定義
税金が引かれる前の総所得から、税金や社会保険料、ローンの利息のようにどうしても支払わなければならないお金を差し引き、自分の思い通りに自由に使ったり貯蓄したりできる純粋なお金のことです。個人や家庭のリアルな懐事情と、実際の消費パワーを最も正確に示す代表的な経済指標です。
額面年収500万円がすべて自分のお金ではない理由
給料日に給与明細を開いてみると、契約時の金額(額面)と実際に口座へ振り込まれた金額が違っていて驚くことがあります。
一生懸命働いて稼いだお金ですが、国や自治体に納める所得税や住民税などの税金がまず天引きされるからです。さらに、将来のために加入が義務付けられている厚生年金や国民年金、健康保険、雇用保険といった社会保険料も差し引かれます。また、住宅購入などのために借り入れがあれば、毎月支払うローンの利息も銀行へと引き落とされていきます。
家計調査などの統計では、税金・保険料・借入利息のように主に義務的な支出に、別世帯への送金や寄付金などを合わせたものを「非消費支出」と呼びます。総所得からこの非消費支出を差し引いた、完全に自分の意志で消費や貯蓄に回せるお金こそが可処分所得(統計用語では処分可能所得)です。
よく言われる「手取り額」は、会社が給与から税金を源泉徴収し、本人が負担する社会保険料を控除した後に口座へ振り込まれる金額のことです。可処分所得は、ここからローンの利息などの義務的支出をさらに引き、副業や預金利息などの他の所得や公的給付金まで加味した概念であるため、厳密には手取り額とも異なります。
そのため、契約上の額面年収よりも、可処分所得が実際にいくらあるのかのほうがはるかに重要です。見かけの年収がどんなに高く見えても、義務として出ていくお金が多ければ、自由に使える余裕はむしろ少なくなってしまうからです。
もう少し正確に計算してみましょう
可処分所得は、単純に会社から受け取る給料から税金を引くだけでなく、もう少し広範かつ緻密な方法で計算されます。
まず、労働を提供して得る給与所得だけでなく、自営業や副業で稼いだ事業所得、株式の配当や銀行預金の利息で発生した財産所得などをすべて足し合わせ、個人が得た全体の所得を算出します。ここから、先ほど確認した所得税、住民税、社会保険料、ローンの利息といった非消費支出を順番に差し引きます。
次に、国や自治体から無償で給付されたお金を足す必要があります。例えば、子育て世帯に支給される児童手当、高齢者向けの公的年金、各種給付金のように、見返りを伴わずに受け取る公的移転所得を加算します。家計調査などの統計では、こうした移転所得も最初から所得全体に含まれています。給与・事業・財産所得に移転所得まで合わせた総所得から非消費支出を引く形をとるため、計算の順番が異なるだけで最終的な結果は同じです。
このように、実際に稼いだお金から義務的な支出を差し引き、国や自治体からの支援金まで合算して初めて、正確な計算が完了します。こうして導き出された最終的な金額こそが、その家庭が1か月間に実質的にやりくりできる本当の予算規模となるのです。
政府や企業がこの数字に注目する理由
家計の実際の消費力を測るときは、ニュースによく登場する国民総所得(GNI)のような国全体の所得指標よりも、可処分所得のほうがよりダイレクトな羅針盤となります。
例えば、給料が上がったとしても、税金やローンの利息負担がそれ以上に増えてしまえば、可処分所得はむしろ減ってしまいます。また、物価の上昇スピードが収入の伸びを上回れば、同じ金額で買えるものが少なくなり、実質的な可処分所得は目減りします。自由に使える余剰資金が減った人々は、自然と外食を控え、買い物をためらい、支出を切り詰め始めます。
個人の消費が冷え込むと、モノやサービスを販売する企業の売上が落ち、生産や雇用が縮小するという景気悪化のスパイラルに陥ります。そのため、政府が不況期に減税を行ったり定額給付金を支給したりするのも、代表的には国民の可処分所得を増やして消費を喚起する狙いがあるからです。もちろん減税や給付金には、投資の促進や生活の保障といった別の目的もあります。
結局のところ、可処分所得は国内の市場や経済が円滑に回るための最も根本的な原動力です。お財布の中に実際に使えるお金がしっかり残っていてこそ消費市場が活気づき、企業も活発に経済活動を広げることができるのです。
よくある誤解
可処分所得は、稼いだ給料から税金さえ引けば求められる金額である。
税金だけでなく年金などの社会保険料やローンの利息も差し引く必要があり、逆に国から支給される児童手当や給付金などは加算して初めて正確な可処分所得になります。
日常で出会う場面
月給35万円のうち、税金や社会保険料として5万円が天引きされ、ローンの利息で3万円を支払った場合、手元に残る27万円が可処分所得です。
自治体などから子育て支援金として2万円を受け取った場合、それがそのまま可処分所得に上乗せされ、今月自由に使える資金が増えます。
つまり ひとことで
総所得から税金や社会保険料などの必須コストを引き、各種給付金を足すことで、実際に自分の意志で自由に使ったり貯蓄したりできる正味の所得です。