上階の重みは空中に浮いているわけにはいかず、下の階へ、さらにその下の階へと降りていきます。この重みが降りていくルート上にある壁が耐力壁です。

そのルート上にない壁もあります。部屋と部屋を仕切っているだけで、上階の重みとは無関係な壁です。こうした壁は、取り壊しても上が崩れ落ちることはありません。ただし、見た目だけでは違いがほとんどわからないため、図面を確認して見分けるケースが大半です。

もし耐力壁を取り壊してしまうと、そこを通って降りていた重みの行き場がなくなります。すると隣の壁や床に過度な負担が集中し、床がたわんだり亀裂が入ったりする原因になります。

高く建てるほど、下の階の壁が分厚くなります

壁が重さを支える構造では、下へ降りるほど背負うべき重みが増えていきます。最上階の壁は薄くても構いませんが、1階の壁はそうはいきません。そのため、レンガや石を積み上げて作る組積造の耐力壁は、高く建てるほど下の階の壁をぶ厚く積む必要がありました。鉄筋コンクリート(RC)壁は、鉄筋とコンクリート自体の強度で支えられるため事情が異なります。

米シカゴの「モナドノック・ビル」北館は、その限界を示す代表例です。1891年に完成したこの建物は、外壁のレンガに重さを支えさせる方式で建てられた16階建てです(内側には鉄骨骨組みも併用されました)。シカゴ建築センターの記録によると、1階のコーナー部分の壁の厚さはなんと6フィート、メートルに直すと約1.8メートルにも達します。

問題は、その分厚い壁が賃貸できる床面積を圧迫してしまう点にありました。1階に厚さ1.8メートルもの壁が居座れば、そのぶん人に貸し出せる有効スペースが削られてしまいます。壁が厚くなるほど専有面積が減り、建物自体も重くなるため、高層化への負担は増すばかりでした。鋼鉄の骨組は、壁を厚く積み上げなくても建物を高く持ち上げる道を切り開いたのです。

もう一つの方法は、壁から「重さを支える役目」を解放することでした。壁式構造は壁そのものが重さを受け止める方式ですが、柱と梁による骨組構造では骨組みが荷重を受け持ち、壁は単に空間を仕切るだけになります。同ビルの南館は1893年に増築されましたが、こちらでは外壁が荷重から解放され、骨組みに吊り下げられる形をとっています。耐力壁が壁自身で上階の重みを背負う壁であるのに対し、カーテンウォールはその役目から解き放たれて骨組みに吊り下げられた外壁なのです。

もう少し詳しく見てみると

耐力壁が受け止める力は、上から押し付ける鉛直方向の重みだけではありません。横から風が吹きつける力や、地震で地面が揺れるときに生じる水平方向の力にも耐えています。そのため、壁を1枚壊すだけでも、上階だけでなく建物全体のバランスを揺るがすことになります。

韓国のアパート(日本のマンションに相当)では、柱や梁ではなく壁全体で荷重を支える「壁式構造」で建てられた物件が非常に多く見られます。柱と梁で組まれたアパートもありますが、壁式構造のほうが圧倒的に主流です。そのため、家の中の壁が耐力壁である可能性がかなり高いのです。

これには法的な規制も絡んできます。韓国ではアパートのリフォーム(リモデリング)許可基準において、「耐力壁を撤去して住戸同士を統合する行為ではないこと」という条件が定められています。隣の家との境目にある戸境壁が耐力壁である場合、その壁を取り壊して2軒を1軒にする工事は認められないという意味です。

法律上の適用範囲は次のように分かれます。耐力壁の解体はアパートに限らず、韓国の建築法では建物全般において「大修繕(大規模修繕・模様替に相当)」と見なされ、原則として許可が必要です(延べ面積200平方メートル未満かつ3階未満の小規模建築物は届出で可)。さらにアパートでは韓国の共同住宅管理法に基づく行為許可も加わり、重さを支えていない非耐力壁を撤去する場合でもこの許可が必要になります。構造安全に問題がないと市場・郡守・区庁長(基礎自治体の首長)が認め、その棟の入居者等の2分の1以上の同意を得て初めて許可が下ります。自宅の壁がどちらにあたるのかは、図面と管轄自治体への確認を経て初めて判断できるのです。

よくある誤解

誤解

家の中の壁はすべて重さを支えているため、どの壁にも一切手を加えてはならない。

事実

部屋と部屋を仕切るだけの非耐力壁(間仕切り壁)は、上階の重みが降りていくルート上にはありません。ただし見た目での判別は難しいため図面での確認が不可欠であり、韓国のアパートなどでは非耐力壁を撤去する場合でも法令に基づく行為許可が必要です。

誤解

壁が重さを支える構造では、高層ビルを建てることはできなかった。

事実

1891年に完成したモナドノック・ビル北館は、外壁のレンガが荷重を支える組積造の仕組みで16階まで建てられました(内部には鉄骨骨組みも併用)。ただし1階の角の壁の厚さは6フィート(約1.8メートル)にも達し、そのぶ厚さが下の階の有効利用面積を削ってしまいました。

日常で出会う場面

  1. マンションでリビングと隣の部屋の間の壁を取り払って広げようとするとき、その壁が上階の重さを支える耐力壁かどうかを図面でまず確認します。

  2. 昔ながらのレンガ造りの建物で、1階の壁が上階の壁よりも目に見えて分厚いのも、下の階ほどより多くの重みを背負わなければならないためです。

つまり ひとことで

上階の重みが降りていく通り道にある壁が耐力壁であり、その役目をレンガや石積みの壁に任せると、下の階ほど壁が分厚くなって使える床面積が狭くなってしまいます。

この概念が登場するストーリー

作成 2025-03-25 更新 2026-10-12 検証 2026-10-12